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手紙  作者: 甲池 幸
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思い出の場所

青々とした葉をつける木々の下を、走り回って遊ぶ子供たちのあいだをすり抜けて、公園を出る。公園を出てすぐの大通りを、北へ進んで二つ信号を渡ると今朝降りたばかりの駅が見えてくる。ICカードで改札を抜けると、二番線にちょうど良く滑り込んできた電車に乗り込む。ゴールデンウィークにしては乗客の少ない車内座る席を探すためにうろうろと歩き回る。三つ目の車両でやっと隣が空いた端の席を見つけてそこに座り込むと、ちょうど電車が住宅の脇をすり抜けるところだった。ガタンゴトンと音を奏でながら、電車が工業地帯の脇を過ぎるとあっという間に次の駅が見えてきた。


「次は風海(かざみ)、風海。お出口は右側です。」


車内のアナウンスを聞いて動き出す人たちの流れに身を任せながら、出口まで移動して電車が止まるのを待つ。キキ―とブレーキ音を響かせながら電車がホームに滑り込んで、止まる。扉が開くと同時に電車を出て、北口から外に出ると冷房で冷やされた体を、外気が温めてくれた。私や凛音、洸の母校でもある風海高校が目と鼻の先にあって、そのさらに奥に目的の遊園地がある。


敷地内に実際に泊まれるホテルがあったり、売っているグッズが可愛かったりで、かなり人気の高い遊園地だ。町内からはもちろん、県外からも毎日多くの人が訪れる。

そこそこ強豪のサッカー部が練習試合をしている風海高校の前を通り過ぎて、少し歩くと見えてきた懐かしい建物に足を止める。ここが、高1の誕生日に洸とポップコーンを食べた場所だ。


「かーれんチャン」


入口のところで呆けていると懐かしい声で、名前を呼ばれて振り返ると中学、高校と同じ学校で洸とも仲の良かった片瀬 光がにこにこしながら立っていた。


「なんでいるの?」


「あれ?手紙に書いてなかった?」


「ない」


少しむくれた私がおかしかったのか肩を震わせた片瀬にさらにムッとながら、駅に戻ろうとする。


「え!?ちょっ!待って!」


焦った声の片瀬に、引き止められて今度は私が少し笑った。片瀬の変わらない雰囲気は落ち着けるのかうまく笑えた。


片瀬に手を引かれて、入口のゲートをくぐると目の前に広がった景色にわあっと声を上げたくなった。


ヨーロッパ風のお土産店が軒を連ねていて、その壁一つ一つの装飾がすごく凝っていて、美しい。


さらに手を引かれて奥に進むと、色とりどりのアトラクションが見えてきた。目の前の1番近いジェットコースターがちょうど頂上に達して、悲鳴とともに降ってくる。


「あれのろう!夏恋チャン」


片瀬が指さしたのは、たった今悲鳴が上がったばかりのジェットコースターだった。確か、洸と一緒に来た時も1番に乗ったものだ。はしゃぐ片瀬に手を引かれて、最後尾に並ぶと待ち時間はちょうど100分だった。


片瀬の左手と繋がった自分の右手を見下ろしながら、ふと、思い出す。洸と来た時も朝からずっと手を繋いでいた。乗り物の待ち時間も、移動する時も、お土産を見ている時も、ずっと。繋がった手の温度が暖かくて、どこか恥ずかしくて、でもやっぱり嬉しさが大きくて、帰り道でも手を繋いでいた。


片瀬の手は洸の手とは違う。洸の指はもっとゴツゴツしてたし、こんなに細くなかった。でも、手から伝わってくる暖かさはなんだか似ていた。でも、やっぱりどこか違うから、あの暖かさにはもう触れることが出来ないんだと突きつけられて、胸がいたんだ。


「どうかした?夏恋チャン」


心配そうに顔を覗き込んでくる片瀬に何でもないと首を振りながら、繋がれた手に釘付けだった視線を前に戻した。


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