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手紙  作者: 甲池 幸
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再会

「あ、夏恋!こっちこっち!」


名前を懐かしい声に呼ばれて、声の方を向くと高校時代の親友が手をブンブン振っていた。ちぎれんばかりっていうのはきっと彼女みたいな手の振り方をしている人のことを言うんだろうなと、勝手に考察しながら彼女_____早川(はやかわ) 凛音(りんね)の元へ向かう。


「久しぶりだねぇ、元気してた?彼氏出来た?私なんか、彼氏3人もできたのに全部ダメ男だったんだよ?信じられる?」


私が席につくなりマシンガントークを始めた凛音に苦笑を返しながら、注文を取りに来てくれた店員さんにアイスココアを頼む。


アイスココアは、夏に洸とここにきた時によく飲んでいたものだ。洸は向かいの席でオレンジジュースを飲みながら、「ココアはホットが1番だから」ってよく分からないこだわりをいつも押し付けてきた。


そのくせ、「やっぱり1口」っていつも最後には半分こになった。冬になるとアイスココアがホットココアに変わって同じことをした。時々半分じゃ足りなくて、2杯目を頼んだこともある。


最初から一人一つずつ頼めばいいのに、あの頃は2人でひとつのものを分け合うのがなぜかすごく特別なことのように感じていた。


「アイスココアになります」


もう、分けられることの無いアイスココアはカランと寂しげな氷の音と一緒にテーブルに置かれた。また、胸が痛んだ。


「でさ、この前偶然スーパーで片瀬(かたせ)くんに会ったんだよね、覚えてる?坂崎くんとよく一緒にいた片瀬くん」

凛音の話をぼんやり聞き流しながら、洸との思い出に浸っていると突然話を触れて慌てて現実世界に頭を戻す。


「覚えてるよ」


「片瀬くん、良い奴だったよねえ

夏恋が坂崎くんに別れ話した次の日ね、坂崎くん学校サボったんだけど、2人で探し回ったんだよ」


どこか遠い目をしながら、口だけでふふっと笑うと凛音は続けた。私はそんなことがあったのかと、思いながら氷の溶けかけたアイスココアを1口飲んだ。懐かしい味が口の中に広がってあっという間になくなってしまう。


「坂崎くん見つけた途端、片瀬くんが坂崎くんに掴みかかってさ。『彼女の言葉の裏が読み取れないままなのになにぼさっとしてんだてめえは!?』って。坂崎くんはぽかんとしてるし、おかしかったなぁ」


当時のことを懐かしむように目を細めて遠くを見る凛音にぎこちなく笑って返事を返しながら、私は当時のことを思い出していた。


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