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手紙  作者: 甲池 幸
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10/15

四通目

片瀬と駐車場に戻ると、もう空が暗くなり始めていた。泣きすぎたせいでずきずきと痛む頭を抱えながら車に乗り込む。


「ごめんね、泣かせるつもりはなかったんだけど」


「うん、わかってる」


片瀬に悪気がないことも、片瀬が今、すごく後悔していることも全部、ぎゅっと寄った眉間のシワから伝わってくる。


「ごめんね」


「うん」


片瀬はもう一度謝ると、ゆっくりと車を動かした。2人とも泣きすぎて喉がかわいてしまったので、とりあえずコンビニに向かう。周りに何も無い山道をひたすら下って、車通りの多い道に出たところでやっとコンビニを発見した。駐車場に車を止めても、片瀬はなかなか動こうとしない。


「片瀬?」


「夏恋チャン、これ、坂崎からの手紙。

読んで待ってて」


片瀬が差し出したのは、カバンの中に何通も入っている茶色い封筒だった。私が紅茶を片瀬にリクエストすると、片瀬は「変わんないね」とやっと小さく笑って、車を降りていった。


『約束の場所でちゃんと片瀬と誓ったか?』


一文目から、衝撃的だ。でも、なんとなく片瀬はあんなこと進んでしなそうな気もしていた。大好きな右上がりの字をさらに読み進める。


『俺の予想だと出来ないな

夏恋、俺のことまだ好きだろうから。』


その自信はどこからくるだと、つっこみたいのに相手がいない。また、胸がいたんで泣きそうになるのを必死にこらえる。


『でも、片瀬良い奴だからな。

だから、俺のことなんか早く忘れて、次の恋すること。俺との約束な』


滲んだ文字をなぞったあとが、手紙にまだ残っている。泣くくらいならこんなこと書かないでよ。今度は涙があふれるのを我慢出来なくて、せっかく洸がなぞった字がまた滲んでしまう。慌てて、涙を拭って手紙を手元から上にあげる。


『まあ、今日までは俺のこと好きでいて。

次の場所は、地元で一番星がたくさん見える場所

P.S.

夏恋が俺のこと忘れても俺はずっと好きだから。

だから俺のこと忘れていいよ』


馬鹿な事言わないでよ。

いつも隣にいて、私が泣きたい時のそっと抱きしめたくせに。私のこと1番笑わせたくせに。

忘れられない魔法をかけたくせに。


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