究極の願望
一週間に一回以上のペースで更新したいところ
自分の意識が段々回復していく感覚なんて始めて体験したけれど
あんまり気持ちの良いものではないな
思考能力の低下がみられるが
それは頭がぼんやりしていたかららしい
意識がはっきりするとまず疑問を持った
ここは何処なんだ?
確か交通事故に遭ったはずなんだが
病院ではない事は確かなようだ
それならこんなに白い床に寝かされているわけがない
思わず声に出す
「ンだここは? 少なくとも天国や地獄には見えねェんだが」
「そうだね、ここは天界と人界の狭間にあるような場所だからね」
後ろから何者かの声が聴こえてきたので振り返ると
目の前に純白とは正にこのような感じかと思わしき服を着た
金髪の美少女が腰を折った体勢で立っていた
というか顔が近い あ、何か良い匂いがする
ってまてまて興奮してるんじゃなくて落ち着け僕
この娘はいったい誰なんだ?なんとなく分かる気がするが
「私が誰か不思議に思っているようだね 有り体に言えば神様ってところだね」
「ほぅ そうなのか」
「疑わないんだね」
「こんな所に居るんだから今更何かを疑っても仕方ねェだろ」
「ふーん で、私は知恵や戦いなんかの女神なんて呼ばれているアテネだよ」
「へぇ、勝利の神ニケとは別なのか?翼が無いようだが」
「うーん 人によって翼の有無は変わるからね それと虚勢は張らなくていいよ今までその言動でも辛い思いをしてきたんでしょ?何故分かるって?フフッ 神は物知りだからね君の事なんてすぐに分かるんだよ」
「そんなわけにはいかねェ ここで素に戻ったらダメな気がするしな それよりも俺の意識があって神と話が出来るなんてファンタジーにはよくある展開が来たって事は異世界転生でも出来るのか?」
「察しが良いね 『貴方は死にました 第二の人生を歩むも良し そのまま消え去るも良し』って何時もなら言うんだけどね 君の人生は散々だった上にそれを楽しむ暇も無く死んじゃったからね 記憶はそのまま転生っていう特例にしてあげるよ」
「いいね いいね いいじゃねェか おい 転生物語っぽくて面白れェじゃねェか 何か恩恵なんて無いのか?」
「ここまで物わかりがいいのは時代の移り変わりなのかね?まあいいや じゃあそのままで居てね」
そういうと女神はくるりと回って右手の人差し指を前に突き出してポーズをとる
『可愛い』なんて思ってしまったが女神なんだから当たり前かと心を落ち着かせる
なまじ人との関わりが少なかった為 こういう事に耐性が全く無いんだからシャンとしないと
ふぅ普通の童貞なら死んでいたこのセリフ何処かで聴いたような・・・
そして彼女は神々しいオーラを出しながら手を前に出すると僕の方にもそのオーラが流れてきた
徐に「ふぅ」と言うとこちらに話しかけてきた
「何か自分に変化は無い?」
「特に無いんだが・・・ 失敗か?」
「それは女神に誓って無いとは思うんだけど・・・ ちょっと待ってね」
そういうと地球にあるようなタブレット端末を出すと(何処から出てきたのかは皆目わからないが)「あれでもない これでもない」なんて言いながらいじくりだす
待つこと数分 「なんとなくわかった」なんて言って端末をしまった
「君の境遇がそうさせたのかはわからないけれど 願いを叶える能力っていうつまり『願望』をダイレクトに現実に反映させるっていう能力みたいだね 試しに使ってみたら?」
「ンなこと言われてもなァ」
そういうと僕は「そういえば晩御飯を買った帰りだったな」と思って夕食の献立のハンバーグを欲しいと考えてみたが出てこない
考えるだけじゃダメみたいなので強く念じてみる
そうすると手の中に虚空からハンバーグが皿にのって出てきた
皿が付いているって所は想像の補正でもかかったのだろうかと思案する
「おお 出てきたね 調べた甲斐があったってことだよ 試しに私も頼んでみてもいいかい?」
「わかったが何にするンだ?」
「食べてみたかったんだ 人界にあるポテトチップスってお菓子!」
やけにきらきらとした顔をするのでドキッとしてしまったが
平常心と理性でやりすごす 煩悩よ消え失せろとか思いながらポテトチップスを念ずる
するとお馴染みのカ〇ビーっぽいポテトチップスが出てきた
それを彼女は受け取ると心底嬉しそうな顔して袋を抱きしめて「ありがとう」って言ってきた
美少女の笑顔は魔性の笑顔というのは名実一体だと思う
美味しそうに頬張っているのは女神としてどうかとおもうんだけどそろそろ転生して欲しい
「ところで何処かに転生する話はどうなったンだ?」
「あっそうだね もうすぐある世界に召喚されるからそれまで気楽に待つと良いよ」
「気楽にって・・・ 体が光始めたが召喚されるってことか?」
「そうそう では良い二度目の人生をね♪」
そういった声が聴こえた時にはもう僕の視界は耀くなっていて何も見ることが出来なかった最後に見る美少女の顔を見れなかったのは残念だと思いながら意識が飛んだ
意識が戻ってくるとそこはRPGにありがちな王の謁見の間の様なところの魔法陣のような所に立っていた
そこには魔法師っぽい銀髪碧眼の美少女とその父親ではないかと推測出来そうな同じ髪と目をした初老の男
そして大臣であろう爺さんたちがいた
「・・・あzsxdcfvgbhんjmkl」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
何か喋っているけど言語がわからない
取り敢えず{翻訳 永続}と念じる
「それでこの者は使えるのか?有用な奴なら使いたいところだがお前は何度も何度も失敗しているからな」
「・・・私の魔力のかなりを注ぎ込んだので実力はあるはずです お父様」
「それはどうでしょうかな 見たところ普通の少年にしか見えないのですが」
「・・・取り敢えず言葉が通じるかどうか試してみます」
そういうと銀髪の美少女がこちらにやってきた
よく見るとビスクドールのような整った顔立ちをしていて身体は脆そうな印象を受けるけど
不思議と自分と同じような雰囲気がした
さっきも父親に呆れられたような態度をとられていたが
同じような雰囲気ってだけで全く違うのかもしれないけれどそんな感じがした
そんなことを思案しているとこちらに話しかけてきた
「・・・言葉を理解していますか?」
「あぁ、やっと理解してきた所だが 此処は何処なんだ?」
「・・・ここはアルテノン王国です 貴方は私が召喚させていただきました」
「どうやらそうみてェだな」
「・・・私の命令を聴いていただかないと苦しんでしまうことになりますが 聴いてくれますか?」
「嫌だ 誰がてめェ等なんかに従うかよ カカッ」
「・・・そう じゃあ命令する {我の言葉に従え}」
そう言われると不思議な強制力が働いているのを感じる
美少女のみに従うのならともかく王様や大臣とかに従うのは嫌なので命令を解除しておく
{自身への命令解除 永続}を念じる
何かしらパスみたいなのがあったんだろう少女は急に焦りだした
少女が{バインド}と唱える 魔法っていう概念が存在しているってことにファンタジーであることを再認し少し興奮する
その間に彼女の手から鎖が飛び出して俺を拘束する
中々キツイので早めに解除しておく {拘束解除 永続}
永続にしておいた方がいいだろう 何が起こるのか分からないし
鎖は千切れて虚空へ消えていった
すると大臣と王様たちが話し始める
「これは何とも凄い力ですかな 我が国の第三王女様の魔法を打ち消すとは」
「・・・すみませんお父様」
「よい それよりもそなた」
「ンだ?」
「貴殿を拘束する術がないのでな どうするつもりか聴いて置きたいのじゃが」
「何か頼み事があるから呼んだんじゃねェのか?」
「聴いてくれるか 最近魔王なる輩と魔族が蔓延っておっての それの殲滅をお願いしたいのじゃが」
「成る程な 殲滅で良いのか?」
「生け捕りなどという無駄な危険を負わなくていいじゃろ やってくれるかの?」
「引き受けてもいいが二つ程条件がある」
「魔王共のせいで金が無いのでそれは勘弁して頂きたいものですが」
「あぁ そんなに難しいことじゃねェ 一つ目はその第三王女の・・・あーっと名前は何て言うんだ?」
「・・・シルフィーナ・アルテノン」
「そのシルフィーナを連れて行くってことだ」
「それは・・・シルフィどうするのじゃ」
「・・・ついて行っても構わない」
「そうか では二つ目を聴こうではないか」
「そうだな 二つ目は俺は基本戦わないってことだ」
「貴様姫様を危険に合わせて自分は安全な所に居るつもりか!」
「落ち着け ハイドよ」
そのハイドと呼ばれた若い大臣が激昂してきた
この国の姫様だからなそれに可愛いからまあ無理もないし
こういう展開は凄く面白い
「そうだな 5分以内に俺にかすり傷一つでも付けることが出来たら言うことを聴いて謝罪してやろうじゃねェか その間俺はその場から動かねェ それで失敗したらどうなるか分かってんだろうなァ」
「それで構わん 陛下お願い致します」
「責任は取らんぞ」
「はっ 行けグレイ」
突如として彼の背後から黒尽くめの人が出て来たのでとっさに {ベクトル変換0.3(m)}を念じると
すぐそこまで来ていた彼(彼女?)がはじき飛ばされる
そんなことを繰り返しているのも暇なので {毒 麻痺 精神汚染 魔法攻撃 物理攻撃 無効}{反射神経 殺気感知 強化}を念じておく
5分後、疲れ果てたグレイの姿がそこにあった
ちなみに俺は寝転がって休んでいた 立ってるのってつらいよね誰に言っているんだ?自分か・・・
自問自答に虚しくなっていた頃王様から声をかけられる
「私の臣下が無礼なことをした 死刑だけは止めていただきたいのだが」
「あぁ? いいぜ」
「良いのか?」
「頼んできたのはそっちだろうがよォ 降格にしておいてくれよそんななめた口たたけねぇよォにな」
「寛大な処置に痛み入る」
王様が頭を下げたことによりハイドが睨みつけてきたがすぐに宮殿の奥に連行されていった
思ったより面白くないなチートは
「それでどこに行けばいいんだ?」
「うむ 先ずは火と鍛冶の国シディロルに向かって欲しいのだ」
「ン?何で直接魔王に行けねェンだ?」
「言うのを忘れておったな 五つの国の迷宮にあるクリスタルをこの国にある塔に嵌め込むと魔王への扉が開くらしいと神殿の老害共が言っておったが間違いではないじゃろう」
「(めんどくせェがこれもファンタジーならではだな)分かったそれじぁあ行ってくるぜ 準備はいいか?第三王女様よ」
「・・・シルフィーナでいい」
「了解だシルフィーナ」
出会った時からずっとだが感情の起伏が全然ない
機械で出来ていたりしないよな
とか阿呆な事を考えていたら王様に呼び止められる
「ちょっと待つのじゃ」
「ンだよ」
「こちらが何もしていないというのは体裁が悪いのでメイドを付けることにする」
「メイドォ~ 足手まといならいらないっ!?」
こっちに向かってナイフが投げられてきたが殺気感知と反射神経を駆使して躱す
強化してて良かった生身なら避け損ねていたかもしれない
投げられた軌道の先を見ると銀髪で蒼い目のクールビューティなメイドがいた
なんだこの国には銀髪美少女が多いのか?
「これで足手まといでは無いことが証明されたはずです」
「一歩間違ってたら死ぬんだが」
「それならば貴方がその程度の人間だということです」
「それもそうだな」
「怒らないのですか?」
「言っていることは至極まっとうなことだし正論だからな 正論だからといって激昂するほど俺は馬鹿じゃねェ」
「そうですか私はアスラ・ファンデノールと申します」
「そうか俺に至らないことがあったらサポートして欲しいんだが・・・そういえばこの国の貨幣ってみたことがねェな」
「これですよ この世界は共通の貨幣テラで換算されています 石貨で1テラ 鉄貨で10テラ 銅貨で100テラ 銀貨で1000テラ 金貨で10000テラ 白金貨で100000テラです」
「何で白金貨をアスラが持っているんだ?」
「昔はやんちゃしたものです」
「見た感じ同い年にしか見えないんだが」
「えぇ 多分同じ年だと思いますがそれが?」
「それがって まあいいやをちょっと見せてくれ」
「わかりました」
ファンタジーなんかで出て来そうな感じだな 増やしてみるか {魔法の袋 容量無限}これを召喚しておくお金が持てないってっことはなくなるだろう
そして {全ての貨幣 101倍}失敗した 袋を出しただけで広げていなかったから散らばってしまった
素早く回収して二人に「行くぞっ!」って手を引く
他の皆が狐につままれた顔をしていたが正気に戻ったらしく
呼び止める声が聴こえたが町に入るまで無視して走り続けた
どうやら波乱の前触れかもしれないとわくわくしながら二人の手を引いて走る
始まりの喇叭が今吹かれた
物語は紡がれていくのである