第二十七話 誰がU.N.オーエンを殺した?
第七章 紅き月と蒼き鷲
"Any soldier worth his salt should be anti-war. And yet there are things still worth fighting for." - General Norman Schwarzkopf
どんなに有能な兵士でも反戦には変わりない。それでも戦う価値がある時がある。
―― ノーマン・シュワルツコフ陸軍大将
………………朝か。
目を開けると真っ赤な天井が視界に入った。
「レミリアの野郎は何を考えてやがるんだ?」
神社に置いてきたはずのものがアサルトライフルと防弾ベストがベッドの脚にかかっていた。ハンドガンはホルスターに入ったままだ。
「真様、お嬢様がお呼びです」
「うおっ?!なんだ?咲夜か」
抑揚の無い声で呼びに来たのは咲夜だった。
「かっさらった、てことはちゃんと朝飯あるだろうな、別に無くてもいいが暴れてどこかへ行っちまうかもな」
腹が減っているからか、かなりイライラしている、つい当たってしまった。
「朝食も準備されています、ですがまずはお嬢様の話を聞いていただきたく思います」
「そこまで言うなら、な」
咲夜に連れられ目にキツイ色の廊下を歩く。
すると突然銃声が響く。
「クソが!なんでここにまで来やがる!」
すぐに銃声が聞こえた方の壁に張り付き、ライフルを取り出す。
敵は小規模のようだ、IFF応答なし、観察しても敵の装備品を持っている。明らかに敵だ。
サプレッサーを取り付け、遠い敵から仕留めることにする。
かなり新兵らしい、突然の事に驚き、ウロウロしている。
左目を失ったせいで若干遠近感と照準のズレが気になるがほぼ戦闘行為には問題はないようだ。
10人いた敵を全て俺が倒した、咲夜は隣で見たまま。
その時、廊下に声が響いた。
「さすが真ね、左目を失っても戦闘力には変わりないのね?」
その奥から、レミリアが悠々と歩いてきた。
「いつまでたってもこないから見に来ちゃったわ」
「すみませんお嬢様、奴らの侵入に彼が気づいてしまいました」
「いいのよ、彼の戦闘行為に乱れがないか確かめたかったし」
どうやら、また厄介ごとに巻き込まれたようだ。
[2050:12.05:21:52 紅魔館 執務室]
あの後朝食を食べ、部屋に戻り、昼食を食べ、部屋に戻り、夕食を食べ、レミリアにようやく呼び出された。いい加減にしろ。
「それで?俺を呼んだ理由とはなんだ?」
「多分貴方は気づいていなかったかもしれないけど、私には妹がいるの、五年離れた」
「ああ、フランドールとかいった奴か」
あの後ろにいた七色の羽を持つあいつか。
「あら、知っているなら話は早いわ、
フランは情緒不安定で、長い間地下に閉じ込めていたの、彼女は
ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を持っているわ。
最近は外に出しているけどあまり関係ないわね、それで彼女の能力は
【赤い月が出ると能力が強化】されるのよ。
あと二週間でその赤い月が現れるのだけれども…………」
「能力が強化されるのはいいじゃないか?特に問題でもあるまい」
「そうじゃないのよ、フランは定期的に精神が不安定になるの」
「そういうことか」
「そう、今月ちょうどその時期がかぶるのよ、それであなたに協力してもらいたいのよ」
「自分の妹も管理できないのか………すまん、言い過ぎた、だからそのグングニルしまってくれ」
「協力してくれるわね?」
「ああ、だが人が足りん」
「そもそもあなた弾幕ごっこってしたことがあるの?」
「ない!!」
レミリアは深いため息をついた。
「ここに白紙のスペルカードが六枚あるわ、それを使ってちょうだい」
レミリアから渡されたのは長方形の白紙。
「これをどう使うんだ?」
「念じるのよ、こんなものにしたいとね」
「それなら簡単だな…ところで、今思ったんだが、俺じゃなくて霊夢の方がいいんじゃないか?」
レミリアは鼻で笑ってこう言った。
「わからないのかしら?博麗の巫女は異変を解決するもの、フランが危険なものと判断されたら紅魔館は紫に消されてしまうわ」
「俺さっき弾幕ごっこ始めてって言ったよな、それによる異変解決は知らないぞ?」
「………とにかく作りなさい、当然美しくないとだめなのよ」
「へーへ、わかりましたよ」
さて、何を作ろうか。
一発の見えない弾丸を前に放ち、その後にレーザーで追わせてその背後に光弾を散らせる。
「そうだな……銃符「インビジブル・ワン・バレット」とでも呼ぶか」
後の五枚を作り、どこに入れようかと悩んだ、普通に持っていれば展開に時間がかかる、どうしようか。
そうだ、いいことを思いついた。
コルトパイソンと.357マグナム弾の薬莢を召喚、スペルカードを小さく畳んでその薬莢の中に入れる。
そうすればシリンダーを回転させるだけで後は引き金を引けばスペルカードが発動できる。我ながらいいアイデアだ。
「それで?できたが?」
「まぁ、待ちなさい、来たわよ」
扉が叩かれ、誰かが入ってきた。
「レミリア!呼ばれた通り来たぜ!」
「魔理沙?!なんでここにいるんだ?桜達もなんでここに?」
「私が呼んだのよ、人が足りないんでしょう?まだ他にも来るわよ」
「あと誰が来るんだ?」
「永遠亭から永琳と優曇華、妖怪の山から文、早苗、白玉楼から妖夢、霧の湖からチルノと大妖精が来てるわよ」
次から次へと玄関のドアが叩かれる、騒がしくなってきた。
「それくらいいれば戦術が組める、時間と部屋と、それから地図を、可能な限りさっさと片付けるぞ」
Missions briefing
紅魔館の食堂はかなり広く、五十人近く収容できる広さだ。
そこには今ブルーイーグル隊や妖精、妖怪や吸血鬼や現人神が座っている。
前にはホワイトボードに模造紙にプリントされた紅魔館の地図が貼られている。
真「よし、全員来たな、始めるぞ」
魔理沙「もう三十分も待ってたんだぜ」
真「その辺は謝罪する、では今回の作戦について説明する、
今回の作戦は聞いての通り、明後日の夜に【紅い月】が上る、その日は全体的に妖怪の血が騒ぐそうだが、この屋敷のフランドール・スカーレットは非常に危険な状態にある。
フランは【紅い月】が上ると能力が強化される、それは問題ない、だが、明後日は同時に精神状態が不安定になる、その日に重なっちまう、恐らく見るもの全てを壊してしまう、そう考えてるんだな?…レミリア」
レミリア「そうよ、そのために何百年もの間閉じ込めているのだから」
真「よし、それが管理人、紫にばれたら紅魔館ごと幻想郷から追い出される、そこで俺たちの出番、ということだ、ここまでで質問は?」
早苗「ばれないように静かにしてるのはどうなんですか?」
真「ダメだ、どうやら能力の増加と同時に精神の干渉も同じだ、つまり、紅い月が沈む前に気絶、そして精神治療しなければ脳がやられる」
桜「つまり、死ぬと……」
真「そういうことだ、他には無いか?無いな、話を続ける」
魔理沙「この地図ってあの時のか?」
真「そうだ、この館はコの字型をしていて、各階につながる階段は一つしかない、よって今回のメインの目標は時間稼ぎだ、
動きが制限されるため、遊撃して叩くことは不可能に近いためだ、
フランの相手はレミリア、パチュリーでいく、精神治療薬を渡しておこう、気絶したらこいつを首元にプスリと刺すだけだ、後は中の薬がやってくれる。
門は美鈴とチルノが頼む、可能な限り時間を稼げ、できれば門前払いも頼む」
チルノ「なんであたい?」
真「チルノは最強なんだろ?ただ、最強のスペルカードは前がガラ空きだ、そこで体術のプロの美鈴にそこに入ってもらうことで死角を埋める」
妖夢「二人は反則では?」
真「どこに二人はダメだ、と書かれていたのか?
続けるぞ、正面玄関は例によって封鎖だ、この部屋も扉を封鎖する。
できるだけ道順に進ませれば時間が稼げる。この部屋は医務室として使う。
各部屋に専用の弾幕ディスチャージャーを設置し、少しでも時間を稼ぐ、
三階には魔理沙と………妖夢で行こう、魔理沙は可能な限り遠距離で片付けろ、妖夢は近づいたら切り捨てて構わない、
二階には咲夜と優曇華で行こう、咲夜は近接重視で頼む、優曇華はスナイパーとして屋敷侵入の阻止をしろ、
一階は早苗一人で頼む、永琳は救護室で怪我人を頼む、早苗、なんで一人なのかは受け付けない。
ブルーイーグル隊は図書館で基本的に交戦だ、分隊分割展開交戦法の恐ろしさを見せてやれ、
俺は地下室前に陣取って説得して時間を稼ぐ、そこまできたらもう時間も稼げているだろう、そうなればあと少しだ
いいか、今回の作戦はあくまでも時間稼ぎだ、撃破じゃない。
具体的には動き回ったり、絶え間無く弾幕を張ったり、何かにつけて話したりしろ、1エリアで90分稼げれば上出来だ、
レミリアは戦闘開始と同時に月を隠せ、フランの能力が変わらないのであれば即刻中止だ、
何か質問はあるか?」
健吾「もし、もしもだ、この作戦が失敗したらどうなるんだ?」
真「今回の作戦は失敗のパターンが二つある、
一つは時間切れ、夜が明け、月が沈んでしまえばフランは死亡、俺たちがしてきたことは意味が成さなくなる、
一つは霊夢に地下室を突破される、これはその時点で紫に連絡され、次の日にでも消される、俺たちは加担したとされて何らかのペナルティはうけるだろうな、他には?」
早苗「明後日雨で月が隠れていたら?」
真「ダメだ、今までの紅い月が上った日は確実に晴れた、これは能力でなんとかなるレベルじゃない、他には無いな、では、明後日まで解散!」
[2050:12.07:22:52 紅魔館 地下室]
本館三階から図書館、地下室への道を確認し、到達時間を確認する。
地下室の扉を開けて中を見るとこちらを見るフランドールを見つけた。
「あなたは誰?何故か見たことのある顔だけど」
床にも壁も紅い色が塗られている、部屋の隅には白い骨が積まれているのが見える。
椅子は足が取れ、机は粉々になり、床に敷いてあったと思われるカーペットはズタズタにされている。
「真だ、前にここで会ったはずだが」
「あぁ、あの時のお兄ちゃんか、なんでここに来たの?」
お兄ちゃん?かなり違和感があるが放っておこう。
「戦う場の確認だ、あんたは寝ないのか?」
「私は吸血鬼よ、夜の住人だもの、夜に起きていなきゃおかしいでしょう……それにね、最近変な夢を見るの、その夢を見るのが怖くて最近全く寝てないわ」
変な夢?紅い月の影響か?
「ねえ、真お兄ちゃん、私は誰も傷つけずに明日をすごせるの?」
「きっとあんたの姉が助けてくれるさ、それに……」
扉に手をかけ、後ろを振り返ってこう答える。
「同じく心を壊された者が何もしないわけじゃないからな」
扉を開き、返答を聞く前に部屋から出た、
明日はついに本番だ。
この度当小説は5000アクセスを突破いたしました(三月七日午後九時現在)。
みなさんありがとうございます。
ところで、十二月に急にアクセスが増えたんですけど一体何があったんでしょうか、今だに謎です。




