第二十一話 スクランブル
最後の言葉の詳細を聞こうとしていたが、今は話したくないと引き下がらせた。
彼女は新聞記者をしているそうだ、マスコミ関係者か、あまりいい思い出が無い。
とりあえず彼女が作ったご飯をいただいて、真と交信するために外に出た。
「こちら健吾、真、応答せよ、繰り返す、こちら健吾、応答せよ」
《こちら真、よかった、無事か》
「ああ、無事だ、腕の骨が折れている程にな」
向こうからため息が聞こえてくるが、すぐに会話が再開される。
《定期連絡を始めてから一週間経っているぞ、こちらもそれなりの対応を始めないとならんぞ》
「ああ、わかっているが、骨がくっつくまで動けんぞ」
《そこはいい、ただお前の位置を知りたい》
「どうやってだ?」
《光柱を打ち上げる、そこに向かってビーコンを射出してくれ》
「その方法だと奴らにバレるぞ」
《なら弾幕……エネルギー弾、特大のを打ち上げてくれ、どうせここの奴らだ、弾の一つや二つ、気にしないだろ》
「それもそうだな、じゃあ撃つぞ」
そういって、エネルギーを手のひらに集め、空に打ち上げる。
《確認した……座標の固定完了、確認完了、よし、そちらの位置を確認した、どうするか?迎えにいくか?》
「いや、保護してくれた人がいる、その人に頼む、足が折れてるからな」
《了解、早めにきてくれ》
そういって通信を切った。
[2050:09.18:11:51 妖怪の山 文の家]
「とりあえず、これ着てください」
そういって彼女が差し出したのは、白狼天狗が着ている服と同じものだ。
「なんでいきなりこの服を着るんだ?」
「決まってます、外に出るんですよ、知らないんですか?リハビリですよ」
「あ、いや、山はリハビリに向かないと思うんですけど…」
「いいんですよ!運動すれば大丈夫です!」
「じゃあなんでこの服なんだ?」
「いや、外に出るので、変装のために……」
あぁ、たしか紫のスキマでここまで来たんだ、正式な手段をとっていない、見つかったら即連行だろう。
それよりも、昨日そんなジョークを言っていた自分が忘れていたことに驚きを隠せない。
とりあえず着替え、外へ繰り出すことに、どうしてこうなった。
「ここが私の一番好きなポイントなんです!」
そこだけ広場のようになっていて、山から景色を見渡せるようだ。
あぁ、くそッ、あの時を思い出した。
「?どうしました?」
「いや、何でもない、ただすごい景色だと思っただけだ」
「ですよね!すごい景色ですよね!いつも私はここに来ているんです!」
富士山麓暴徒事件。
隕石の落下跡を調べていた調査隊が、突如暴徒に襲われ、その暴徒はそのまま静岡県に向かい、都市でかなりの死傷者をだした事件。
あの時、俺の親はその調査隊に参加していた。
だから、政府が隠していることも知っている。
あれはゾンビだ、生きる屍だ。
親はそいつらの犠牲になり、俺はその親を殺した。生き残るために。
そうやって俺は生きている、誰かを犠牲にして生きている。
「文さんですね、あなたには死んでもらいます」
突然なんだ?!
「ちょっと隠れてください、すぐに終わらせます」
文はそういって声をかけてきた奴らの前に立った。
「いや、俺一人逃げるわけにはいかないんでね、残らせてもらいます」
相手は五人、内一人が凶器持ち、立ち位置は凶器持ちが後ろ、そこから二人ずつ。
服装は俺が着ている服と同じものだ。どうやら良く思わない奴らが混乱に乗じて殺して回っているようだ、よく見つからないな。
「あんた誰だ?最近のリストには乗っていないが……まあいい、殺せ」
刀持ちが命令する。
「やめてください健吾さん、こちらの争いに巻き込むわけには……」
言い終わるが先か、良く聞かないで刀持ちに急速接近、腹に一発殴る。
うめき声をあげ、倒れる。
「速い!落ち着け!囲めばこちらに有利だ!」
そのまま接近してきた奴に左回し蹴り。
吹き飛ばしただけであまり効果がない。体制を立て直す。
「クソが!死ねッ!」
一人が殴りかかるが、その腕を掴み、顔面に裏拳を食らわせる。そのままストンプ。
向かってきた一人を蹴り上げ。
起き上がってきた奴の後ろに回り、ネックツイストをかける。これで三人。
久々に使うか。
向かってきた一人に目つき。
さらにスープレックスをかける。
「チクショウ!舐めやがって!」
最後の一人が拳銃を引き抜いてきたが、持っている腕を掴み、左で腹を殴る。ついでに銃と刀を奪い、土の中に埋めた。
「逃げましょう、この騒ぎに気づかれたかもしれない」
「は、はい、そうですね」
[2050:09.20:13:51 妖怪の山 文の家]
ようやくリハビリが完了し、ようやく博麗神社に戻れることができる。
が、
飛び方を忘れた……
この事を文に伝えると、
「わかりました、私が連れて行きます!」
と言って俺の腕を掴み、空へ羽ばたいた。
快適な空の旅を……って速い速い速い!
何これ!景色見る暇もない!それどころか当たる風が強くて吹き飛ばされる!
「どうですか?最高のスピードですが」
速すぎ!死ぬ!と言いたいが、当たる風が口の動きを止める。
気づけばもう神社が見えている。
さらに急に止まるので、慣性で吹き飛びそうになる。
「よう健吾、完治したから帰還すると聞いたが死にかけてるじゃねぇか」
「よう……」
「早速だが、訓練だ、戦闘機にのれ、当然お前が操縦だ」
「え」
[2050:10.01:12:13:51 博麗神社]
《よし健吾、今までやってきた事を思い出せ、最終チェックを開始する、ラダーを確認する……チェック、フラップ確認……チェック、準備よし》
操縦席に座って後席に座っている真の通信を聞く。
《よし、いいぞ離陸しろ》
スロットルを全開にして特設滑走路を走る。そのまま離陸する。
《よし、上昇しろ》
操縦桿を手前に引き、機首を上げる。
《よし、降下だ》
今度は奥へ倒し、機首を下げる。
《よし、右旋回と左旋回》
操縦桿を右に傾け、機体が傾いたところで引き、右旋回、今度は左に傾け左旋回。
《いいだろう、戦闘体制に入れ、ドローン射出、ドローンを撃破しろ!》
地上から白い機体が飛び出し、恐ろしい軌道で飛ぶ。
《ガンインレンジ!》
敵を目の前に捉え、機銃を発射する、数発当たり、そのドローンは墜ちていく。
《ターゲットデストロイ!残り四機》
レーダーを見ながらどこにターゲットがいるか確認する。
敵を確認し、ロックオンする、ミサイル発射。
《FOX2!FOX2!》
命中し、ドローンは爆散した、さらに後ろにもう一機、機銃を発射し、命中させる。
《後二機》
反転し、すれ違い様に機銃を撃つ、そのまま地上付近にいる一機を機銃で破壊する。
《オールクリア、制空権確保、テストは成功だ》
一旦背もたれにもたれかかり、一息つく。
《ん?レーダーに反応あり、桜、ドローンをまた射出したのか?》
《いいえ、一回だけだけど?》
《あー、全員に告ぐ、防空圏内に入ろうとしている機体を三機確認、戦時中につき即座に攻撃する、防空体制をとれ》
「俺たちはどうするんだ?」
《交戦する》
「大丈夫か?このオンボロ爺さん機体で」
《大丈夫だ、問題ない、F-4ファントムなんて長年使われてる、問題ないさ、行くぞ》
《流石に無理しすぎたな…着陸チェック》
あの後、戦闘したが攻撃を受けてしまいエンジンがガスガスいっている。
ギアを下ろし、滑走路に着陸する。
ギアが滑走路についた瞬間、ギアが折れてしまった。
そのまま胴体着陸し、機体が回る。
《着陸に失敗した機体がいる!消防班急げ!》
「あぁ、クソっ、死ぬかと思ったぜ…」
キャノピーを開き、よろめきながらおりる。
止まった時はすでにエンジンは黒焦げになり、尾翼が折れていた。
「どうするんだ?これ作戦で使うつもりだったんだろ?」
「大丈夫だ、また別の機体を用意してある」
そういってハンガーに向かう。ハンガーのシャッターを開くと、そこにはF-15Dがあった。
「F-15Dか、最強の鷲の複座式だったか?」
「あぁ、そうだ、言っておくが後席に俺は座らないぞ?」
「じゃあ誰が座るんだ?」
「射命丸文だ、今桜が後席のレクチャーをしているはずだ」
Missions briefing
真「十月十四日……明日が襲撃日だ、作戦を確認する。
今回の襲撃は人間の里を襲撃したあの戦艦だ。
型式番号AM1528、通称アクーラ、ロシア語でサメだ。
この戦艦は飛行能力と航海能力を同時に持っている、上空にいるときの最大速度は時速300マイル、航海中は50ノット。
46cmの主砲が四門、40mm機関砲が八門、30mm対空砲が十二門、CIWS(近接防衛火器システム)が八門、SAM(艦対空ミサイル)が八門、トマホーク対地ミサイルが二門、そしてナパーム爆弾投下口が二箇所だ」
健吾「ハリネズミみたいだな」
真「あぁ、だから地上からの攻撃が効きにくい、その為空中から攻めてもらう、健吾、F-15Dを使え、文、お前が後席に座れ」
健吾、文「了解」
真「地上部隊はヘリで襲撃三時間前に現地に向かう、その後健吾は向かえ、後健吾、下に対地用の40mmが付いているから、高度10m以下で飛ぶな、要請があったら水平爆撃体勢に入れ、
以上だ、各員第二次戦闘配置につけ」
皆さん、開けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今年の目標はとにかくこの作品を終えることです。
できるかどうかはわかりませんが……
必死に頑張っていきますのでお楽しみに




