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東方戦争記  作者: 紅き蠍
第五章 妖怪と人間
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第二十話 来るべき日

9月20日



この日までに博麗神社に襲撃した敵部隊の数はおよそ20。




これまで以上の襲撃回数により、博麗神社の大幅改修が開始された。




簡易ではあるが、滑走路の完成により、制空権の確保を容易にし、対空砲、武器庫の増設も行った。




段々と要塞と化していく神社。



それでも、戦わなければならなかった。




第五章妖怪と人間


"If an injury has to be done to a man it should be so severe that his vengeance need not be feared." - Machiavelli


相手に傷を負わせるなら、仕返しができないほど深い方がよい。――マキャベリ(15世紀のイタリア、ルネサンス期の政治思想家)


[2050:09.11:03:02 博麗神社]




【防衛圏内に敵大隊接近!警戒せよ】



その警告音声で目が覚める。

もう何度目だろうか、数は数えていない。



いつも通り、近くに置いてある防弾ジャケットを着て、ライフルを持ち、ハンドガンを手に取り、手榴弾をくくりつける。



「総員起きろ!奴らが来たぞ!」



声をかけて、屋根に置いてあるリモートターレットを起動する。



まだセントリーガンが機能している間は範囲外の敵を倒していくが、時間が経つにつれて防衛網を突破してくる敵が多数でる。



そうなってくれば、ターレットの使用を中止して、迎え撃たなければならない。



結局この日も、朝が来るまでずっと攻撃は止まず、騒がしい一日が始まるのだった。





「クソったれ、どいつも腰抜けばかり、突破して本殿まで来いや」




「どうやら敵はこちらがかなり重要と気づいたみたいだな」



「この間の壮大な花火が目についたか」



襲撃されたその日の昼に健吾と今度の妖怪の山防衛戦について話し合っている。



「どうやらそうらしい、ところで、妖怪の山には何が足りないと思うか?」



健吾が地図を見ながら、ペンで重要な防衛拠点やラインを書いていく。



「数はある、地上なら妖怪側が有利だ、だが、対空や制空権となるとな…奴らはこの間の戦艦を持ってくるらしい」



「ああ、”サメ”か」



人間の里で追い払ったあの戦艦を思い出す。



とりあえず、妖怪の山のお偉いさんに情報を与えることにする。



そうして話がまとまったとき、霊夢が入ってきて



「妖怪の山に入るのは苦労するわよ」



と一言放った。



「奴らは元々頭が固い上に、この戦争が始まってからかなり警戒してる、信用に値しない人間はまず入れてもらえない筈よ」



「どうするんだ?このまま放っておいて全滅する様を見るか?」



頭を悩ませていると、一つの方法が浮かんだ。



「頭が固い…それは上の者に従う所謂ヒエラルキー社会、なら、もっと上の者に従うだろう」



「霊夢、紫を呼んできてくれ」



「ここにいますわよ?」



目の前にスキマが現れ、そこから顔を覗かせる紫。



「あんたまた黙って話聞いてたのね……」



「霊夢、いいんだ、情報はお互い共有したほうがいい、紫、話を聞いていたならわかるな、妖怪の山に行くぞ」



山へは俺、健吾と紫で行く事に、残りは待機。




[2050:09.11:10:28 妖怪の山 大天狗住居]



紫のスキマにより、数秒で目的地についてしまった、ただ、すごく酔ったため、少し休憩して中へお邪魔させてもらった。中にいた白狼天狗は警戒したが、紫の姿を見て後ずさりした。



「大天狗はいるかしら?」



大天狗……妖怪の山の所謂管理職についていて、滅多に顔を出さない天魔の代わりに妖怪の山を取り仕切っている、だが、なぜか名前は誰も知らず、全員大天狗と呼んでいる……昔読んだ資料を思い出す。




「おられますが、いかが御用で?」



「警告よ」



「しばらくお待ちください」



長い時間がかかりそうなので、静止する。



「そんな事をしていると、日が暮れちまうぞ、俺たちが持ってきたのはあんたらの生死がかかっているもんだ、できれば早く見せてやりたいのだが?」



「おい、真、何してるんだよ」



「……あなたたちは信用できないのです、たとえ紫様がいたとしても、先日は大切な話があると言って自爆した奴もいました、なおさら信用できません」



「信用しないならしないでいいが、知らなきゃ死ぬぞ?」



「いずれにしろ、武器を持っているなら入れられません」



「なら、こうすればいいだろ?」



ハンドガンを取り出し、マガジンを抜き、地面に落とす。



「まだ駄目です、服の中にまだ入っているかもしれないじゃないですか」



「なら、これならどうだ?」



こんどはハンドガン本体を分解し、それをカバンへしまった。



「……もういいです、どうぞお入りください」



中に入り、大天狗と面会したが、顔はお面をかぶっていてわからない。



それ以上に面会は非常に不愉快なものになった。



一応警告はした、後は好きにやらせよう。



こちらも好きにやるが。



妖怪の山にはメカ好きの河童がいるらしい、紫にスキマで送ってもらった。



どうやら河童は滝の近くにいるらしいが…どこにもいない。



するとどこからか声が聞こえてきた。



『君たちのことはわからないけど、私なりの歓迎をしよう、まず私を見つけてみて、そしたらあなたたちがふさわしい人間が決める』



どういうことかわからないが、つまりは探せ、とのことだろう。



とりあえずソナーを打ち込むが、なぜか反応しないため、ノルンを熱に反応するサーマルモードに変更する。



滝の横に熱源反応……違う、あんなに大きくはない、もう少し見渡し、もう一つの熱源を発見。



「あんたがにとりだな」



「そうだよ盟友、ようこそ私の工房へ」



「頼みたい事がある、遠隔操作型の機銃を作ってほしい」



それを聞いて驚く。



「いいけど、材料が足りないよ」



「材料なら出すさ」



「ちょっと待った」



健吾が耳打ちしてくる。



「どうした、健吾」



「そんな機銃どこに取り付けるつもりだ?」



「戦闘機の裏」



「まさかお前……」



「後のお楽しみだ」




希望してきた材料(やどう考えてもいらない材料)を召喚すると、ご機嫌になって作り出した、完成まで時間がかかるようだ。



紫が先に帰ってしまったため、歩きで帰ることに。



しかし、途中で白狼天狗の警戒網にぶち当たってしまった。



「隠れろ、あまり面倒は起こしたくない」



近くの草むらに隠れる、が、その際の音に気づいたのかこちらに向かってきた。



「反応感度でかくないか?」



「麻酔銃だ、心臓を狙え」



健吾にサプレッサー着き麻酔銃を渡す。



草むらから静かに狙う。



近づいてきた奴は眠ったが、その音で完全に交戦体制に入ってしまった、警戒の笛も鳴らされた、増援がくるのも時間の問題だろう。



「健吾!走れ!」



健吾に前を走らせ、俺は後ろから追ってくる敵の上を撃つようにする。



しかし、突然地面が揺れ出した。



「うわっ、くそッ」



健吾が崖から落ちそうになるところを掴む。



「掴んだぞ!」



しかし、また揺れ出し、俺と健吾共々落ちてしまった。



途中の木にぶつかり、健吾の手を離してしまった、健吾は途中の崖で止まり、俺はそのまま落ちていく。



地面に無事着地した先は白狼天狗だらけ、光学迷彩が効くかわからないが、離れることにする。



健吾はこの熱りが冷めるまで回収できないだろう。唇を噛んで、一人でエリアから離脱した。






























Viewpoint change 健吾


手が離れた。



俺はそのまま崖からどんどん落ちていく。


その間木に何度もぶつかり、意識を失いかけるが、逆にまたぶつかり、目が覚める。



何度も何度もぶつかり、やっと地面にたどり着いた。足が痛い、折れたか?腕も腹も痛い、あばらが折れているか?傷口もある。



適当な応急手当をして進むが、痛みすぎて歩くのが辛い。



「一定時間後に緩めないとな……」



血が止まる程硬く縛ってしまうと、その先は血が通わなくなり、最悪切り落とすことになる、腕時計をセットして、動きだす。



何度も転びながら下山しようとするが、途中で捜索中の白狼天狗に接触してしまう。



「いたぞ!あそこだ!」



くそッ、こっちは怪我人だぞ!もっと優しく……しないか。



まずい、傷口が開いた、もう長くはもたない



視界も霞んできた、前がよく見えない。



そのせいで目の前の石につまづいたようだ、全身が痛む。


また起き上がろうとした時、体に浮遊感を感じる、どこかに落ちているのか?



しばらく落ち続け、何かにぶつかったとき、目の前が真っ暗になった。












































『ここに……来てませんよ?…………連れてきている訳ないじゃ………』



誰かの声が聞こえる。



『とにかく…………戻って…………あなたには任務に…………』



遠いのかよく聞こえない。



『それ以上…………あなたには少し…………ですね……』



何かに怒っているのか?



『もう………こない………』



そう言った後、足音が近づいてきた。



『大丈夫………もういません』



何がいないのだろう、脳がうまく回らない。



ダメだ、眠い、寝たくない………




































ピピピピピピピピピピ!



腕時計が鳴っている、傷口の止血を緩めないと……



しかし、その心配は起きた瞬間無用だった。



なぜか知らない天井が目を開けた瞬間飛び込んでくるのだ。


しかも布団をかけられている。なぜだ?最後は外で気絶したはずだが。



しかも手当がしてある、一体誰が?



「あ、やっと目が覚めたんですね」



突然入り口から声がかかる。

立ち上がり、距離を取ろうとするが、足が痛む。



「あ、まだじっとしていてください、まだ折れたところが治ってませんから」



そう言われ、とりあえず体だけでも起こすことにした。



「私は射命丸文っていいます、大丈夫ですか?あなたは道端で倒れていましたよ?」



彼女は白い半袖のシャツと、黒いスカート、山伏風の頭巾をかぶっている。



どうやら、助けてもらったようだ。



「………あれ?」



「………?どうした?」



突然疑問を口にしたので、反応してしまう。



「何で助けたんだ、このまま俺を大天狗に引き渡すつもりだろう、って言わないんですか?」



少し考えればわかる簡単な質問に思わず微笑んでしまう。というより、久しぶりか、誰かの前で怒りや呆れ以外感情を出すのは。



「なにがおかしいんですか?」



「いや、まさかそんなことを言うとは思わなくてな、簡単だ、もし突き出すならもうここにはいない、今頃空で地上を……いや、地面の下、か」



最後の言葉に首を傾げるが、納得したようだ。



「やっぱりそう思いました?いや~突然空から人が落ちてくるなんて想像してませんでしたよ、その後もあなたを隠すために必死でしたからね、ところでお名前は?」



そういえばまだ名前を言ってなかったな。



「俺か、俺は、健吾、上地健吾、



親を殺した親不孝者さ」






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