第九話 Night watch
「貴様…味方に何をしているんだ?」
「見りゃわかるだろ、お前を殺そうとしてるんだよ!」
突如、背後に変な気配がしたため、とっさにしゃがんだのが幸いだった、俺の頭の上を弾丸が飛んでいったのだ。
「貴様は味方を裏切ったな…銃殺刑物だな」
カチャリ
ブルーイーグル隊の全員が霧谷を囲み、ハンドガンを向ける。
裏切り者は、容赦無く"処理"する。
今までにもやってきたことだ。
《こちらHQ!高速で接近する生命反応あり!》
突然無線が入り、目をそらした瞬間に
「あばよクソったれの転生者さんよぉ!」
奴に逃げられた。
「HQへ、館から離れていく反応を追ってくれ、接近中のはこっちで処理する」
HQに連絡をいれ、ベランダから中庭に降りる。
北から飛行機雲をひきながら向かってくる物があった。
スティンガーを召喚し、ロック、発射。
そのまま真っ直ぐ飛んでいき、当たる直前で消えた。
「バカな!消えた!?」
すぐに現れ、また発射するが、また消えた。
もう一回撃とうとする頃には、自爆の危険が高い範囲に入っていた。
ライフルに持ち替え、撃とうとした。
が、銃口が向く前に腹に飛び蹴りをくらった。
「ガハッ!」
俺は壁まで吹き飛ばされ、体を壁に打ち付けられた。
腹と背中がかなり痛い、その痛みに耐えながら立つ。
赤いパワードスーツを着た敵が宙に浮いていた。
俺がライフルを持つと奴は離れ、片腕がライフルのような形に変形し、空中から俺を狙う。
すぐに壁に隠れ、敵の攻撃を避け、隙を見て射撃、隠れるを繰り返す。
すこしすると、敵の武器が変わり、見たことがない武器に変わった。
敵が発砲すると、赤いレーザーが真上に飛び、ある程度上昇すると、こちらに向かって飛んでくる。
それがわかり、壁から離れて、動きながら発砲する。
しかし、いくら撃ってもひるむが、やられる様子が見られない。
そうしている間にも奴は武器を変え、今度は大砲のような物が現れた。
こっちに向けると、砲身が電流を帯びたようになる、一目で危険と判断した俺は、すぐに今いた場所から逃げる。
すこし遅れて発射され、着弾すると大きな音をたて、大穴が空いた。
走る、走る、走り続ける。
もしかしたら、接近すれば良いのでは?という考えもあったが、接近すること自体が困難な状況だった。
また武器を変えた。
今度はブレードのようだ。
自分も刀に持ち替え、空を飛ぶ。
間合いを詰めて、敵に肉薄する。
互いの刀がぶつかるごとに火花を散らしながら、空中を飛び回る。
しばらく打ち合い、互いの刀が交差し、一歩も引けない状況になる。
敵が勢いよく振り、俺の刀を弾き飛ばす。
俺は一旦離れるが、どんどん距離を詰められる。そして…
ドドドドドドドド!!
健吾のブローニングの援護で奴は離れた。
『ふむ、まあ、こんなものか』
機械で変換された音声が、奴から聞こえる。
『まだまだ未熟だな、もっと強くなったら、また来よう、さらばだ、青鷲』
そう言って奴は空に帰っていった。
「HQへ、未確認は撤退した、繰り返す、未確認は撤退した」
「よく奴らを追っ払ってくれたわね、感謝するわ、光栄に思いなさい」
「ありがとうございます、お嬢様」
皮肉たっぷりで話す。
ちゃんとした言葉で返さないといけないのはわかるんだけど…その…身長に合わないカリスマを醸し出されても…ねぇ?
「そうね…その能力を買ってあげる、私の護衛にならないかしら?」
「残念だが、それはできないな」
「何故?こっちに来れば待遇はいい筈よ」
…このお嬢さんは分かってないみたいだな。
「俺たちは紫によって結成された特殊部隊、それも解放部隊だ、そんな部隊が一箇所でグズグズしてたらどうなる?世界ごと壊滅だ、だから貴方の意見は聞けない」
「…面白いわ、今までで貴方のような口を聞いたのはパチェぐらいだわ、気に入ったわ、あなた達の希望を言いなさい、できる限りで協力するわ」
よし、うまくいった、チャンス!
「戦力が心もとない、誰か一人でもいいから部隊に入って欲しい、それから、神社だと訓練できるスペースがない、それの確保だ」
「そうね…最初の希望は…咲夜、命令よ、ブルーイーグル隊に入隊しなさい、普段はここにいさせてもいいわね「もちろん」…訓練スペースならこの屋敷を使いなさい、咲夜に言えば広くしてもらえるわ」
「ありがとうございます」
「これだけの大判振る舞いよ、ちゃんと解放して早期に戦争を終わらせなさい」
「了解、ではこれにて、明日まで止まらさせていただきますので」
そう言って、部屋から出た。
さあ、夜警の始まりだ。
夜、それは戦場にいる時に一番注意しなければならない時間。
奇襲はもちろん、偵察や潜入が来やすい時間。
館の入口には美鈴という女性が
「館の入口は任せてください!」
といった次の瞬間に寝ていたので、焚き火を焚いてその上でくさやを焼いておいた。
館の壁を背にして、周りを警戒する。
時々、サーマルモードやナイトビジョンモードに変え、索敵、警戒を続ける。
他の奴らはもう寝ている。
だが、その見解はすぐに消え去った。
横で音がしたので、壁に掛けていたライフル(フラッシュライト装着)を向ける
「なんだ、霊夢か」
「びっくりするじゃない…いなかったから探しに来たのよ」
「嘘だな、今は午前二時だ、途中で起きるのはあるかもしれないが、そのまま行方知らずの人を探す気にはならない」
「…眠れないのよ」
「なに?」
「今まで妖怪を相手に、死なない弾幕ごっこをしてきたけど、
命を落とすかもしれない戦いは始めてなのよ、だから緊張して、いつ死ぬかわからないから余計緊張して…
ねぇ、私は生き残ることができるの?」
なんだそういう事か…
「信じろ、仲間を、自分を、今まで妖怪や訓練で身についた技術や能力は、ちゃんと発揮されれば、自分の命を守ってくれる、
それに仲間がいれば、治療、援護だってしてくれる、信じるんだ」
「なんだかよくわからないけど…仲間を信用すればいいのね」
「そういうことだ」
「ありがとう、吹っ切れたわ「静かに…!近くに敵がいる」なんですって?」
サーマルモードにして敵の居場所を探る。発見し、M14EBRにスコープ、サプレッサーを取り付けた物を召喚する。
敵は二人ずつ固まっているが、位置的に一人撃ったら気付かれる。
「私も手伝うわ、貸して」
急に言われた。訓練もしていないのに銃を使わせることはしたく無い、でも貸しちゃう。同じM14EBRにスコープ、サプレッサー。
「頬にストックを当て…グリップをしっかり握って…銃身を左手で固定…スコープを覗いて…重力は考えなくていい…お前は左の奴だ…」
準備を始める。
「カウントで撃て…3…2…1…fire…!」
同時に発砲する。同時に敵は倒れる。
「beautiful…」
褒めておく。
「次は左の奴だ…右は殺れ、左の二人は俺が殺る…」
「3…2…1…fire…!」
撃つ、もう一人がびっくりした所を仕留める。
「Goodnight」
さっさと片付ける。
「次…左だ、右の二人を頼む…」
「3…2…1…fire…!」
うまくいった、が。
「まずい!死体に気付かれた!」
パシュッ!
「これでいいかしら?」
「…あぁ…上出来だ」
霊夢が気づいた敵に向けて発砲した。
数分しか触らせていないのに…恐ろしいな…。
視界に映らなくなったので、ドローンを取り出す。
「それはなに?」
「個人用の偵察ドローンだ」
投げ飛ばし、タブレットを起動させる。
今倒した敵の少し奥に二、三人いる。
少し遠いが殺れる、タグを付ける。
タグを付けられた敵の情報は、全員の武器の周りやサイトに表示される…データリークシステムだ、スコープに映る敵を撃つ。
敵は静かに倒れ、辺りは静かになる。
偵察ドローンにも敵は表示されない。
どうやらなんとか撃退したようだ。
霊夢に部屋に戻らせ、俺は警戒を続ける。
結局、何も無いまま夜が明けた。
「…今日も生き残れたなぁ」
「どうだ?真」
昼、俺たちは昨日の状況整理をしていた。
「まずは霧谷からだ、落ちていた薬莢から、M29だとわかった、腰についていたホルダーから2丁拳銃、能力持ち、そして、男を何故か憎んでいる、これくらいだ」
戦闘終了後、起きた事を確認し、調査を始める。今回はハプニングが起き過ぎた。情報を整理することは大切だ。
「能力はどんな物だ?」
「不明だ、恐らく、突入した時に剣を握っていた事から刀に関する能力だろう」
「で、霧谷はどうするんだ?」
「…全地域に霧谷の指名手配を言い渡す、罪名は反逆罪、敵前逃亡」
「ここに軍事規定は無いが?」
「俺が法律だ」
実際、軍事規定は無い、だが、味方を撃った罪は重い。
「続いて奴だ、あいつはほとんど分かっていない、ただ、敵ではあるだろうな」
最後から二番目に使ってきたのはレールガンだった。
俺たちがいた世界では、電力の供給の点で問題があるから歩兵用としては実用化されていない筈…何故?
ひとまず、図書館で、シャムに関する資料を探すことにした。
図書館に到着、大量にある本棚を見て頭が痛くなる。
「何の用かしら?盗むなら出て行って欲しいのだけど」
「えぇっと…あんたは「パチュリーよ」…あぁそうだったな、本を探しているんだが…」
「そう…なら…こぁ、こっちに来なさい」
「はい、パチュリー様」
そうして、二人でしばらく話していて、こぁと呼ばれた人?がこっちに来る。
「私は小悪魔です、こぁと呼んで下さい」
髪が赤く、長く、そして頭と背中から悪魔の羽が生えている女性だ。
「小悪魔?名前がそれか?」
「はい、私は力が他の人より弱いので名前がないんです、後、今は居ませんが、妹がこの図書館で働いているんです、ここぁと呼ばれてます」
力が弱いだけで名前無しか…以外と厳しいんだな…この世界は…
一通り説明して、屋敷の日記がある場所へ連れてもらい、探すことぐらい自分で出来る、といって下がってもらった。
名前が掠れて見えないが、表紙の立派さ、そしてくたびれた感がある一冊の本を見つけた。
中に書いてあり、読める文を抜き出して、読み始める。
(_の部分は掠れていて読めない部分)
____年4月18日
今日、私の妻が、我が子を産んだ。
元気な女の子だ、今日は従者達が大喜びで仕事に励んでいた。
きっとこの子は立派なスカーレット家の跡継ぎになるだろう。
(ここから下は読めない)
____年9月25日
また子どもが産まれた。
またも大騒ぎだ、家の従者は静かになるということができないのかね?
まあ、気持ちも分かるが。
しかし、最近妻の様子がおかしい。
大丈夫だろうか。
(ここから下は読めない)
____年4月_日
ついに妻が亡くなった。
もうすぐ____の誕__なのに。
従者達は完全に意気消沈している。
ついには___が妻が亡くなったのに怒り、従者の一人を噛んでしまった。
彼は大丈夫と言っていたが…
(ここから下は読めない)
____年_月_日
突然、私と子供達は___に______た。
突然の事に私も子供達も戸惑いを隠せない。
恐らく、___で死ぬまで閉じ込められるだろう。
(ここから下は読めない)
____年______
もう私も限界が来たようだ。
____にこの本は自分では読まない様に言いつけておく。
外では何故かいるバンパイアハンターが屋敷に攻撃している。
これを見ている君へ、____と______を頼む。
(この後のページには何も書かれていない)
所々掠れて読めない、だが、なんとなく分かった。
誰かがこの家の妻が亡くなった時、従者の一人を噛んでしまった。
多分、シャムの親が噛み付かれた人だろう。
時間、子孫を産むごとに吸血鬼の能力が薄くなっていった様だ。
誰か噛んだのはあまり関係が無い。
それ以上に何故幻想郷に入ってから変化があったかわからない。
恐らく、妖力の影響だろう。
他にも大量の本を読み、足りない知識を補い、図書館を後にした。
さあ、訓練だ。
訓練準備中…
「好きな武器をとってスタート地点にむかえ」
俺は館の一室でマイクを持ち、指示する。
レミリアの許可が降りたため、キルハウス形式の訓練をしている。
「エリアを確保しろ!」
今訓練しているのは、咲夜だ、入隊する前に実力を見せてもらう。
「次のエリアに進め!」
彼女はナイフを投げて的に当てている、ちなみに、能力は制限している。
「近接で倒せ!」
時々、通路を塞ぐように的を出し、近接で倒せない状況をつくる。
「室内に突入しろ!」
俺がいる部屋にも的を設置してあり、どうするかを確かめる。
「いい腕だな、少しヒヤリとしたがな」
頬をナイフが掠めていった時は背中が酷いことになった。
以下、ダイジェスト
「好きな武器を…魔理沙、それは重過ぎる」
「弾幕はパワーだぜ!」
「民間人を撃つな」「ナイフで倒せ!どうした!ナイフで倒せ!」「早く室内に突入しろ!」「俺まで撃つんじゃない!」
「この武器は不向きだぜ…」
「好きな武器を…霊夢、そのままなんだが」
「いいのよ、私が使ってきた物だから」
「ホーミングは酷い、できるだけホーミングに頼るな」
「武器を…健吾、それは射程がほぼないんだが」
「パイルバンカーで攻略する奴は始めてだ!」
「武器をとれ…メリー?それは狙撃用なんだが」
「クロスボウはないわ~」
次は俺の番。
今までの最高記録は霊夢の三十秒。
「好きな武器をとれ」
案内役を健吾に変わってもらい、ハンドガンだけを取る。
「真、それでいいのか?」
何も言わずにスタート地点に移動する。
「エリアを確保しろ!」
ハンドガンのサイトを覗き、走りながら発砲する。
「次のエリアに向かえ!」
次のエリアでも走り、発砲。
「ナイフで倒せ!」
出てきた瞬間に倒す。
「走れ!」
三番目のエリアを確保。
「その部屋に突入しろ!」
部屋の扉を蹴破り、俺は制圧を開始した。
Chapter2Fin
状況:紅魔館を確保し、敵の前線を押し下げた
報酬:訓練場所の確保・咲夜の入隊




