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奪還(1)


あれから1ヶ月と言う月日が流れ・・・


南アフリカのクーデターは政府軍によって鎮圧され落ち着いた。


アメリカは犯人がアルカイダ関係者と断定し、連日に渡りアフガニスタンに空爆を行っていた。




ここは新潟県・佐渡島

第1特別機動小隊基地【第1作戦室】


「どういう事ですか!」


そこには報告資料を握りながら遠藤が叫んでいた。

 

「先程話した通り・・・防衛省情報部からの報告では、南アフリカ軍のクーデターの首謀者である主要幹部は何者かにより暗殺されクーデターの目的は不明・・・


何故空港の邦人を襲撃したのかについても情報部が現在調査中である」


遠藤の言葉にも動じずに司令の益田が淡々と報告書を読み上げる。


「結局すべては闇の中ですか・・・」


「確かに、戦闘データを確認したがあの空港は戦略的にも重要な物でもなく、邦人リストも確認したが、クーデター軍があの場所を攻撃した理由が不自然な事は明白である。


 しかし、我々は与えられた任務をこなした。また情報が入り次第、追って緒官らにも知らせるつもりだ・・・以上。本日のブリーフィングを終了する」


「敬礼!」


伊達の号令の下、答礼を返した益田が作戦室を去って行く。


伊達はメンバーを解散させると作戦室を後にし、日課のロードワークをするべく更衣室へと向った。


ドアを開けると遠藤1尉が伊達を待っていた。


「隊長、付き合いますよ!」


伊達が着替え終えるのを待ち、二人は滑走路の外柵を走り始める。


黙々と走り続ける二人であったのだが・・・先に口を開いたのは伊達であった。


「こうやって二人だけで走るのは久し振りだな!」


「ええ、確か・・・特戦群の時が最後だったと思います」


「特戦群か・・・あの頃も色々あったな。アメリカでの合同訓練や国内での秘密任務・・・今も昔も、遠藤には苦労かけてばかりだな」


「そんな事ありません!隊長がいたからこそ、今の自分がいるのです」


「ふっ、そう言われると恥ずかしいぞ」


と照れくさそうに話す。


「ところで隊長は前回の任務どう思われますか?」


「ん?ああ・・・遠藤、俺はただの一隊員に過ぎないと思ってる。命令で動きそれを完遂する、それだけだ・・・

だが、部下や仲間が目の前で死んで行くのだけは何としても阻止したいそれが叶わぬ夢だとしても・・・・」


と、遠くを見つめる伊達。今まで見た事の無い彼の一面を遠藤は見た気がしていた・・・


それから数分後・・・召集を告げる放送が流れるとも知らずに2人は走り続けていた。













日本時間 18:00


【中央作戦室】


「諸官、緊急事態だ!」


招集された隊員達を眺めながら益田は話を続けた。


「本日1700頃パナマ運河を航行中の海自の新鋭イージス艦【あかつき】が何者かによって占拠された。


【あかつき】はサンディーブルック湾で行われたニューヨークの追悼セレモニーに参加後、ハワイ沖にて米軍と※BMD訓練予定であった為、新型対弾道ミサイルと試作型電磁砲レールガンが搭載されている。これを他国に奪われる訳にはいかない!」


※BMD=弾道ミサイル防衛


「現在【あかつき】は非常用GPSが作動し位置を特定しているものの、これが発見される可能性もあり、至急奪還作戦を実行しなければならない。


 場所はメキシコ合衆国アカプルコ北東100kmにある偽装港!情報部によるとここは麻薬カルテル等が使用している港らしいのだが・・・メキシコ政府の関与も予想される。


 それでは作戦を伝える。今回は海自・特警隊との合同作戦で特機は南シエラマドレ山脈南西に降下し、港湾施設・敵戦闘車両・停泊中の敵艦船・その他、障害となる物全て排除せよ!


 第1特別機動小隊出撃!」



司令がそう言い終えると各員は速やかに格納庫へと向かっていく。


そのまま完全武装の21式6機は、富士へと搭載され夕暮れの空へと飛び立った。





数時間後―――太平洋上空



富士は衛星から送られてくる情報とレーダーを活用し、米太平洋艦隊やハワイ基地のレーダー網を回避しつつメキシコを目指していた。



海自の部隊及び特機の潜水艦うずしおも同じである。







それからさらに数時間後・・・


「機長より各機、現在マリアス諸島上空を通過、降下地点まで約20分!」


その放送を聞いた各機体は再度作戦や現場の情報を整理していく。


そうしている間にも時間は流れ・・・


「機長より各機、まもなく降下地点。カウントダウン開始!」


「・・・3・2・1」


「今!」


≪バシュッ!バシュッ!≫


「切り離し成功!これより帰頭する」


6つのパラシュートを確認した富士は大きく旋回しながら闇の中へと消えて行った。


特機小隊は無事に着地を済ませると森の中へと消えて行く。




そう・・・・これから訪れるであろう【試練】も知らずに。









メキシコ合衆国

現地時間 20:00



特機小隊は海自の特警隊及び【うずしお】が配置に着くまでの間、偵察活動を行っていた。



3号機からは小型UAV(無人偵察機)が射出され伊達・遠藤・沖田・速水の4名は、機体を降り港湾施設の偵察をする。


≪ピッ!≫


「こちら6号機、隊長!まもなくSBU(Special Boarding Unit*特別警備隊の略)・【うずしお】共に配置完了との事です」


「了解した。遠藤・沖田・速水!聞こえたな!周囲を警戒しつつ帰還せよ。海野は、我々が偵察したデータをSBUへと転送してくれ!」


「了解!」


特機小隊は着々と攻撃準備を進めていた。



そして・・・各機が配置に着き終えSBUとの合同作戦が開始されるのである。





港湾施設より北東1km地点にある山の頂・・・そこからゆっくりと黒い影が現れる。


【4号機】こと沖田曹長の機体である。沖田はこの小隊の狙撃手を務め、SBU時代も揺れる船上やヘリからの狙撃をこなして来た。


【21式】搭乗後はその経験を生かし、長距離射撃では手動照準で弾道計算機以上の命中精度を発揮していたのであった。


その4号機の砲口から3発の砲弾が爆音と共に吐き出された。


4号機専用ロングヴァレル(長砲身)120mmライフルから発射された多目的対戦車榴弾は、正面ゲートに停車している【ERC90リンクス装甲車】3両に見事に着弾する。



それを合図に他の機体とSBUが行動を開始する。


「なんだ!あれは!?」


タイガーパターンの戦闘服を着たゲリラ達の1人がそう叫ぶ。


見つめる先には先程爆発した装甲車があり、その炎で照らされた奥くから物凄い速さでせまりくる2つの巨大な影を彼等は見詰めていた。


ゲリラ達は無我夢中でロボットらしきその影に、AK47や手元の火器の引き金を引いて応戦する。


≪タタタタタタ!

パン!パン!パン!≫


銃声が響き、いたる所からその影に向け曳光弾が伸びていくが、誰の目から見てもダメージを与えていないと判る。


「誰か!RPGかジープの無反動砲を持ってこい!あれを破壊し・・・」


そう言いかけた時、2つのロボットの右腕が上り20mm機関砲砲が火を噴いた。



3000発/分で発射可能な20mm機関砲が唸りを上げてゲリラたちに襲いかかる。その砲声は機関銃の発射音とは異なり余りの速さに・・・例えるならば怪物の叫びと言おうか、雷鳴と言えば良いのか?


その轟音と共に一瞬にして人々を肉片へと変貌させていくのである。



始めの爆発から5分で港湾施設の至る所から火の手が上がり暗闇の中、銃声や爆発音が鳴り響いていた。







同時刻

海上自衛隊・特警隊(SBU)




漆黒の海から迫る2隻の高速ボート。


そこには【小原2等海佐】以下16名のSBU隊員の姿があった。


爆発の光や炎に照らし出された港湾施設と【あかつき】を眺めながら隊長である彼は無線を開く。


≪ピィ!≫


「目標【あかつき】を視認、各員!これより突入作戦を開始する。陽動作戦で奮闘中の〝陸〟さん達に酬いる為にも速かに艦内を制圧セヨ!」


『「了解!」』


そう言うと2隻の高速ボートはイージス艦へと接近する。


≪プシュ!プシュ!≫


微かな発射音を響かせ、甲板に居るゲリラをサプレッサー付きの89式小銃で倒しイージス艦に貼り付く高速ボート。


すぐさま鉤付きのロープが投げ入れられ、彼等は次々に艦へと乗り込んで行く。


「よし!アルファチームは艦矯を制圧!ブラボーは私と生存者救出及び艦内の制圧に入る。行くぞ!」


そう小さく無線で話しながら小原2佐率いるブラボーチームは後部甲板・ヘリ格納庫のドアを開け艦内へと突入していった。



艦内へ入ると各員が定められたポジションに付きながら1つ1つの部屋を制圧していく・・・



すると突然通路からAK74を持ったゲリラが現れる。


「!」


ゲリラは、慌てて銃を向けようとするが・・・





先に発砲したのは、89式短小銃(89式カービンモデル)を持った小原2佐だった。


さらに進む隊員達・・・


そこには機関室と書かれた扉が見えて来る。



人の気配を感じた小原2佐は右手をゆっくりと上げその拳を握る。


それから無言のまま、手信号により隊員を突入の準備に着かせていくのである・・・



そして、小原2佐の腕が振り下ろされると同時にドアに着く隊員がドアを開け、もう1人の隊員が閃光手榴弾を投げ入れた。


≪ボンッ!≫


大音響と激しい閃光を放ち終えるや一斉に突入するSBU隊員達。



突入するなり座り込んでいる海自乗員の中で立ちすくんでいるタイガー迷彩のゲリラに対して銃撃が加えられていく。



辺りには硝煙の匂いが立ち篭め微かな銃声の鳴り止んだ室内の床を転がる薬莢の音だけが響き渡る・・・




それがいつしか解放された乗員達の歓喜の声へと変わっていったのだった。



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