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灼熱の大地 (2)


その頃―――


各機に指示を出し終えた伊達は映し出されたHUDの光点を見つめていた。


1号機の潜伏している地点より600メートル前方に先程邦人らが通過した空港へと続く主要幹線道がある。


そこへクーデター軍と思われるラーテル歩兵戦闘車が猛スピードで向かって来た。


≪カチ!≫


誰の耳にも届かない。タイヤが何かを踏んだ事を告げる微かな音と共に・・・


一瞬にして辺りを大きく照らし、砂塵と共に、巨大なタイヤが中を舞う。


仕掛けられた対戦車地雷が次々に作動し数両の車両が巻込まれ大破した瞬間であった。



そして1号機が動き出す。


HUDの光点が密集しているポイントを高速で移動し側面へ。


120mm滑空砲の砲口を前方の南アフリカ主力戦車【TTD】へと向けトリガーを引く。




砲から離れた砲弾はオレンジの尾を引きながら吸い込まれるように走行中の戦車側面へと伸びて行き次々に弾け飛んでいく。


そこへ僚機からの通信が入る。


「こちら2号機!敵砲兵陣地沈黙。ポイントBブラボーに移動し5号機のカバーへ向います」


「同じく4号機、敵FOを殲滅。ポイントDデルタで警戒監視します!」


「2号・4号了解した。特機1より特機6、現在の邦人の収容状況送レ!」


「こちら6号機!収容完了。繰り返す!収容完了。政府専用機離陸まで約5分!自衛隊機離陸まで約10分だと思われます」


「1号了解、各員聞いたな!もうすぐだ。最後まで気を抜くな」


『「了解!!」』


全員の確認をとりつつHUDや計器を見つめる伊達・・・


その彼に1つの疑問が生じていた。


その疑問とは・・・


クーデターとはいえこんなにも都合良く、この場所を敵が襲撃してこれるのか?という物であったのだ。



その疑問は他のメンバーも抱いているかもしれない・・・だが、今は任務に集中しなければならないのである。


新たな脅威を表す光点がHUDに映し出されていく中、今一度自分にそれを言い聞かせ機体を進めていく彼等であった。




その頃・・・


3号機―――小隊の機体の中で数少ない複座型の機体である。


主に高性能レーダーや他の機には無いシステムにより戦場の全般サポートや監視に活躍する機体である。


だが、戦闘をしない訳ではない。前席の工藤が各計器を操作し後席の原が操縦する。


現にルーイカット装甲車の76mm砲を回避しながら105mmライフルで反撃していた。


「2時の方向!レーザー照射反応!対戦車ミサイル来ます!」


工藤が叫ぶ。


原は直ぐさま機体をスライドさせ回避運動を取った。


戦車砲さえ回避する21式にミサイルは目標を捕らえる事なく闇の中へと飛翔して行く。


その発射地点へ105mm弾の弾幕が張られATM(対戦車ミサイル)は沈黙するのだ。


そしてその3号機から通信が飛ぶ。


「こちら3号機!レーダーに反応。空港より南1km地点に航空機2。接近しています!」


「1号了解!6号機、向ってくれ」




6号機は格納庫を抜けると、HUDに接近する2つの光点に向っていった。


「機種判明!AH‐2 ローイホックです!」


全席の海野が國村に報告する。


國村はHUDに映し出される2つの光点が接近するにつれ、自分の鼓動が早くなるのを感じていた・・・


前回の作戦から2日、前の任務では後方監視と爆発物設置が任務だった6号機。


國村にとっても、海野にとってもこれが、初の実戦となるのである。


(落ちつけ!)


心の中で繰り返しながら、右スティックのセイフティーを解除する國村。


(こうなる事は、覚悟していたつもりなのに・・・)


前回の作戦で直接戦闘には参加して無いものの、僚機の戦闘画像がシステムによって映し出され、実戦とは何か?


と言う物を頭の中では理解しているつもりだったのだが・・・


知っているのと実行するのは違うのだと痛感させられていたのだ。


そこへ2機のヘリをロックした事を表すマーカーと機械的な電子音がなり響き國村は奥歯をギュっと噛み締めつつ近距離地対空誘導弾の発射ボタンを押したのであった。


≪バシュッ!≫


≪ゴォォオオ!≫


2発の近SAMは発射薬で一度前方に射出されるとロケットモーターに点火し、さらなる轟音と共に暗闇の中へと消えて行く。


2つの光点がレーダーから消えるのに時間は余り必要とはしなかった。


そして―――


空港周辺の脅威が全て排除され・・・隊は政府専用機と自衛隊機の離陸を見届け、部隊の痕跡を消し、速やかに迎えの潜水艦へ乗り離脱していた。





こうして灼熱の大地での彼等の幕は下ろされたのだが・・・











その頃―――


「どうだ?捉えたか」


そう言うのは米国防省・情報将校であった。


「はっ!少しではありますが、データを取る事に成功しました。


・・・ジャップは、とんでもない物を完成させた模様です」


表示された戦闘データに驚きながら報告する情報士官。


「やはり・・・CIAからの情報は正しかったのか?」


情報将校はそのデータを眺めつつそう呟いていた。


アメリカ軍はこの空港での戦闘を一部始終衛星により監視していたのである。


2日前の北朝鮮ミサイル基地の爆発・・・彼等は日本がミサイル攻撃の危機に瀕している事を事前に確認していたのだが、CIAよりニューヨークを攻撃したテロリストが北の可能性が低い事、目標が自国で無い事や憲法の変わった日本がどこまでやれるのか等の理由で黙視する事になっていたのだ。


しかし、日本はアメリカの偵察衛星の軌道を知っていたらしく、基地をどうやって壊滅させたのか捉えさせなかった。


そこに新たな情報として日本はアメリカの認識していない秘密兵器を使用した可能性を指示され、衛星の軌道を変えてまで、自衛隊の動きを秘密裏にマークしていたのだった。


「確認された機体は4機、サーモプロテクトされており、熱源は追う事が出来ませんでしたが・・・

かなり射撃をしたらしく、そこから発せられる赤外線を探知し追う事が出来ました。目視も可能です。


火力や性能はまだ不明な点が・・・多く見積もられますが、かなり高性能だと思われます」


「自衛隊や政府はこの事を我々アメリカ政府にも秘密にしているようだな?」


「はい、このような兵器はまだ報告も確認もされておりません!」


「そうか・・・よし。この事はまだ上層部には報告するな」


「しかしそれでは!」


「これは命令だ!」


「・・・了解しました」





情報将校はそう釘を刺すと取得したデータを手にしたUSBに移すと表示されたデータを全て削除しモニタールームを足早に去って行くのであった。




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