初陣(3)
入室して来た彼等がそれぞれ指定された席へ着くと、防衛大臣が立ち上がり壇上へと上がり話し始めた。
「各部隊長、並びに隊員緒官・・・忙しいところ召集してすまない。これから話す事は・・・
最重要機密である!心して聞いて欲しい」
そう言い終えると大臣の後ろからスクリーンが現れ、部屋の照明が落とされていく。
そして大臣が降壇すると、統合幕僚長が登壇し話し始めた。
「え~、それでは緒官スクリーンを見てくれたまえ・・・
現在、諸官らも知っての通り世界状勢はとても不安定な状態にあると共に、様々なテロリストが世界中を狙っている。
それは我が国、日本も例外ではないのだ。皆も知っていると思うが・・・先日、青森の原子力発電所で臨界事故が発生した。
たが・・・マスコミが発表したあれは真実ではないのだ」
隊員たちがどよめく。
「なんだって!本当なのか?」
「本当ですよ近藤さん」
驚きの余り呟いた近藤に対し小声で伊達が言葉を返した。
「まさか・・・いたのか?」
伊達はそれにコクリと頷いた。
そして統幕長の話しが続く。
「実際は、施設内にテロリストが侵入、爆発物を仕掛けると言う事案が発生。情報部と特戦群により制圧作戦を実行したが、施設の一部が破壊されてしまったのが実際の話しである。
この他にも、各部隊に機密的に処理してもらった事案は多々あるのだが・・・これからもそう言った事態が発生する可能性が高まる中、我が日本の防衛力の強化、及び海外における邦人の保護を目的とした新装備が開発された・・・
それがこれである!」
幕僚長の声に合わせスクリーンにロボットらしき映像が鮮明に映し出された。
「まだどの国でも実現していないロボット兵器。正式名称を【21式人型機動兵器】と言う!詳細については、配布する資料を見てもらいたい。
そして・・・皆に集まってもらったのはこの装備の新部隊の編成及びそれらをバックアップする装備の説明の為である!」
その言葉を聞いた室内がまたどよめき出す。
この時、伊達や近藤は自分らが召集された真の目的を知る事となったのだ。
伊達3佐他、11名のパイロット候補はそれから別室へと案内され、パイロット候補である事を告げられた。
その日から【21式】の教育訓練が開始されたのだ。
そして、話は現在へと戻る。
「初めは、この機体で本当に闘えるか心配でした・・・
現代の戦闘車両や航空機、歩兵の携行火器に対して本当に対抗出来るのか?ただの的になるのでは無いか?と心配でしたが・・・
この機体に乗りその考え方は変りました。機動性・火力共に想像以上ですし、僚機との情報の共有化やシステム面でも申し分ない!
今回の作戦で、まだ細部データをまとめていませんが所要時間約15分で戦車6両・戦闘装甲車5両・その他の車両10両・歩兵・施設を沈黙させ最後は基地全てを破壊し、損害はゼロと言う戦果を納める事が出来ました」
「ほう、それは凄い」
「はい、この21式の大きな利点の1つが火力です。
あの様な山岳基地に対しての攻撃は従来、航空機やミサイル、それか特殊部隊員による直接攻撃しかありませんでした。ですが21式はあの様な場所でも正確かつ、強力な火力を指向出来るのですから敵にとっては脅威以外の何物でもありません。
まだどの国でも配備されていない兵器であり、対抗手段が確立されていないのも強みです」
「そうか、だが油断は禁物だぞ!過信は即、死に繋がる。」
「判っております。部下も含め常に言い聞かせております」
「そうか・・・それを聞いて安心した。この艦もお前らが帰ってこんと寂しいのでな」
二人の笑い声が室内に響き渡る。
「おっ、すまん・・・つい長話しをしてしまった。本艦は間も無く領海内に入る予定だ。後は寄港するまで休んでくれ、任務御苦労だった」
「はっ!それでは、失礼します。」
そう言うと敬礼を済ませ、伊達は艦長室を後にした。