初陣(2)
強烈な閃光が一瞬にして大地を走り、大気が震え、粉塵を高々と舞い上がらせた。
その巨大なキノコ雲を確認した黒い影から通信が飛ぶ。
「特機6より特機1、成果確認。これより集結地に向います」
「特機1了解、画像リンクシステムでも視認した。速やかに集結地へ移動せよ!」
「特機6了解」
「特機1よりHQ、作戦完了。全機集結次第、回収地点へと前進する!」
「こちらHQ、了解。ご苦労だった」
そう通信を終えた6つの影はその場から静かに消えていった・・・
現地時間 07:00時
その謎の機体は海上自衛隊の新鋭潜水艦【うずしお】へと回収され、一路日本を目指していたのである。
その艦内―――
「伊達2佐!」
機体から降りようとしたその隊員に潜水艦下士官が敬礼しながら呼掛けた。
「艦長がお呼びです!至急艦長室へお越し下さい」
「判った。すぐ行く」
そう答え機体から降り立つ一人の隊員。
彼は、辺りを見渡すと隣に並ぶ機体を見上げ話し始めた。
「各員、今回の戦闘データ及び報告書を速やかに遠藤1尉に提出。事後は休んでくれ。
遠藤1尉は、その報告書をまとめ後で俺の所まで来るように・・・頼んだぞ!」
伊達は、遠藤1尉の敬礼に答礼をすると艦長室へと歩き出した。
「伊達2佐、入ります」
伊達はそう言うと艦長室と書かれたドアを開けた。
中にはこの船の艦長―――近藤1佐がコーヒーポットを片手に立っていた。
「ちょうど良かった。今コーヒーを入れたところだ、さぁ座ってくれ」
そう言うと、二人はソファーへと腰を下ろす。
「任務ご苦労!初陣はどうだった?聞きたい事は沢山あるのだが、あれから2年・・・早いものだな」
「はい、この小隊が発足してから2年・・・まだまだやる事は沢山あるのですが、やっとここまで来る事が出来ました」
そう言いながらコーヒーを口へと運ぶ伊達。
そして話は2年前に遡る事となる―――
目まぐるしく変わる世界状勢とテロの頻発により日本の法律が変わってから5年・・・
日本の軍需産業を請負っていた全ての企業が秘密裏に招集され始まった『人型機動兵器計画』・・・
まだどの国も実現しえ無いこの計画を日本は成し遂げた。
陸上自衛隊装備実験隊本部―――
ここに召集されたのが今から2年前。
陸・海・空・自衛隊から選抜された12名のパイロット候補と、それらをサポートする航空機・艦船・車両等の関係部隊長らが秘密裏に召集されていた。
その中に伊達や近藤の姿もあったのだ。
「近藤1佐!お久しぶりです」
「おっ!伊達・・・久し振りだな。今は何処の部隊にいるんだ?」
「はい。それが・・・詳しくは申し上げられませんが、特戦群です」
近藤はその言葉を耳にしそれ以上聞くのを躊躇ってしまう。
特戦群・・・それは、特殊作戦群の略であり、陸上自衛隊で今も尚、秘密のベールに包まれた特殊部隊なのである。
「ところで近藤1佐は今どちらに?」
「あっ・・ああ!俺の方も余り大きな声では話せんのだが、第7護衛艦隊所属の潜水艦【うずしお】の艦長になったばかりだと言うのに、急な命令でその艦は改装中でな・・・今は陸で勤務中だよ!」
「えっ?・・・それは変ですね?【うずしお】は今年配備されたばかりの新鋭艦のはず・・・
それを改装するなんて」
と不思議そうな顔をする。
「それは艦長の俺も思っている事だ。だが今日この場に呼ばれた事と何か関係があるのだろう・・・」
「確かに・・・あちらの席には空自の隊員もいますし、私達が呼ばれた〝理由〟もはっきりするはずです」
そんな話をしていると・・・
不意に部屋のドアが開けられ、見覚えのある人物が次々に入室して来たのである。
その人物とは・・・
陸海空の各幕僚長・・・その後に統合幕僚長、最後に防衛大臣と早々たるメンバー達だったのだ。