買い物
「ねえ、シュレッダーってこんな値段で買えるの?」
猫|《彼女》はそういって、雑貨売り場に雑然と積み上げられた箱の値札を、前足で撫でた。
「うん、安いね」ぼくは駐車場へと向かう歩みを止めて、陳列台の上を見た。「でも、それは手回し式だからね。シュレッダーがほしいのかい?」
「レシートとか、ATMの明細とか、いつもは爪で引っかいてから捨ててるけど。結構面倒なのよね」
「それなら電動式のほうがいいよ。手回し式は、量が多いと疲れるし、ちゃんとしたやつを買ったほうがいい」
そういって、ぼくは特売品の山の隣に埃をかぶった大きな箱を指した。
「あら、これ8000円もするじゃない」猫は、三日月の目を見開いて言う。「あなたみたいに、仕事で使うわけじゃないから、私はこれでいいわ。コンパクトだし」
「これだったら、ハンドルを回さなくていいから、何枚も連続して裁断したり、圧着はがきみたいな厚手のものでも裁断できるよ」
そういうと、猫は少し首を傾げて考えてた。
「そうね。あなたの部屋のシュレッダーを使わせてもらう、ってのはどうかしら。気に入ったら、買う」
「それは別にかまわないけど」
「じゃあ、決まり。さ、行きましょう」
ぼくは、ちょっと肩をすくめて、床に置いた買い物袋を口にくわえた。猫は、そんなぼくの隣をとことこと歩く。ちょっと幸せな気分だ。
「ねえ、みて! まんまるなお月様!」
駐車場に出ると、あたりはすっかり暗くなっていて、月明かりが僕らを照らし出していた。買い物袋をくわえたまま、ぼくは思わず「わん!」とほえた。




