第四話
結論からいえば、トーマ達が一緒に依頼に行くことは無かった。
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「突然、街に魔族が攻めて来た」
負傷し混乱と恐怖にとらわれた様子の連絡兵は王にそう報告した。魔族は人族に負けて以来条約のようなもので、武力を集めたり軍を組織することは禁止されている。だが、そもそも魔族は人と違い剣や杖を使わない。魔力の扱いに長けるため、そんなものが無くとも戦えるのだ。
そして、この世界では武器の動きがなければ戦の準備というのは分かりにくい、つまり、魔族が戦の準備をしていても分かりにくい。所詮、人間が自分の観点で決めたルールでは魔族を縛るには足りなかったのだ。
そして魔族が攻めて来た、つまり戦争である。宣戦布告など無い、それも最初に襲われているのは魔国から離れており、警備も薄い街という全くの奇襲。手負いの連絡兵はさらに、自分が出発した時点では、冒険者とわずかにいる警備隊で応戦していた。という報告をしたところで下がろうとし、倒れた。
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「ふはははは、人間どもが凍り、焼かれ、死んでいく! 何て愉快な! 今この時をどれだけ夢見たことか!」
「くっそ、なんだって……魔族が・・襲って来てるんだよ」
「そんなの知らないわよ!もう魔力も切れそうだし! 《我が魔力、炎となりて敵を討つ矢と化せ!… フレイムアロー!》」
リッカの放った炎の矢が少し離れた場所に居た魔族に突き刺さった。
「うらぁっ! ……はぁ、よし。トーマ、そっちは!」
その魔族を切り裂いたエドワードが息を切らしながらトーマへ呼びかける。
そう、魔族が襲った街とは偶然にも彼らのいる街だった。すでに襲撃されてから二時間が経ち、街の外壁は崩れ防衛に出た者たちの間を抜けた魔族が街を蹂躙し始めていた。
「問題ない! しかしきりがないぞ、おそらくこれは計画的な襲撃だ、このまま戦ってても確実にジリ貧だし、様子を見つつもう退却しよう!」
「街にも入られてきてるか……。 了解した! リッカ、でかいの頼む!」
「っく、無茶言うわね。《我が魔力、燃え盛る星となりて敵を灰塵と変えろ! フレイムメテオ…!》」
リッカの全魔力を込めて創られた隕石が、湧きでるように増えこちらへ向かっていた魔族達を灰すら残さず消し去った。だが本来発生しリッカ達も巻き込むはずだった膨大な熱量は、リッカが魔力の消耗で意識を失ったことによりかき消えた。
「リッカ! 大丈夫か、しっかりしろ! おい!」
「エドワード、うろたえてないでリッカを抱えて逃げろ! 早くしないとまだ新手が来るぞ! せっかく作ってくれた時間を無駄にするな!」
「わ、わかった。って、お前も行くんだろうが!」
「俺はあいつらを散らしてからいくさ。おっと、心配するな、これでも弱くはないからな。……第一、どうせ人抱えちゃスピード出ないんだ、せいぜい時間を稼いでやるよ」
話をしている間に出て来た魔族数名を指差しトーマはそう言った。
「・・・悪いな。だが、必ず生き残れよ? 自分を生き延びさせるためにお前を見捨てたなんて言ったらリッカに殴られるからな」
「ったく、わかってるっつの! 他人の心配する余裕があるならさっさと行け!」
「ああ! じゃあな!」
エドワードの別れの言葉にああ、とだけつぶやくともう、トーマの顔に感情はなかった。
その表情のまま、向かってきた炎の魔法を抜刀の逆袈裟でかき消し、返す刀で横からきた水球を切る。減らない敵にため息をついたとき、トーマは鐘の音を聞いた。
ガラーン・・ガラーン・・ガラーン・・ガラーン
(四度の鐘が意味するのは……! うそだろっ? もう教会まで入られたのか!? )
この世界では鐘を連続で四回鳴らすのは神への冒涜を意味し、普通は間違っても四連続の鐘の音が響くことはない。おそらくわざわざ占拠した魔族が鳴らしたのだろうその鐘は、たしかに街が占拠されたことを告げていた。
それから数十分、視界に入る魔族や援軍であろう蜥蜴頭の魔族達を殲滅した後、街へ入ったトーマが見たのは地獄だった。
四本腕の魔族になぶられている数人の冒険者以外に動く人影はなく、おそらく人であったであろう肉塊や、おびただしい血痕。壁が魔術で吹き飛んだ家や今も燃えている家。人を殺す事の喜びに震える魔族。
そして、襲い来る魔族を無言で倒しながら走ること数分。トーマは探していたものをみつけた。
「エドワード! 何があった!?」
そこには幾つもの魔族の死体の中、傷だらけで座るエドワードがいた。愛用の剣は血でくすみ着ていた鎧はひびが入り左腕に至っては肘から先が無く。息はしているものの、誰の目にも死が近いのは明白だった。
「トーマか・・・。魔族に囲まれて・・・やられた。聞いたこともない魔法で・・いきなり爆発がおきたんだ。魔力切れで動きの鈍かったリッカはそれを避けるだけで精一杯で・・・近くにいたもう一体の魔法で・・・・・・。俺は、庇うことすらできなかった・・・。そのあとは頭が真っ白になってはよく覚えてないが・・気が付いたらこうなってた。だが・・・もうすぐ自分が死ぬのくらいは・・わかる。トーマ、お前はにげ・・・ろ。いま・らまだ・にあう。くそっ・・・もぅ声が・・・」
「……。もちろん逃げるが、こんな所に一人じゃ寂しいだろう? せめて見届けてやるよ。リッカにはよろしく言っといてくれ。」
リッカの死を、トーマは深く悲しまない。人はどうしようと死ぬということは、嫌というほど知っている。そして命が担保の仕事柄、エドワードも悲しみこそはすれど過度の動揺はしていなかった。
「・・ったよ。せいぜいお前に会うのが・・・遠い先にな・ことを祈・・る・・・さ。」
数分後、息を引き取ったエドワードを残してトーマは立ち上がった。
ゆらりと揺れるその瞳は人のものではなく、
《どうしてだ……》
つぶやいたそれさえもが力を持った言霊となるほどに溢れだす魔力は、魔王の名を冠するに相応しいと言えた。
《より響け》《宙に足場を》
《魔族達よ、聞こえるか》
先に使われた魔術で数倍に拡張された声が響き渡り、街を破壊していた魔族達は手を止める。その視線は空中に立っている一人の人間へと集まった。
「人がまだいたか! 《空間よ高温に――――》」
「《稲妻よ奴を――――》」
《黙れ》
獲物を見つけ魔術をはなとうとした魔族は、その言霊の力をはるかに上回る言霊で打ち消された。
《魔族の軍よ、長はどいつだ》
出て来たのは最初に叫んでいた者。
「なんなんだ貴様は・・・」
その言葉に勢いは無く、つぶやき程度の大きさだった。
《名を名乗れ》
「・・・グゥェドザンラシゥ・テートゴオフィン」
《では聞くグゥェド。この襲撃は魔国の総意か、貴様の独断か。》
「……どちらでもない」
《どういうことだ》
「魔国へ来た人間の王族に話を持ちかけられたのだ! 人の街を襲わないかと! 条件を提示してきたがわるくなかった。人間の言うことを聞くなど屈辱だったが、それで人どもを殺せるのならばと・・・」
《……人間の、それも王族だと? いやまて、条件とはなんだ!》
語られた条件は以下の通りだった。
・襲撃の予定は必ず報せる。
・こちら(人間)の指定する都市には侵攻しない。
・街の宝物など、価値のあるものは略奪せず、また破壊しない。
・この三つを守れば王都から援軍を街に出すことはせず、侵攻を黙認する。
「これだけだ……。そして手始めに警備の薄かったこの街を攻めた。人間に知らせたが約束通り援軍は来ないようだったし、幾つか街を落とした後は人間との約束など関係ないと、王都へ攻め込む予定になっていた」
《そういうことか、王族どもめ…! ……グゥェドよ、死にたくなければこのまま軍を引け。俺に勝てぬこと程度、貴様は分かるだろう》
「くっ・・・、ならば一つ、質問に答えてくれ! 魔族のエリートである私を遥かに超える魔力を持つ人間などいるはずがない!」
《つまり……?》
「貴様、いや、お前は何なんだ!」
《・・・・・・あくまで人さ。人でないのならそれはもう……俺ではない。》
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「いったいなんだ貴様は! 近衛兵はなにをしている、はやくこいつをつまみだせ!」
《魔術を使ったから兵なんてこれないさ。ところでなぁ、王様よ。そんなに戦争がしたかったのか? 自分は優れているんだなんて言うような魔族の将を焚きつけて侵攻させ、それを名目に魔国に攻め込むなんていう適当な策でよく他の魔族が感付かなかったものだな。狙いは魔国で取れる鉱石や資源か? それとも広大な大地と豊かな海か?
・・・どちらにせよ、だ。 二百年前の魔族と人族との殺し合いを知らん訳ではあるまい? あんたが自分の欲を満たすために仕組んだこの策がもたらすのは何万何十万という死者と、その数倍の悲しみや恨みだ。俺はもう失望し尽くしたんだよ、人間には。》
《凍り付け、永遠に》
「き、貴様なにをした!」
《魔術をかけたのさ。ゆっくり、ゆっくり、数年、数十年かけてここら一帯は氷の街になる。止めたければ、俺を殺せばいい。ああそうだ、名乗ってなかったな。俺の名前はトーマ。魔王トーマだ。」
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さて、これで俺も名実ともに魔王なわけか。しかい、二百年ぶりに本気を出して魔力を使ったのが人間を滅ぼすためとはな。人間はやはりどこまでも醜い……。どうしてだろうなぁ・・・。もっと綺麗で、いられないのかなぁ・・・。どうして。自分で決めたのにどうして・・・・・・こんなに涙がでるんだ?
こんな意味の分からない駄文をお読み下さった方、ありがとうございました。
情緒不安定な状況で自分が満足するために書き散らしたため中身は自分でも意味が分かりませんが、一応これで区切りとなります。よく分からないまま書き進めて、学ぶことも多かったです。もしも内容について知りたいこと等ございましたらどうぞお知らせください。誤字指摘はもちろん大歓迎です!
最後にもう一度、ありがとうございました。




