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魔王の涙  作者: 森林
3/5

第二話

 1月25日 誤字その他修正。


 ・・・・・・・・・


トーマとドラゴンが闘い始めて十分が過ぎ、ドラゴンの体には小さいが浅くない傷がいくつか出来ていた。


《氷槍!》


 手のひらから打ち出された氷の槍が、ドラゴンの前足に当たり砕ける。


「やっぱこんな短い言霊ことだまじゃあもっと魔力込めないとダメか・・・」


 迫りくる攻撃を避けつつ、感覚を探る。


《我が魔力、氷となりて敵を貫き内から氷の像を成せ! 氷槍!》


 先ほどとは密度も鋭さも違う氷の槍がちょうど目の前まできていたドラゴンの尾を貫き、貫かれた尾はじわじわと凍っていくが、そのペースはかなり遅い。


「さすがに主となると耐性があるんだな・・・。もうちょっと魔術を試したいけど、そろそろ出ないと宿の飯に遅れるな。よし!」


 そういうと、トーマはドラゴンを牽制し大きく後ろに跳びのき大量の魔力を込めた言霊を発する。


《凍りつけ!!!》


 ドラニアの時のそれとは比べものにならない魔力を込められた言霊は、迷宮の主であるドラゴンさえ凍てつく氷像と変え、大気の水分を凝結させる。


 空気中を舞っていた氷が収まった時には、転送装置が使えるようになっていた。









「じゃあ、トーマの初ダンジョン制覇を祝して、かんぱ―い!」


陽気な声と共に、グラスとジョッキの当たる音が響く。

トーマの友人達がお祝いといって、転送して肝や諸々の素材を売っていた彼を酒場へと連れていった(引きずっていったとも言う)のだ。


「いやーめでたいめでたい。今日はトーマの奢りだね!」


「リッカ、なんでお前等に連れてこられた俺が払うんだよ!お前そのために俺を連れて来たのか?」


「そんなこと・・・無くもないなぁ・・・」


「でも本当に一人で行くとはなぁ…… 心配する必要なかったか?」


そう言って笑うのは、エドワード・オルセン。二十五歳にして冒険者歴は十二年、その実力を認めない者はいないといわれる。

さらにライトブラウンの髪と整った顔立ちで女子からの人気が高いが、その性格を知るトーマから評すれば、残念なイケメンである。


「まぁそんなに苦戦はしなかったな。ドラゴンの堅さは少し驚いたけど。」


「ここのダンジョンのドラゴンは確かに堅いね―。だから普通は魔術主体かレイピア使うんだけど、まさかその古くさい剣で行くとは思わなかったよ。」


先ほどトーマに奢らせようとしさらに大事な剣を古くさい呼ばわりするのは、リッカ・モルディスラン。

由緒正しきモルディスラン家の次女にして、腕利きの冒険者でエドワードの共に数々の依頼をこなす。

家主である父、跡継ぎである兄や他の貴族に嫁いだ姉との仲も良く、様々な事を“お願い”する。

ちなみにトーマ評は金髪美人の悪魔。悪魔たるはその性格で、見た目にまったく表れないためその本性を知る者は少ない


「古くさくって悪かったな、俺にとっては一番の相棒なんだよ」


「でも元々はかなり良い剣だったんじゃないか? 微妙にだけど、なんか彫られてるしな」


「ん、ああ、それは薄れちまったんだよ。多分一流の職人が作ったんだろうな」


古くさくて当たり前である。二百年以上も前のものなのだから。


「それより、次はどうするの? その実力があるなら、かなり上の討伐依頼に行けるけど?」


「前も言ったけど、俺は行かない。魔物討伐なんて恐ろしくてやってられるか」


 トーマが恐れているのは魔物ではなく、万が一にも自分が殺されてしまって、その魔物が魔王となることだが。


「じゃあまた今まで通り、雑務系か? ダンジョン行ったことないから行ってみるつって単独制覇するだけの実力があって、雑用やらお使い冒険者だの呼ばれててていいのかよ!?

 一度ちゃんとした依頼を受けろよ!!」


恐らく酒が入ってるからだろう、エドワードの口調はなかなか荒かった。

そして、彼の言う 雑用 や、お使い冒険者 はトーマのこと。

依頼斡旋所の依頼の中でも雑務系と呼ばれ誰も請けないような資材運びや街の清掃、さらには店の手伝いや薪割りまで請けるトーマを他の冒険者が馬鹿にしてそう呼んでいるのだ。


仮にも自分の友人が、馬鹿にされるのが相当に嫌なのだろう。そうでなければ、明るく優しい、が評判の彼が酒の一杯二杯で荒れはしない。


さらに続けようとするエドワードをリッカが止めるのを見ながら、トーマはこれからの身の振り方を考えていた。 


  

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