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麻布十番物語  作者: 由妃
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樹海へ行きたい姐さん

 飲むのが、大好きな近所の姐さんは、自殺願望が強い。


 こないだ、富士の樹海へ行って、薬を飲んで、人しれず死のうと思ったんだって。


 でも、ドジな姐さんは、電車どこで降りていいかわからず、死なずに帰ってくるはめに………。


 自宅で、樹海で飲むはずだった市販の睡眠薬を120錠飲み下したという。



 しかし、翌日、普通に目覚めた姐さん。



 今まで、さんざん薬の飲み過ぎしてて、効かなくなっていたのだ。



 左手首は、腱が見えるほど、リストカットしたのに、死ねなかったという。



「腱って、白いのよ。」


 と、知りたくもない知識を教えてくれる。



 死のうと思って、フルスピードのバイクで、どっかに突っ込んだらしい。でも、どこの骨だかを複雑骨折しただけだったと言う。



「14階のビルの屋上から、飛びおりたこともあるのよ。ビルの照明が、ものすごい速さで、上にあがっていくのが見えたわ。ドサッと音がして、気がついたら、病院のベッドの上。あんな高さから飛び降りたから、足とか潰れててもおかしくないのに、無傷だったのよ~。後遺症もないし………。多分、落ちてくる途中、ネットかなんかにひっかかったらしいわ~。」


「へえ~。ネット無かったら死んでたね。私の知り合いの彼女、たった五階から、飛び降りただけで、腰から下、潰れて、治療費に二千万ぐらいかかって、親はいろんな意味で泣いたらしいよ。自殺は保険きかないからね。知り合いは、その彼女にストーカーされてただけなのに、大家に出てってくれって、言われて泣いてたな。」


「ホテルの屋上から、飛び降りたら、周りのヤシノキに引っかかって、また無傷よ。」



 私は、もうやめたら?とは、言わない。誰でも趣味がある。姐さんの趣味は、少々危険な趣味だけど。


 でも、死にたい人に限って死なないのは、どういう自然の摂理だろう?と首をかしげることはある。





 東北で津波があったとき、引きこもってたニートの息子は「別に死んだっていい。」って言って、二階の自分の部屋に閉じこもり、仕方なく母親だけ逃げたらしい。


 でも、母親は、避難所で津波に流されちゃって、死に、家ごと津波に流された息子は、二階から一歩も出ずに、家が浮いてて救助されたと言う。





 ガス自殺しようとして、ガスを充満させて、マッチを擦ったやつもいる。家は木造だったので、木っ端微塵になり、そいつは爆風で飛ばされ、近くの砂地に、無傷で着地………。




 きっと、姐さんも長生きすることだろう。




 いつも「あべちゃん」で、ビールに焼き鳥ばっかの姐さんだけど、今日は、私が、六本木ヒルズのふもとの黒澤の向かいのドイツの靴屋の近くにできたイタリアンのお店に連れてきた。


 そこは、ゲームセンターみたいに、千円を四枚のコインにして、コイン一枚から、いろいろ注文できるのだ。コイン一枚の野菜のマリネ、オリーブとドライトマト、ナスとセロリのトマト煮込み…とちょっぴりずつ、いろいろ注文できるのが、楽しい。



 スプマンテはコイン二枚。




 姐さんもスプマンテ飲んで、これ、おいしいわね…って、気に入ったよう。イタリアのビールもあるけど、たまには、いいでしょ。


「姐さん、サラミと生ハムも頼んでいい?」


「キララも、ちょっとは働いたら?そして、アタシにおごってよ。この店で。」


「うん。考えとく。姐さんが、カミソリ持ち歩くのやめたらね。」


姐さん、ただいま入院中。ときどき電話が来るけど、かなり退屈らしいな。姐さんの二人の息子は、とってもいい子たち。上は大学生。下はまだ、高校生だ。ニートのキララ以上に何にもやらない姐さんの代わりに、掃除したり、洗濯したり、ご飯炊いたりしてるらしい。結婚したら、いい夫になること、確実!

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