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麻布十番物語  作者: 由妃
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お見合いするお嬢さん♥

ご近所のお嬢さんと、麻布十番パティオの坂を、ピーコックの方へ上って行く途中にある、ドミニクなんとかっていうパン屋で、お茶した。



………といっても、ニートの私は、お嬢さんにまたしても、おごってもらってるわけだけど。



パン屋なんて言ったら怒られるな。ブーランジェリー?中で、カフェオレとか飲むスペースがある。



私は、びっくりするほどうまい、ここのタルト・オ・シトロンを買ってもらって、お嬢さんの話を聞きながら、食べてる。


お嬢さんは、いつもあんまり食欲ないので、エスプレッソだけ。



どうして、いつも食欲ないかというと、婚活中だから。



ファザコンのお嬢さん。某結婚相談所に、登録したはいいが、選ぶ相手は60代の男性ばかり。


いろんな人と会ったけど、食欲はなくなるばかりよ………。と、悲しげにうつむく。




私は、他人事なので、年収のいい年寄りと結婚して、早く未亡人になって、遺産でおもしろおかしく暮らしたいのかと思ってたが、そうじゃなかった。



今まで紹介してもらった若い男がひどすぎるという。


K大学院卒の製薬会社務めの、びっくりするよな年収の男は、初めてのお見合い?デート?で、三時間、一言もしゃべらず、パークハイアットの梢は、異様な緊張感につつまれたという…。


お嬢さんは、できた人なので、それでも場所を変えて、新宿御苑の桜でも、見に行きましょうか?と誘ったそうだ。



折悪しく、その日はえらく強風が、吹き荒れ、桜はみんな散った後だった。ものすごい、風の中を、何もしゃべらない男と歩くお嬢さんは、いったい自分は何でこんなことしてるんだろう…?と、遠い目になったらしい。



………と、その時!



某K大学院卒の男が、お嬢さんの手をとった。そして、無言で、お嬢さんの手のひらに、丸を書いたと言う。



………今度、遠い目になるのは、私。



なんじゃ…そりゃ?気持ち悪いなあ。



でしょ!ぞぞーーーっとして、さっさと帰ってきちゃったわ。




私が思うに、きっと某K大学院卒の製薬会社務めの、びっくりするよな年収の男は、週刊誌かなんかで、女の性感帯は、手のひらだ!ここに丸を書けば、彼女はもうメロメロ………的な記事でも、読んで実践したんだろ。



それにしても、三時間だんまりのすえに、いきなり手のひらに丸を書かれたら、気持ち悪いこと、この上ないだろう。




次にお嬢さんが、某結婚相談所の紹介リストの中から選んだのは、マッチョな男。



男らしそうだと思ったらしい。こちらは、年収は普通のサラリーマンの年収。


お嬢さんは、某K大学院卒の男で、高学歴高収入の男には、少し警戒心を抱くようになったらしい。


デートの直前まで、スポーツクラブで、腹筋を鍛えていたという彼は、筋肉がすばらしかったという。会話も普通にできるし、何も問題なさそう………。


付き合ってもいいかもな…と、お嬢さんは、考えたらしい。でも、何回か会って、なんとなく、違うなあとばく然と感じて、お断りした。



男は、激怒して、お嬢さんの携帯に、悪口山盛りのメールを何通も送って来たという。お嬢さんは、相談所のマニュアルに従って、丁重にお断りしたはずなのに、ものすごくプライドを傷つけた責任をとれ!とかてめえのような女は………etc………聞くに耐えない脅し文句。



お嬢さんは、普通の年収の男もダメだ…と、あきらめ、子持ちのバツイチ男なら、一応、女性と付き合ったことがあるし、まともだろう…と、選択枠を広げた。


そして会ったのが、鼻毛の男。


デート当日、鼻毛ぐらい切っておけばいいのに、鼻から大量の鼻毛が、飛び出していた。それだけでも、無理って、思ったのに、いきなり、元奥さんの悪口を言い始め、それがひとしきり終わると、結婚相談所のスタッフ女性の悪口を言い始めたという。



お嬢さんは、あっけにとられてたら、鼻毛男は、すごい上から目線で、「君も、仕事なんか辞めて主婦やったら?パソコンの勉強してるんだって?そんなことより、料理を習ったら?」と、のたまったらしい。




帰宅して、早速丁重なお断りメールをして、鼻毛男からのメールも電話も着信拒否に設定したお嬢さん。





やっぱり、自分の好きな60代の男性とお見合いしようと、決意したらしい。



ファザコンと言えども、年が離れすぎてるんじゃない?お父さんみたいって言うより、おじいちゃんって感じじゃない?って思う。でも、アンドレのように、幼女が好きっていうのと同じく、お嬢さんは、老人が好きなのだ。



人の好みは自由だもんね。



お嬢さんのパパは、お嬢さんが中学生のときに、亡くなってる。それも、切腹して。



お嬢さんは、たんたんと、血まみれになった布団を粗大ごみに出したとか、切腹に使われた日本刀の血を拭き取って、父親が買ったところに返品したと言うが、あんまり食欲がでる話じゃない。



そういう破天荒な父親だから、穏やかな老人と一緒になりたいんだそうだ。



「お母さんが、タンカで運ばれるお父さんに、あなた!なんでこんなことにっ!って、取りすがってるのが、火曜サスペンスのセリフみたいだった。」



と、相変わらずたんたんと、話す。私は他人事なので、「そりゃ、笑えるな」って、言ってしまったが、お嬢さんは、自分もそう思ったという。



なんか、私はお嬢さんが、好きになって、今度のお見合いの相手の老人が、いい人だといいなって思った。


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