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麻布十番物語  作者: 由妃
23/26

樹海へ行った……彼女

最近、龍君は電話がなると、受話器をとって持ってきてくれる。でも、自分では絶対に出ない。


その電話が鳴った時も、龍君がとって、キララに渡してくれた。


電話の主は、自殺願望の強いあねさんだった。


「ねえ、キララ。樹海の最寄り駅を調べてくれる?」


というので、キララは仰天した。


(ええーーーーっ!!!まさか行くつもり?)


でも、そんなびっくりしてることは、おくびにも出さず、


「あはは………いいよ。調べて電話するね……。」


と言って、電話を切った。さあ、どうしようか………とりあえず、調べてみた。


「………駅、………駅、………駅。三つの駅が近いっちゃあ、近いけど、どこからも離れてるなあ。ナニナニ?夏場は涼しいのでハイキング客で賑わう……そうそうこれだよ。これ。」


たっぷり一週間、時間をおいて、あねさんに電話をした。


「調べたよ。でも、三つの駅の中間地点にあるけど、どこからも離れてるから、歩いては行けないよ。タクシーでどれくらいかは、ちょっとわかんないな。それに、夏場は涼しいから、ハイキング客でごった返してるらしいから、秋になったら、行ったら?」


「ふうん、そう。実はこないだ、樹海に一人で行ったのよ。死のうと思って。でも、駅を調べないで、電車に乗っちゃったから、新富士とかいう駅で適当に降りて、その辺の人に樹海への行き方聞いたら、警察に通報されちゃったのよ。」


「ええーーっ!もう行ってきたの!」


「そうよ。だから、駅をキララに聞いてるんじゃない。」


キララはあねさんの気を樹海からそらそうと、言ってみた。


「なんで、樹海なの?華厳の滝とかは?火曜サスペンスに出て来るようなリアス式海岸の絶壁とかじゃダメなの?」


「華厳の滝なんて、どうやって、てっぺんまで登るのよ!樹海が一番安上がりなのよ。近いから。」


「はあ………そう。」


自殺まで安上がりに済まそうとするあねさん。なんだか、とってもたくましい気がする。


「じゃあ、ニューヨークとか行って、夜中にブルックリン橋とか渡って、強盗に会って撃たれて死ぬってのは?海外旅行の保険をたっぷりかけとけば?安上がりどころか、儲かるじゃん!」


「外国なんか、めんどうくさいところ、行きたくないわよ。樹海がいいの!それより聞いてよ。樹海行きを警察に阻止されちゃった後の話、ひどいのよ!」


あねさんは、おかんむりだ。


樹海行きを警察に阻止された後、何が起こったんだろう………。キララは息をつめて聞いた。


「警察署でいろいろ聞かれてるうちに、夜になっちゃって、家にも帰れなくなったし、すごく疲れたから、一番近くのビジネスホテルに泊まったのよ。ホテルのフロントのおばあさんが、うさんくさそうに私を見て、本当に感じ悪かったわ。私は疲れてたから、部屋に入るとすぐにシャワーを浴びたの。そして、シャンプーをしてリンスしようと思ったのよ。」


「ふんふん。それで?」


「信じられる?リンスが泡立ったのよ!シャンプーとコンディショナーじゃなくて、シャンプー二本だったのよ!」


「ええーーーーっ!」


キララは別の意味で、驚愕した。死のうとして、樹海に行き、阻止された人が、ビジネスホテルのシャンプーが二本だったと、心の底から怒ってるのだ。やはり、ナニかがズレている!


「だから、私、髪がゴワゴワになっちゃって、次の日ひどい髪だったのよ!私は絶対コンディショナーがないと、髪がゴワゴワになっちゃうの!クシも通らないくらいにね!ひどいホテルでしょう!」


「う………うん。ひどいホテルだね。シャンプー二本なんて、ありえないよね。」


キララは、笑いをこらえて、必死で話を合わせた。しかし、あねさんのズレっぷりに、心の底から動揺してる。


「でね、そのことを友達のモスラに言ったのよ。そしたら、あの人、それは、リンスインシャンプーとボディシャンプーの二本だったんじゃないかって言うのよ。でも、あれは絶対、シャンプー二本だったわ………」


あねさんの話はまだまだ続いていたが、キララは聞いちゃいなかった。


受話器から、離れたところで笑い転げていたからだ。


wwwwwwwそこ?そこが大事なとこなのーーーーーーっ!死ぬほど、どおでもいいことじゃーーーーん!wwwwwww


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