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麻布十番物語  作者: 由妃
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ランチ会に爆弾を落とす御婦人

再開します。更新はたま~に。

キララはご近所のかなり年配の御婦人と顔見知りになって、道路で立ち話するようになった。話のはしばしに出てくる御所言葉から、なんだか階級の違いを垣間見たが、キララはおおざっぱなタチなので、あまり気にせずにつきあっていた。


しかし、今日は御婦人のお供で、六本木のリッルカールトンの43階のフレンチで、ランチすることになった。ドレスコードがあるレストランなので、でかける前に、御婦人の豪華マンションに寄って、クローゼットの中から、着れそうなものを選んで借りて行く。


オレンジピンクのラクロワ…極彩色の…


色が強すぎて、キララは目がチカチカしたけど、なんとか着れそうな一着を探し出した。クリスチャンオジャールのワンピースなんだけど、テレビで見たバリ島の夕焼けみたいなグラデーションが気に入ったのだ。


ワンピースとパンプスに化粧品まで御婦人からの借り物でコーディネート。はっきりいって、似合ってない。しかし、世の中にはTPOというものが存在してるらしい……ことぐらいキララにはわかっていた。


なぜにこのようなめんどくさいことをしてるかというと、ランチ会に一緒に行くというのが、御婦人からの依頼されたバイトなのだ。


無職のキララは、二つ返事で引き受けた。ゴージャスなランチ会に一緒に行くだけで、バイト代がもらえるとは!しかし、どうしてわざわざキララを同伴したかは、これから明らかになる。




上品な御婦人方が十人ぐらいそろったところで、キララはご近所のお友達として、紹介された。とても、いい人たちで、こんな可愛らしいお友達がいらっしゃるなんて……とキララを同伴した御婦人 をおっとりと褒めていた。




さて、ランチのコースが始まり、シャンパンで乾杯しようというときに、一人の御婦人が、ちょっといいかしら?と発言した。


「お食事の時は、原発と政治の話題はなしにしましょう。」


皆さん、ええ、そうねとおっとりと、うなづいてたんだけど、カチンときたキララはこんなことを言ってしまった。


「じゃあ、下ネタはオッケーなんですね。良かった!」


とたんに静まりかえるリッルカールトンのフレンチレストランの一角……。


もくもくとランチのコースはすすみ、キララはたらふく食べながら、わざと性的な話をしたので、皆さん、気分を害したらしく、デザートを食べ終わるとそそくさと解散した。




席に残された御婦人とキララ。


「悪いことしちゃった?」


依頼主の御婦人に一応、聞いてみた。多分、バイト代はでないな。でも、キララの予想に反して、御婦人は晴れやかに言った。


「いいえ。よくやってくれたわ。」


「どういうこと?」


キララはわけがわからなかった。


「あのランチ会はね、すぐにああいうことをいう人がいて、いけすかなかったのよ。あなたがああ言ってくれて、胸がスッキリしたわ。」


「ああいうことって?」


「原発と政治の話はなしにしましょうって言ったでしょう。あの会はいつもあんなふうに言い出す人がいて、なにか面白くなかったのよ。」


「そうか、それで私を同伴したの?」


「そうよ。あなたがセックス、ペニス、クリトリス って言う度に、みんなぎょっとして目をシロクロさせてたでしょう、私たちの年代ではけして口にできない言葉をあなたが普通に口にするので、思いついたのよ。」




御婦人は、そう言っていたずらっぽく笑った。


そうだよね。話題を制限されるなんて、なんかファシズムじゃん。せっかくみんな集まってるのに、 好き勝手にしゃべれなくて、当たり障りのないことばかりしゃべってるなんて、糞だな。でも……。


「ただ、あなたもう、ランチ会に呼ばれなくなっちゃうかもよ。いいの?」


「あなたのお話聞いてる方がずっと楽しいもの。下ネタ以外のお話も聞かせてくれる?」


「まかせて!」




キララは、龍君のお迎えの時間が来るまで、御婦人のマンションのロココ調のリビングで、たくさん話をした。ヴァチカン で見たミケランジェロの天井のフレスコ画のことや、知り合いのミスター国防が公園の鳩、相手に俺は絶対餌はやらねえって頑張ってて、でも鳩が行ってしまうと、ものすごく見捨てられたような気持ちになって、一人でうわああ~と悶えてる話なんかを……。






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