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麻布十番物語  作者: 由妃
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結婚しよう!

また夏休みが来て、龍君が長期でお泊りに来るだろうから、今度はどこに連れて行こうかって、アンドレと相談してた。


龍君を預かるようになってから、大丸ピーコックへの買い出しを三人でするようになった。スーパーとかで、龍君が暴れても、アンドレが、かついで退場するから、安心なのだ。


海やプールが大好きな龍君のために、車を借りて、鵠沼海岸とか行ったり、サマーランド行ったり、大磯ロングビーチとか行ったりして、結局、自分達が楽しんでるのだ。


家族じゃないけど、家族ってこんな感じなのかな?


私がうんと、小さい頃は、こうやって親と出かけてた気がする。いつのまにか、パパは、ワーカーホリックになっちゃって、ママは、奥様方のつきあいに、のめりこんで、二人とも、私を忘れてしまったけど。


…*…*…*…*…*


そんなある日、龍君のママの沢尻と………上様が、龍君連れて、やってきた。


やっぱり、龍君のパパは上様だったか。蒸発したなんて、嘘だったな。だって、上様はご近所に住んでるもん。なんて、のんきに思ってたら、大衝撃なことを言われた。


「うちの息子を預かってくれてて、ありがとう。迷惑かけて、申し訳なかった。今日はお別れに来たんだ。さ、龍、ありがとうは?」


「ありがとうは?」


「それから、バイバイって。」


「………。」


龍君がエコラリア(おうむ返し)しない。言いたくないんだ。龍君は、どうでもいいことは、エコラリアするけど、いやなことは、何も言わないことで、意思表示する。でも、なんでわざわざお別れなんか、いいに来たんだろう。近所だから、預からなくても遊びにいけるのに………。


「上様、バイバイって、どうして?上様と沢尻は、よりが戻ったんでしょ?それで、龍君を二人で面倒みるから、うちにもう、預けないってこと?」


「そうじゃない。龍は、しかるべき施設に預けるんだ。もう、帰ってこない。」


「なんですと?」


「妻とやり直すことにしたんだ。もともと、うまくいってなかったわけじゃない。ただ、私が龍の泣き声とか、暴れたり、ブツブツ言う独り言に耐えられなくて、家に帰らなかった。そしたら、妻が出て行ってしまったってわけだ。。龍さえいなけりゃ、妻と暮らしたいんだ。だから、龍を施設に行かせることにしたんだ。」


「キララが預かってくれたから、夫と逢ってたの。やっぱり、私達、別れられないわ。彼と一緒に暮らしたいの。だから、悪いけど、龍には施設にいってもらうわ。今まで、ありがとう。可愛がってくれて、感謝してるわ。」


「感謝してるわじゃないよ、あほか!……じゃあ、うちで引き取るよ。私が面倒みる。今までだって、やってきたもの。夜とか、休みのときだけじゃなく、学校の送り迎えもする。だから………。」


「他人の君にそこまでしてもらうことはできない。龍は、どのみち大きくなったら施設に行くんだ。少し、早まっただけだよ。小さい時から、集団生活に慣れた方がいいんだ。」


「………龍君をちょうだい。私が龍君のママになるよ。そしたら、他人じゃないでしょう。養子にするよ。」


「ニートの君が子供を養えるわけないだろ。」


私達がもめてるので、めんどくさがりのアンドレが顔を出した。


「何かトラブル?龍君は、今夜、うちに泊まらないのか?」


「アンドレ!龍君が施設に行くって。」


「シセツ?」アンドレには、わからない日本語だった。


「上様、フランス語でアンドレにも説明して。アンドレも、すごく龍君を可愛がってるの。」


上様が、流暢なフランス語で、アンドレに説明してる。だんだん心臓がバクバク鳴ってきた。頭も心も乱れて、どうして?どうして?どうして?って言葉がリフレインする。


私にはわからない言葉で、アンドレと上様が口論してる。MERD!って、アンドレが、叫んだ。これは相当、頭に来てるな。そうだそうだ。ほんとに腹が立つよ。それに、すっごく悲しい。


「Veuillez m'épouser.」


アンドレが、私に何か言った。フランス語で言われても、わかんないんだけど……。興奮してて、日本語忘れちゃったみたいだ。私がポカンとしてたら、左手の薬指をさして、また同じ言葉を繰り返した。


「上様、アンドレ、なんて言ってるの?」


「……結婚してくれだってさ。」


「はあーーーーーっ!?なんでこんなときに、そんなこと言ってるのよ?龍君をうちで引き取れるように、上様に交渉しなさいよ!」


本当に、アンドレは馬鹿だ!やっぱり、頭おかしい。こいつ!


アンドレが話にならないので、上様が、代わりに説明してくれた。


「キララと結婚して、龍を養子にするってさ。」


ああ、そういうこと。それなら


「いいよ!アンドレと結婚する。アンドレ、結婚しよう!」


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