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麻布十番物語  作者: 由妃
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電気屋で働く姫君

網代公園で、知り合ったご近所に住むシングルマザーの姫君は、電気量販店で働いてる。


姫君のとこのちい姫と龍君が仲良しなのだ。と、言っても、だんまり&独り言の龍君に、ちい姫がああしろ、こうしろ言ってるだけなんだが………。


***************



姫君の上司の女主任は、パートの姫君が、愛らしく接客もうまいことをねたんで、パワハラをしてた。


姫君以外の男性社員の書類は、いい加減でも、ニコニコでOKを出し、ていねいに作成された姫君の書類には、難癖をつける。姫の前任者のパートの女性も、その女主任に、いびられて、辞めたらしい。




姫君はちい姫を養わなくてはならないので、我慢して、辞めずに仕事してたらしい。でも、ある日、堪忍袋の緒が切れた。


社員出口で、その主任を待ち伏せして、ひとこと言った。


「殺すぞ…てめえ!」


女主任は、「なんですか?あなたは!」と怒ってたらしいが、あきらかに腰がひけていた。姫は動かず、そのままにらみつけた。


青ざめて、そそくさと出て行く主任。



次の日から、主任は、姫君の書類をすぐ通すようになった。


そんなこんなで、姫君は、今は快適に電気量販店で、働いている。





姫君は、銀座のホステス時代、店のNo.1だった。店に行くのは、貢物をもらうため。適当に水割り作って、ニコニコ笑ってるだけで、店の売り上げを伸ばしていた。



そんな姫君が恋に落ちた。


ちやほやされることに慣れた姫君は、実は、世間しらず。


店に来た地方出身の代議士に、「愛とか恋とかはないけど、君と寝たい。」と、すごく率直に誘われて、胸キュンした。




なんて、ストレートに物を言う人でしょう。なんて、正直な…。まるでライオンのように肉食系な方だわ。す・て・き・♥



その日のうちに、ベッドインしちゃって、ライオン男の代議士のほうには、本当に愛も恋もなかったのに、そこは銀座のNo.1の姫君。


手練手管でモノにして、見事、彼の妻におさまった。



松濤の豪邸に住み、ちい姫も生まれて、絵に描いたような幸福な人妻をしていた。


しかし、ちい姫が小学校に上がる前に、状況は一変した。


ライオン男が、蒸発してしまったのだ。


詳しいことは姫君から聞けなかったけど、汚職?とかリーマンショック?とか…そんなこと。


姫君とちい姫の豪邸は、差し押さえられ、事情聴取を受け、借金取りが、風呂

ソープ

で稼いで、ダンナの借金の穴埋めをしろと迫って来たり………さんざんな目にあっていた。


でも、姫はライオン男を愛してたので、私たちも大変だけど、きっと彼も大変なはず。離れていても、家族こころを合わせて乗り越えよう!とか思ってた。


ちい姫の通っていたお受験のための塾も辞めて、荒川区の安いアパートに移って、人目を忍んで、生活していた。


財産は、マルサに押さえられちゃって、何も残ってなかった。ちい姫抱えて、途方にくれてたところに、ライオン男から、一通のメールが………。



「元気ですか?僕も元気です。季節の移ろいを、スーパーに並んでる野菜から感じとる今日この頃………。(中略)………一人暮らしを満喫してます。(^-^)/」


のような、内容だったらしい。


蒸発したライオン男からのメールには、姫君とちい姫の窮状を気遣う言葉は一切なく、ただどっかの地方都市で、一人暮らしを満喫する充実感が、のんきに語られていた。


そのメールで、長ーい夢から醒めるように、姫君のライオン男への恋心は、一気に失われた。


ライオン男は、自分のことしか考えられない男だったことに、やっと気づいたのだ。



姫君は、「今すぐ、離婚届を送って♥」とメールし、荒川のアパートにそれが届くとソッコウで、ハンコをつき、区役所に持ってった。ちい姫の親権や、養育費でもめることもなかった。


彼はちい姫にも、関心がなく、親権?イラナイ。養育費?ムリムリ~という軽いノリで、全てが済んだ。


地方の資産家の彼の両親は、とっくの昔に、雲隠れしてたし、姫君のパパとママは、姫君が小さい時から、「お前なんか、死んじまえ」と言うのが口グセのネグレクト親。


頼りになる人もなく、これからどうしたらいいの?と、ちい姫抱えて途方に暮れる姫君……では、なかった。


離婚が成立すると、すぐ姫は結婚指輪はもちろん、昔、客に貢がせた貴金属類、ブランドバッグなど金目の物を全て、大黒屋に持ってって、換金してきた。


大黒屋の店員は、姫が、離婚したからお金が要りようなの…と、悲しげにうつむくと、買い取り価格をずいぶんサービスしてくれたらしい。


マルサも、結婚前からの持ち物は、差し押さえることが、できないのだ。


けっこうな金額を手にした姫君は、荒川の安アパートを引き払い、独身時代に住んでた麻布十番のこぎれいなマンションに、引っ越した。



ちい姫を無認可の夜間保育に預けて、また銀座か六本木で水割り作れば、また楽に稼げるんだけど、ちい姫のために、それはしたくない。それで、昼間の電気量販店の売り子のパートをしてるのだ。


**********



龍君は、ちい姫と砂遊びをしてる。龍君は、なぜか龍君よりも小さい子供に気に入られることが多い。お兄ちゃん、と慕われるのではなく、年下の子供に、可愛がられてるのだ。



ちい姫も、来年は龍君と同じ、麻布小学校に通う。


「その頃には、パートじゃなく、正社員になってるといいわ。」


って、言ってた姫君だったが、なんと……異例の出世でフロア長になり、パワハラしてた女主任の上司になっていた。


男の客も、女の客も、姫君からしか商品を買いたがらず、テレビ売り場にいれば、テレビ。パソコン売り場にいれば、パソコンの売り上げを、一人で伸ばしてた。


姫君のお休みの日は、店全体の売り上げが、ガタ落ちになるのだ。


ブックオフじゃ、パートのおばさんが、社長になってたな。姫君もそのうち、そうなるかもな。


でも、私は、来年も再来年も同じくニートをやるぜ!


………と、ろくでもない決意を新たにするキララであった。


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