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麻布十番物語  作者: 由妃
14/26

アインシュタイン似の氣功の先生

麻布十番には、なぜか気功とか鍼治療、足裏マッサージと疲れたときに、癒されたくなる癒し処が、いっぱいある。


ニートの私は疲れてるわけなんんだが、気功って何?と好奇心が抑えきれず、受けに行ってみた。


気功の先生は、すっごく背が高く、灰色の髪の毛は、ベートーベンか、アインシュタインかってくらい乱れてて、ちょっといっちゃってる人に見えなくもない。


私は、「腰痛と肩凝りが………。それに目が疲れやすいんです。」と、適当なことを言い、先生が近寄ってきて、首を触ったり、コメカミを触ったり、いわゆる触診してた。



「あなた、首、曲がってるよ。ムチ打つような衝撃を受けてる。」


「そういえば………」


私は中学生のとき、体育の時間、どっかからぶっ飛んできたバレーボールを顔面で受けたことがあり、けっこうな衝撃だった。多分、そのことをおっしゃっておられるんだろう。



にわかに、乱れ髮の先生に、尊敬の念がわく私。


とにかく、治療のための小部屋に移動して、横になる。先生は、両端がとがった水晶とか、なんだかしらんがいろんなパワーストーンで、私の体を撫でて、そして、フンッフンッフンッ!って、十字をきったり、体には触れずに、石の先をみぞおちの下あたりに向けて、グルグル回したりしてた。



三十分弱で、治療は終了。


お金を払い、外に出ると、物がはっきり見える!視力は0.6なんだけど、ニートで、メガネ作る金もないので、放置しといた。明らかに、視力が上がってる!体も軽い!


別段つらいところも無かったけど、空気が深々と、肺に入ってきて、こんな爽快感は、ないってくらい爽快だった。


子供時代はこんな爽快感は、けっこう日常的にあったけど、大人になるにつれ、なくなってた。そんなのあったっていうのも、忘れてたもん。




気功がすごいのか、あの先生がすごいのか…。半年後、予約を入れようとすると、アシスタントの女性が言いづらそうに


「先生は海外旅行に行ってます。いつ帰って来るかわかりません」と、言う。



「では、お帰りになったら、連絡下さい。」と言って、電話を切ったけど、なんか釈然としない。奥歯に物が挟まったような言い方だったような………。


一ヶ月後、先生が旅行から帰ったとアシスタントの女性から連絡が来て、早速、私は予約を入れた。



予約当日、先生がげっそりやつれてたんで、びっくりした。


「先生!具合悪かったんですか?それで、お休みしてたんじゃ………。」


「いや………ちょっと、留置場に入ってたんですよ。」


「はあーーーーっ??」




アシスタント嬢が、奥歯に物が挟まったような言い方してたのは、これか!これを隠してたのに、先生ったら、あっさり言っちゃって…どんだけ、浮世離れしてんだよ。



「なんで、留置場なんかに入ってたんですか?」


私は根掘り葉掘り聞くことにした。しかし、こんな暗く重ーい事実を、あっけらかんとしゃべる先生に戦慄し、聞かなきゃ良かったと後悔した。


「妻がストーカーと無理心中したんですよ。」



こんなことをおっしゃってる。どうよ?このまま聞いちゃっていいのか?キララ………。


しかし、先生はとうとうと話す。


「私の患者だった男が、私を医師法違反で告発して、留置場に入れて、その間に妻を拉致して、知的障害のある妻を脅して、劇薬を飲ませて、自分も飲んで死んだんです。告発した本人が、死んだから、私は無罪放免になって、出て来たんです。」



(なーにーそれ~ーーーーーっ!?実話ーーーーーっ??)



(それ………奥さんがストーカーと無理心中したんじゃなく、ストーカーに殺されてるでしょっ!!)



気が遠くなったけど、先生が何事もなかったかのように、治療するっていうんで、治療はしてもらい、爽快になって帰ってきた。


しかし、爽快感は、低い。あんな話を聞いちゃったんだもん。


多分、もうここへは来ない。





あの話が本当なのか嘘なのか、確かめたくもない。


本当だったら、怖すぎるもん。


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