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修学旅行-1

高校生活最後で最大のイベントがやってきたの。

そのイベントは3泊4日のスキー場での修学旅行なんだ。

3年生のこんな時期にと思うかもしれないけれど、私達の高校は付属高校だから友達は殆ど推薦や内部進学で大学に上がるからなの。

大学に行っても友達とは一緒で高校の時とあまり変らないんだけどね。

私もスキーとっても楽しみにしてるんだ。


クラス別でバスに乗りスキー場へ向かう。

如月はバスに乗ると直ぐに眠ってしまった。

ルコと海は隣同士で座っていた。

「海。パパ、疲れているの?」

「うん、最近帰りも遅いし帰ってきてから出かける事が多いから」

「それって裏のなの」

「そうみたい、危険な事はしないからって言うけど心配で」

「そうだよね」

バスの中では生徒達が話をして盛り上がっていた。

途中休憩の為、高速のサービスエリアにバスが止まった。

生徒達はトイレに行ったり飲み物を買って飲んだりしている。

如月もバスから降りて自販機でコーヒーを買い飲んでいた。

「ふわぁ~」

如月があくびをしながら大きく伸びをした。

「大きなあくびだね。如月先生」

「なんだ、葉月か」

「なんだは無いんじゃないの」

「いつも一緒の水無月はどうしたんだ」

「トイレだよ。そんなに疲れた顔をして。また無茶な事してないよね」

「年度末が近いから書類や伝票の整理が大変なんだよ」

「えっ? 危ない事しているんじゃないんだ」

「あのなぁ、危険な仕事なんかそうそうあってたまるか」

「それなら良いんだ。海が心配してたからね」

「バスで寝てるからな、遅れるなよ」

如月が調子悪そうにバスに向かい歩き出す。

そこに海が走ってやって来た。

「ルコ、お待たせ」

「今まで、如月が居たのに」

「えっ、何か言ってた?」

「危ない事はしてないみたいよ。書類や伝票の整理だって」

「本当に、良かった」

「でも、無理し過ぎな感じがする。大丈夫かなぁ」

「今度は、ルコが心配してるの?」

「バスに戻ろうか」

「うん」

バスに戻り海が寝ている如月の横に小さな紙袋を置いた。

クラス委員長が点呼を取ってバスはスキー場に向かい走り出し昼過ぎにスキー場に到着した。


そのスキー場は、宿泊先のホテルの目の前にあり。

その大きなホテルの駐車場にバスが止まりバスを降りてホテルへ向かう。

隆羅も目を覚まし生徒に指示をする。

「忘れ物無い様にな。ロビーに入ったら班長、点呼をちゃんとして報告するように」

如月が最後にバスの中を点検する。

「なんだ、これは? 海のやつだな」

紙袋に気付き中を見る栄養ドリンクが2本入っていた。

如月がポケットに小さな紙袋を入れてバスを降りてロビーに向かう。

「先生、点呼終わりました」

クラス委員長が報告をする。

「それじゃ、部屋に行き着替えをしてレストランに集合する事。時間厳守だからな」

「はーい」

ぞろぞろと班毎に部屋に向かう。

初日の今日は、昼食後ホテル前の広場で開講式が行われスキー教室が行なわれる予定になっていた。

各々のレベルにあったグループに分かれてインストラクターが指導をしてくれるのだ。

「でも、うちの高校って凄い時期に修学旅行があるよね」

「そうだね、だけど付属だけあって殆どの人がこのまま大学に行くんでしょ。凄いよね」

「まぁ、そうなんだけどね。私なんかその為に青葉台選んだんだもん」

「進路も決まったんだし。高校最後のイベントを楽しもう」

「おー!」

他の受験生が聞いたら激怒しそうな事を言いながらみんな盛り上がっている。

海とルコは初心者クラスに居た。

「ルコ、滑れるようになるかなぁ」

「どうなんだろうね、私も自信ないよ」

2人がお喋りしているとそこへ文月が滑りながらやって来た。

「なんや、初心者かいなぁ。迷惑かけんへんようになぁ」

「うるさいな。運動神経だけは良いもんね、他は無神経だけど。ねぇ海」

「なんやと、葉月!」

そこへ、綺麗なシュプールを描き黒いウェアーが滑り込んで空斗に雪を撒き散らした。

「誰やねん。冷たいやんけぇ! 何すんねんなぁ!」

「文月、中級クラスはもうリフトに進んでいるぞ」

「うわぁ、ちょい、待ってーな」

黒いウェアーは如月だった。空斗が慌ててリフトに向かった。

「しょうがない奴だなぁ、まったく」

「如月先生はスキーも上手いんだね」

「毎年来ているからな。水無月も直ぐに滑れるようになるさ」

「先生、私は?」

「怪我だけはしないでくれな。葉月」

「もう。ベーだぁ」

ルコがあっかんべぇをする。

「如月先生ですか、今年も宜しくお願いします」

初心者クラスのインストラクターが如月に向って挨拶をした。

「じゃ、もう少しコースの見回りをしてくるので」

如月が会釈をしてリフトに向かい滑って行く。

「インストラクターのお兄さん、先生を知っているの?」

ルコがインストラクターに聞いた。

「ええっ、もちろんですよ。青葉台の如月先生と言えばスキーもプロ級だしボードも凄く上手いですからね。インストラクターの憧れみたいなもんですから、明日は先生のボード姿が見られると思いますよ」

「へぇ、そうなんだ」

「明日が楽しみだね。ルコ」

「楽しみなのは海の方でしょ」

「えへへ」

「それでは、これからスキー教室を始めます。今日は時間が短いのでスキーの扱い方と坂の上り方やボーゲンの滑り方まで行きたいと思います」

インストラクターの指示に従いながらスキーを練習していく。

ゲレンデではグリーンのウェアーにオレンジのゼッケンを着けた生徒達が黄色いウェアーのインストラクターに連れられ講習をグループごとに受けている。


その頃如月はホテルの内で先生方とインストラクターの責任者でのミーティングに出席していた。

「明日の天気はどうなんですか?」

「明日は午後から崩れそうですね。吹雪くかもしれません」

「様子を見ながら行きましょう、あまり遠くには行かないようにお願いしますね」

「そうですね、でも中級クラスは明日は山頂の方まで行く予定なんですけれど」

「大丈夫ですかね?」

「まぁ、崩れると言っても遅い時間からですから大丈夫でしょう」

「それでは、そう言う事で明日もお願いいたします」

「如月先生は明日も見回りお願いしますね」

「はい。了承しました」


1日目の講習が終了し、ホテルで夕食をとり就寝時間までの自由時間に生徒達は部屋でくつろいだりホテル内を散策したりしている。

如月はロビーで天気予報をチェックしフロントに詳しい状況を確認していた。

「明日は、少し早めに切り上げた方が良さそうだな ゴホゴホ。まいったな、こんな時に風邪かな」

そこへ、ルコと海がやって来た。

「如月先生、見つけた」

「何だ、葉月。怪我でもしたか」

「怪我なんかしないです」

すると如月が咳き込んだ。

「先生こそ大丈夫なんですか?」

「ゴホ ゴホ 大丈夫だ」

「本当に?」

海が切なそうな目で如月を見る。

「そんな目で見るな。いいか」

「うん。ゴメンなさい」

「さぁ、そろそろ就寝時間だ。部屋に帰りなさい」

「はーい」

如月が海の頭に手を置いて周りには聞えないように海に言った。

「ドリンクありがとうな」

「うん」

海とルコが部屋に戻って行った。2人を見送り如月が部屋に向かい歩き出した。


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