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夏休み-3

翌朝、隆羅は珍しく誰にも起こされずに目が覚めた。

目を開けると海が着替えをしているようだった。

隆羅が伸びをする。

「ん、ん~」

「た、隆羅、駄目! こっち見ちゃ」

「着替えぐらい恥ずかしく無いって」

隆羅の顔に枕が飛んで来た。隆羅が難なく手で受け止めてしまう。

「水着に着替えてるの、やっぱり裸は恥ずかしいもん」

「分かった。終わったら起こしてくれ」

そう言い寝返りをうって海に背を向けた。

「隆羅、終わったよ。隆羅? 怒ってるの?」

「ふぅわぁ~」

返事が無く顔を覗き込むと隆羅が両手を広げ大きな伸びをした。

「何でだ? 俺は海が嫌だと言う事は絶対にしないだけだぞ」

「でも、男の人って……やっぱり」

「それは、そうだけどな」

隆羅が海を抱き寄せキスをする。

「いつも、このタイミングで必ず来るだろ」

「そうだね」

「ルコが」

2人の声が揃った。その時、ノックする音が聞えた。

「ほらな」「ほらね」

「今、行くよ」

呼ばれる前に返事をした。


朝食を済ませ、駐車場に向かい車に荷物を積み込む。

「パパ、この車の荷物は何?」

「皆のシュノーケリングの3点セットなんかだけど」

「いつの間に、準備したの?」

「企業秘密だ」

「海、パパとずーと一緒だったんでしょ」

「うん、そうだけど」

「知り合いのダイビングショップに頼んであったんだ。フロントにキーを預けてあるから積んでおいてくれって。俺の3点セットはお袋が持ってきた奴だけどな」

「出発だね」

「行くか」

「隆羅、今日行くビーチはあそこなの?」

「少し違うかな、砂浜がとても綺麗なビーチだぞ。ビーチーパーリーのビーチはそこの隣のビーチだけど似たような感じだぞ」

名蔵湾沿いに車を走らせ。

昨日、行かなかった川平湾に向かう。

海の中に生簀のような物が見え通り沿いにある大きな黒真珠の店に入る。

『黒真珠』の文字に沙羅の瞳が爛々と光り輝いていた。

「ここは黒真珠でも有名なんだ。仕方が無い少し寄り道をするか」

「綺麗な黒い真珠だね。隆羅」

「黒真珠の黒蝶貝は東南アジアの珊瑚礁にしか生息していなくって、ここ川平で世界で始めて養殖が成功したんだ」

「隆羅。これ綺麗じゃない、どう?」

沙羅がネックレスを首に当てて見せた。

「それは、タコに買ってもらえな。沙羅」

「ここに居ないのに?」

「買って帰って請求すればいいだろ」

「そんな事、彼には出来ないわよ」

「俺には、請求するくせに。俺よりタコの方が稼ぎが良いだろ」

「細かい事言わないの」

「隆羅、このティアラ凄いね」

「海が、もう少し大人になったらな」

「ラブラブな事、行くわよ隆羅」

沙羅が少し拗ねていた。

「親子揃って直ぐに拗ねるからな」

「何か?」

「別に」


川平湾に向かうとレンタカーに観光バスが沢山停まっていて観光客がいっぱいだった。

車を何とか駐車場に止めて公園に向かい歩く、少し歩くと真っ白な砂浜とエメラルドグリーンの海が見えてきた。

「隆羅。なんだか何処の海とも違う不思議な色をしているんだね」

「そうだな、七色の海なんて言われているからな。養殖場もあり潮流が激しいから遊泳禁止になっているいしな」

「でも、あのグラスボートの多さは興醒めね」

真っ白いビーチに係留されているボートの多さに沙羅が呟いた。

「そうだな、日本100選にも選ばれているのにな」

「砂浜に下りてみるか?」

「パパ、もう泳ぎに行こうよ」

「分かった、そうするか」

車に戻り底地ビーチ方面へと向かう。

「この先にもビーチがあるんだね」

「底地と書いてスクジと読むんだ、とても遠浅で海水浴向けなんだけど。今は、魚や珊瑚が見られる米原の方が人気があるからな。少し覗いて見るか」

底地ビーチの駐車場に向かい車の中からビーチを見る。

「パパ、とても静かだね」

「のんびりするにはいい所だけどな」

観光客も殆ど居なくとても静かなビーチだった。


少し道を戻り石崎に向かう、途中から未舗装の農道に入っていき段々道が険しくなっていく。

「隆羅、ジャングルみたいになって来たけど」

「大丈夫だ、少ししたら開けるからな」

しばらくガサガサと道に覆いかぶさった草木を掻き分けて、進んで行くと車を止められるスペースが見えてきた。

すでに2台の車が止まっていた。

「今日は、平日なのにやけに車が多いな」

「そうなの、パパ?」

「ああ、観光客はめったにここに来ないし。地元の人も土日の休み以外はあまり来ないからな」

車を止めて、荷物を降ろしビーチに向かい歩く。

ルコがビーチの入り口で止まっていた。

「す、凄い。綺麗」

目の前の小道の向うには真っ白な砂浜と色とりどりに輝く海が見えた。

「さぁ、行こう」

ビーチに着くとこれぞ沖縄の海と言う様な海だった。

何処までも続く白い砂浜、エメラルドグリーンの海。

そこはまるで別世界だった。

海とルコが走り出した。

「先輩! 遅いですよ」

不意に声を掛けられた。その声は藍達だった。

「ビーチーパーティーしましょう!」

「隆羅、ビーチーパーティーだって。やったー!」

スギやクロが準備をしているのが見える。

海が目を真ん丸くして隆羅の手をつかみ飛び跳ねた。

「海、良かったな」

「うん、凄く嬉しい」

「よし、準備するか」

隆羅が藍達の所に行き準備に加わる。

沙羅達を木陰で待たせ隆羅が荷物から簡易テントの様なタープを取り出した。

「パパ、それ何?」

「日よけだよ」

隆羅が手際よく1人であっという間に張り終わった。

「すげえぇ」

スギとクロが手を止めて見ている。

タープの下にシートを敷いて荷物を置く。沙羅達もタープの下に入った。

「これなら、涼しくて良いわね」

「茉弥をここに寝かせておけな」

隆羅が大き目のビーチタオルを畳んでシートの上に引いてくれた。

「ありがとう、パパ」

「ほら、スギもクロも何をボーとしているんだ」

隆羅がテキパキと指示をしてバーベキューの準備もあっという間に終わり炭に火を入れるだけになった。

「やっぱり、先輩って素敵だね。憧れちゃうよね」

「ええ、それって」

藍が呟き、海とルコが驚いていた。

「ああ、違うの。好きとかじゃ無くて憧れかな。いろんな事知っていて何でも出来ちゃう。そして凄く優しくしてくれるもんね」

「昔から、変わってないんだ。隆羅って」

「そうなの先輩は昔からあのまんま。歓迎会や送別会、ビーチーパーティー、クリスマスパーティーなんかいろんな事を仕切ってくれて。スタッフの誕生日にはケーキや花束を準備してくれて皆を楽しませてくれるの。相談や悩み事も聞いてくれるし、だけど決して表にはあまり出ようとしないでいつもバックアップしてくれて。海や星を見に沢山連れて行ってもらったんだ」

「そうなんだ、凄いねパパって」

「それに、スタッフの中には先輩とだったら結婚しても良いなって言う子まで居たんだよ。先輩は知らないだろうけれどね」

「海、本当に凄いね。パパ」

「うん、私、隆羅で良かった」

「海ちゃんが羨ましいもん」

「ほら、茉弥は見ていてあげるから皆で遊んできなさい」

沙羅が声を掛けた。

「クロ、スギ。舞ちゃん、行くよ」

藍が声を掛け、水着になり走り出した。

舞が笑顔で手を振っていた。

「ああ、バーの女の子だ」

「ルコ、私達も行こう」

「そうだね」

2人も水着になり駆け出した。隆羅が一息ついて沙羅の横に座りお茶を飲んでいた。

「隆羅は良いの?」

「一休みだ。茉弥も気持ち良さそうだな」

茉弥が海風で揺れるタープを見て1人遊びをしていた。

「隆羅は、ここでも人気者だったのね」

「仕事では、何度も怒鳴った事もあるけどな。ONはON、OFFはOFF楽しまないとな。俺は俺のままだけどな」

「それがいいんじゃないの」

「そうかもな」

海達がフリスビーやボール遊びをしているのを眺めている。

「先輩!」

「パパ!」

「隆羅!」

皆に呼ばれて隆羅も水着になり仲間に加わった。

しばらく、皆と遊んで隆羅が戻ってくる。

まだ他のメンバーは泳いだりして遊んでいた。

隆羅が炭に火を入れると、少ししてパチパチと炭が熾きてきた。

「隆羅は、相変わらずマメね」

「沙羅は泳がないのか?」

「日焼けが怖いからいいわ。お日様が少し傾いたら水浴びするけどね」

「じゃ、代わりに海に入って来るか」

隆羅が海に入っていく。

入れ違いで藍達が戻ってきた。藍が辺りを見渡した。

「あれ、炭に火が入っている。先輩は?」

「海に行ったわよ」

沙羅が藍に教えて指差した。

「藍、あそこにいるぞ。また浮いているよ」

「本当だ、よく浮いていられるよな。スギ」

海が波打ち際のほうを見ると仰向けになり隆羅が浮いていた。

「私、呼んでくるね」

海が隆羅に向かって走り出した。

「じゃ、クロ。焼く準備しようか」

「そうすね」

海が隆羅が浮いている所に呼びに来た。

「隆羅、お昼にしようって」

「ああ、海か。分かった」

「それ、どうやってるの?」

「浮くだけだぞ。簡単だ」

海が真似をして仰向けになりバタバタとしていた。

隆羅が起き上がり海の手をつかんで教え始めた。

「体の力を抜いて、おへそを突き出す感じで頭を少し下げるんだ」

「こう? 本当だ、浮いている。凄い」

「手を離すぞ。それで手首を左右に振ってごらん進むから」

「こんな、感じ?」

海が水の中で手をグルグルと振ると体が進んだ。

「そうだ」

「凄い、凄い」

「片方だけ振ると振った手と逆に回れるぞ」

「本当だ、面白いね」

「もう。パパ、海。お昼だよ」


ルコが呼びに来て2人で海から上がり皆の所に戻った。

「はい、先輩、海ちゃん」

藍が手際よく紙皿と割り箸を渡した。

「悪いな、なんだかこんな事してもらって」

「今まで、先輩には沢山お世話になりましたから。このぐらいなんでもないですよ、ねぇ、クロ、スギ」

「もちろんですよ、俺なんか彼女とシフト同じにしてもらったりしたし」

「自分は、車をよく借りましたしね」

スギが照れながら言うとクロが続いた。

「大好きな、石垣島を好きになって欲しいからな。皆で楽しむのも好きだしな」

「さぁ、焼きまくるから食べてくださいね」

藍が腕をまくる真似をした。ワイワイと賑やかなビーチパーティーが始まった。

「そう言えば、何で皆さん石垣島に来たんですか?」

「皆、理由はそれぞれかな。私は何となく遠くに来たくってかなぁ」

「俺は、南の島に憧れがあって」

「自分は、友達に誘われて。でもその友達は先にいなくなりましたけど」

「私は、ホテルのパンフレットを見て、こんなプールサイドバーで仕事したいなぁって」

ルコが聞くと藍やスギにクロが答えて最後にバーの女の子の舞が答えた。

「舞は、如月先輩に会いたかったんだよね」

「もう、藍は。言わないでって言ったのに。憧れだったんです、どんな人がバー考えたのかなぁって」

「で、どんな人だったの。私の言ったとおりの素敵な人だったでしょ」

「はい」

舞が照れていた。

「藍、褒めすぎだぞ。何も出ないからな」

「そうそう、係長は先輩ラブですからね」

「スギ、憶えておきなさいよ」

スギが藍をからかうと皆が大笑いした。

食事の後は自由な時間を過ごす。

海が隆羅を探して辺りを見渡すとビーチを歩いていた。

沙羅は茉弥とお昼寝。

ルコは藍と舞とおしゃべりをスギとクロは海に入っていた。


海が隆羅の後を追って歩き出し、少しして追いついた。

「隆羅、何しているの?」

「ビーチコーミングだ」

「それ、何をするの?」

「面白い漂流物や貝を拾っているんだ。海、上着も着ないで来たのか日焼けするぞ。コレでも羽織っておけ」

隆羅が羽織っていたシャツを海に渡した。

「ありがとう。隆羅の匂いと潮の香りが気持ち良いな」

「そうか、おお。有ったぞ」

「何が、見せて。凄い綺麗な玉だね」

「そろそろ、戻ろうな」

「うん」

2人で手を繋ぎながら戻る。それにルコ達が気付いた。

キラキラと輝く海をバックに真っ白い砂浜を2人が手を繋いで歩いている。

「うわぁ、凄い絵になっているね。お似合いのカップルだ」

舞が眩しそうにしながら呟いた。

「先輩、凄いや」

「でも、かなりバカップルな時もあるけど」

「でも、羨ましいよね。舞」

「うん、絶対に素敵な人ゲットするぞ」

「「「おー!」」」

藍・ルコ・舞の3人が声をそろえた。

「何を叫んでいるんだ?」

「素敵な恋人を見つけるぞーって」

「見つかるさ、きっとな。みんな輝いているからな」

「照れちゃうな、何だか」

ルコが照れていた。

「あれ、海ちゃんそれってガラス玉じゃないの?」

海が青緑色のガラスの玉を持っていた。

「隆羅が見つけたの」

「それって何? パパ」

「昔の漁具の浮き球だな。今はこんなプラスチックになっているけどな」

隆羅が足元にあった、プラスチックの玉を拾い上げて見せた。

「今じゃ滅多に見つからないんだよ。さすが先輩」

「ラッキーなだけだよ。たまたまさ」

「藍、自分達はそろそろ」

するとクロが声を掛けた。

「そうだね。クロと舞はこれから仕事だもんね」

「じゃ、先輩」

「今日は、ありがとうな。舞ちゃんも」

「はい、失礼します」

2人が簡単に荷物をまとめて帰って行った。

「パパ、これから仕事なの?」

「島じゃ普通の事だぞ、通勤時間も殆ど無いから。かなり自由に時間を使えるんだ、海も近いしな」

「へぇ、出勤の前や後に海に行けたりするんだ」

「もう少し、泳いだら俺達も撤収するぞ」

「ハーイ」

少しずつだが日が傾きかけていた。

沙羅も茉弥を連れて海に浸かっていた、藍とスギは片付けを始めている。

海とルコ、隆羅は海に入り遊んでいる、しばらくして帰る準備をした。

「今日は、ありがとうな。お前達は、今日は休みなんだろ」

「そうですよ、これから友達と飲み会なんです」

「あまり、飲みすぎるなよ。またホテルでな」

「じゃ、先輩。お先です」

「海ちゃん、ルコちゃん。またね」

「はーい。また」


車に荷物を積み込みホテルに戻る。

直ぐに部屋でシャワーを浴びて今日は早めに食事をする事にした。

今日も綺羅からは何も連絡が無かった。

レストランでコース料理を食べたが海に余り元気が無く、食欲も無いようだった。

「海、具合でも悪いのか」

「少し、疲れちゃったみたい」

「パパ、大丈夫なの?」

「隆羅?」

「もう少し様子を見よう」

ルコと沙羅が心配そうな顔をして隆羅に聞いてきた。海を部屋に連れて行きしばらくするとぐったりとして返事もしなくなった。

海の体を触るととても熱かった。

直ぐに沙羅に連絡をし病院に連れて行く事を告げると、沙羅が慌てて部屋に来た。

「隆羅、大丈夫なの?」

「今から病院に連れて行く。太陽に中ったんだろう体を冷やして点滴をすれば直ぐによくなるさ。ルコには心配ないからと伝えてくれ」

「分かったわ」

隆羅が海を抱き上げて騒ぎにならない様に裏門から出て車に乗せ病院に向かった。

時間外の窓口で受付をし救急で見てもらう。

外来の一室で直ぐに点滴をして氷嚢で体を冷やして溜まっている体の熱を取った。

隆羅がベッドの横に座り海の様子を見守る、少しするとだいぶ落ち着いてきたようで海が目を覚ました。

「あれ、隆羅。ここは何処?」

「病院だ」

「私、どうして?」

「熱中症になったんだよ。もう、大丈夫だからな。少し眠りなさい」

それはいつもよりもとても優しい声だった。

1時間ほどで点滴も終わり、海が目を覚ますのを待った。

しばらくすると海が伸びをして起き上がった。

「大丈夫か?」

「うん、もう平気。ありがとう、少しだけフラフラするけどお腹も空いているし」

「そうか、良かった。立てるか?」

海が立ち上がると少しふら付いた。

海の腰に手を回し体を支え看護婦に気が付いた事を伝える。

先生の許可が下りて、待合室の長いすに海を座らせ会計を済ませ車に向かう。

「隆羅にまた、迷惑を掛けちゃったね」

「そんな言い方するもんじゃないぞ」

「そうだね、えへへ。怒られちゃった」

車で病院の近くのコンビニに寄り野菜ジュースと消化に良さそうな食べ物を買い、海に渡す。

「ゆっくり、食べるんだぞ」

「ありがとう、もう平気だから」

少し声に張りが出てきて食欲も戻ってきたようだった。

「ねぇ、隆羅。ホテルはもう少し先を曲がるんじゃないの?」

「いいんだよ、ここで」

しばらく車を走らせる。


名蔵大橋を越えて少し行った所で車を止めて車のライトを消す、あたりは闇に包まれた。

「隆羅、ちょっと怖いかも」

「大丈夫だ」

隆羅が先に車から降りて、助手席に向かいドアを開ける。

「ほら、車から降りてごらん」

「えへへ、えい」

車から飛び降りて隆羅に抱きついてきた。

「危ないだろ」

「隆羅なら平気でしょ」

「そうだな」

「た、隆羅。星が降ってるよ」

ドアを閉めて、隆羅が空を仰いだ。

夜空を見上げている海に自分の上着を掛ける。

そこには、満点の星空が輝いていた。

清里の澄んだ空気の下で見た星空より遥かに凄かった。

「清里で約束したろ」

「うん、ありがとう」

隆羅が防波堤に座り、膝の上に海を座らせた。

「あの白い帯のように見えるのが、天の川。白鳥座のデネブ ワシ座のアルタイル 琴座のベガ、3つを繋いだのが夏の大三角形だ」

隆羅が織り姫や彦星の話や他にも星座の話や星の話をいっぱいしてくれた。

時々車が通ったが大きなワゴンの陰にいるので気にならなかった。

「寒くないか?」

「大丈夫。隆羅が温かいから」

「そうか」

爽やかな夜風が優しく吹いていた。

「凄い星空だね。昨日から生まれて初めて見る物ばかりで、どれもが素敵でとても綺麗で……あれ? 星が滲んで見えるよ」

「どうしたんだ?」

「よく、分からない。でも嬉しくって、とても幸せで涙が出てきちゃった」

海が大粒の涙を流して少ししゃくり上げていた。

「隆羅、ありが……」

隆羅が抱しめてキスをした。

とても優しくそして力強く、海が隆羅の首に腕を回した。

「隆羅が好き。どうしようもないくらいに大好き」

「愛してるよ、海」

「もう1回、言って」

「海を愛してる」

「うん」

海が隆羅の胸に顔をつけて泣いていた。

しばらくすると隆羅の携帯が鳴る、沙羅からだった。

「沙羅か、俺だ。もう少ししたらホテルに戻るから、海は大丈夫だ。後からな」

「海、心配しているから戻ろうな」

「うん、そうだね」

隆羅が指で海の涙を拭った。

ホテルに戻ると沙羅が待っていた。ルコは疲れて眠ってしまった様だった。

「海ちゃん、大丈夫?」

「はい、大丈夫です。心配を掛けてスイマセン」

海が沙羅に頭を下げる。

「海ちゃんが大丈夫ならいいのよ。隆羅もとても落ち着いていたしね」

「沙羅、明日は別行動で構わないか? 海を午前中だけでも休ませたいんだ」

「いいわよ、ルコと茉弥を連れて竹富島にでも行って来るわ」

「隆羅、私はもう平気だから」

「駄目だ。明日の午前中は寝ていろ、そうしたら遊びに連れて行ってやるから」

「うん、隆羅がそう言うならそうする」

「部屋で休もう」

部屋に戻り横になる、隆羅は疲れていたのか直ぐに眠ってしまった。

「また、隆羅に助けてもらったね。ありがとう」

寝ている隆羅にキスをして、海も目を閉じた。


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