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死神と少女。  作者: 逸夜
9/16

#4

暑い。

背中を汗が伝うのが分かる。

走って走って、頬を伝うのが汗か涙かわからない。


サクがそろそろ休もうと止まったところはここの入り口。

今なら後戻りができる。

でもサクは今そういうことが考えれなかった。

怒りと悲しみが混ざって、曖昧でわけ分からない。

ここまでどう走ってきたのか、それすらわからない。


頭を冷やしたい。

でもここに水はない。

暑さで頭がぼぅっとする。

何も考えれない。考えたくない。


サクは近くにあったベンチに座った。

ハァハァと荒い息を整える。


「――つめたっ」


首につんっと何かがあたった。

見てみると、汗か水かがあるだけ。

辺りを見回しても何もない。

そして、また。

今度は頭。


サクは空を見上げた。

そこには

「……雪だ」

舞い散る、白い華。

サクがいた町のクリスマスの日にも降っていた。


でもたしか雪は夏に、暑いときに降らないはず。

首を傾げていた、そのとき

「……異常気象。それか天の気まぐれか」

口から出た言葉。

サクが言ったのではない。

サクの後ろの、その人。


「ユイが、何で」

驚いたように見つめる。

サクの瞳には怒りと動揺。

死神はそんなサクに

「……さっきはすまん」

一言、呟くように。


音一つ響かない静寂。

サクは一、二歩遠ざかる。

死神、ユイの言葉を頭に並べる。

さっきの謝罪。

……だから?

「だから何?」


サクは死神を睨みつけた。

「……そんなので許されるとでも?たしかに謝ればおわることだったかもしれない、ワタシだって悪かった。でもね、でもね、ワタシ頑張ったんだよ。つらかったんだよ、痛かったんだよ。ユイもそうだったと思う。だから許そうとは思わない。だからユイも許さないで」

サクは目を閉じる。

ふーっと息を吐いて深呼吸。

「ワタシもユイに言ってないことがあるから、ユイの隠し事は言わなくていい。また言える時になったらワタシを許して?ユイが隠し事を言ってくれたらワタシも許す」

簡単なことだよ、とでも言うようにサクは言った。


いつのまにかサクのなかの曖昧な感情はなくなり、雪も止んでいた。

ユイは黒いローブの中から折れた群青の花をだした。

「ありがとな」

「……どういたしまして」


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