#4
暑い。
背中を汗が伝うのが分かる。
走って走って、頬を伝うのが汗か涙かわからない。
サクがそろそろ休もうと止まったところはここの入り口。
今なら後戻りができる。
でもサクは今そういうことが考えれなかった。
怒りと悲しみが混ざって、曖昧でわけ分からない。
ここまでどう走ってきたのか、それすらわからない。
頭を冷やしたい。
でもここに水はない。
暑さで頭がぼぅっとする。
何も考えれない。考えたくない。
サクは近くにあったベンチに座った。
ハァハァと荒い息を整える。
「――つめたっ」
首につんっと何かがあたった。
見てみると、汗か水かがあるだけ。
辺りを見回しても何もない。
そして、また。
今度は頭。
サクは空を見上げた。
そこには
「……雪だ」
舞い散る、白い華。
サクがいた町のクリスマスの日にも降っていた。
でもたしか雪は夏に、暑いときに降らないはず。
首を傾げていた、そのとき
「……異常気象。それか天の気まぐれか」
口から出た言葉。
サクが言ったのではない。
サクの後ろの、その人。
「ユイが、何で」
驚いたように見つめる。
サクの瞳には怒りと動揺。
死神はそんなサクに
「……さっきはすまん」
一言、呟くように。
音一つ響かない静寂。
サクは一、二歩遠ざかる。
死神、ユイの言葉を頭に並べる。
さっきの謝罪。
……だから?
「だから何?」
サクは死神を睨みつけた。
「……そんなので許されるとでも?たしかに謝ればおわることだったかもしれない、ワタシだって悪かった。でもね、でもね、ワタシ頑張ったんだよ。つらかったんだよ、痛かったんだよ。ユイもそうだったと思う。だから許そうとは思わない。だからユイも許さないで」
サクは目を閉じる。
ふーっと息を吐いて深呼吸。
「ワタシもユイに言ってないことがあるから、ユイの隠し事は言わなくていい。また言える時になったらワタシを許して?ユイが隠し事を言ってくれたらワタシも許す」
簡単なことだよ、とでも言うようにサクは言った。
いつのまにかサクのなかの曖昧な感情はなくなり、雪も止んでいた。
ユイは黒いローブの中から折れた群青の花をだした。
「ありがとな」
「……どういたしまして」




