二話「夏と雪」#1
次の町に着いた。
本当は空間を越えて行くことができるのだが、それは死神だけができる能力。
人間でも生死屍人でも、連れてすることは許されない。
体力があるないの前にそういうものを感じない死神はいいが、サクは相当疲れたみたいだ。
生死屍人じゃなかったらずっと前にダウンしている。
町に入ったらすぐに安い宿屋をとる。
サクをベッドに寝かせて、仕事をしに外へ出た。
前みたいなことにならなよう手早くすまそう、と空間を越えた。
そこそこ遠くじゃないと使わないと決めていた能力だけど、今は感謝する。
裏のとおりで今はその人しかいない。
向こうは気づいていない。
音もなく近づいて鎌を振り上げた。
そして、男は何も知らずにその場に倒れた。
宿屋に戻るとサクが起きていた。
今回は部屋から出て行ってなかったので安心する。
サクはぼーっとした目で死神を見る。
そのまま立って死神の鎌に視線を移す。
無言のまま一分。
死神は分からないままサクを見つめる。
「また、殺したんだね」
なんの前触れもなくそう言った。
声からは悲しみが感じられる。
殺された男へではなく死神に向けられた悲しみ。
「人が好きなのに、どうして死神になったの」
それは死神が今まで自分に問いかけてきた言葉。
どうして死神になったんだろう。
「死神になるための方法は二つある」
それは学校でも教えられることだ。
サクは死神の言葉に答えた。
「生まれつきの者と、自分からなる者」
死神は頷く。
「でも、ユイは生まれつきじゃないよね」
サクは言う。
「ユイの目はフードと長い前髪であまり見えないけど、綺麗な黄色い眼をしてる」
そう言ってサクは死神の前髪をあげた。
そこには満月のような、白っぽい黄色があった。
死神はサクの手をどけた。
ゆっくりとはずされた手はそのまま死神の手を握る。
「死神って生まれつき黒い目をしてるんだよ。でもユイの眼は黄色。その眼を隠すために前髪長くしてるんでしょ」
出会った時から知ってましたと言うように言葉を紡ぐ。
死神は鎌を手からはなし、壁にかける。
「ねえ、どうして死神になったの?」
サクの言葉は不安定な死神に突き刺さる。
どうして人殺しになったのか。
ちゃんと理由がある。
でも、その記憶は思い出すのを拒む。
頭の中にあの映像を映し出すのを拒む。
だから死神は
「ごめん」
と謝ることしかできなかった。
サクはそれだけで死神の過去になにかがあったと悟った。
サクは、嫌なことがあると人はそのことを話そうとしないのを知っている。
深ければ深いほど、思い出すのを拒むことを知っている。
だからサクはそれ以上なにも言わなかった。
かわりに
「これ」
茶色の四角いものを渡す。
「変なこと聞いてごめん。甘いもの食べれば元気がでるから」
手に置かれたのはチョコだった。




