#4
あーあ、いるよなこういう人たち。
って呆れ気味に死神は思った。
仕事ではなくあの子の汚れた服をどうにかしようとふらついていたのだ。
あの子が一緒にいたほうがいいのだが、どうしても起きなくて仕方なく一人できたのだ。
「こうなるなら連れてこなくて正解だな」
そう呟いた死神の前には5,6人の男。
昨日の男たちの仲間ではなく、たぶん死神に恨みがある人。
死神が仕事以外、人を傷つけることをしないと知っている人。
手には、ナイフ。
かわす自信はとてもある。
というか、この全員を生きたまま倒れさすことだってできる。
でもそれができないのは
「……ここまできても人間大好きって俺も相当物好きだな」
ふっと微かに笑う。
男の一人が死神に飛び掛る。
かわす気はなかった。
一回でも刺されれば男たちは満足するか怯えるかで去ると思ったからだ。すぐ傷も治るし。
男の目も死神がよけてくれると思っている。
それが分かったからこそ、かわさなかった。
でも、その攻撃が当たることはなかった。
目を閉じなかった死神はなぜ刺されなかったのか分かる。
止める暇もないくらい驚いたことも分かる。
死神の目の前。
刺されるはずだった腹部。
ナイフは少女に刺さっていた。
「……ッ」
男はナイフを放し、後ろへ下がる。
「…あ…ぁあ……っ」
その男はそのまま逃げた。
他の男たちも少女から一滴二滴落ちる血を見て逃げていった。
少女は自分でナイフを抜き取る。
血はドクドクと、少しずつ止まっていく。
傷もどんどん塞がっていく。
傷が完全に塞がって、少女は死神に近づいて平手打ち。
死神はぽかんと口をあける。
少女は死神を睨む。
「……ワタシには無茶するなって言った。なら死神さんも無茶しちゃいけないの」
「………」
「だからこれからは禁止……っ」
「はいはい。気をつけます」
死神はいつのまにか泣いている少女の頭を撫でる。
泣いていたことに気づかなかった少女は慌てて涙を拭いた。
帰る途中雨が止んだ。
そして少女が先に空に浮かんだそれに気づいた。
初めて見たのか見とれている。
「死神さん、あれなに」
死神も空をみた。
「ああ、あれは虹だ」
「ニジ」
ほえー、と歩きを止める。
それが五分くらい続き、ご機嫌に歩き出した。
「なぁ、お前……名前は?」
「……あ、そういえば言ってなかった。ワタシはサク。死神さんは?」
「死神には名前なんかない」
「……そっか、じゃぁ、ユイ」
「……何、その女の子っぽい名前」
「あ、えっと……もういないけど、ワタシの初めての……友達の名前」
恥ずかしそうにうれしそうに顔を俯かす。
「その子、寿命で死んだんじゃないよ?私がこんな体になったのは八年くらい前だから」
「じゃあなんで?」
「……事故で死んじゃって……。ワタシを庇ったせいで」
ああー、ううー、と悩んで
「いいよ、それでいい」
「……ごめんなさい」
「いや、そうでもない。名前のある死神は希少価値がある」
それに短くて簡単だし、と心で付け加える。
少女、サクは頬が緩む。
それはとても不器用な顔だったけど。
それでも“笑顔”に変わりはなかった。




