一話「青空の架け橋」#1
今日は雨だった。
ついさっきまで晴れていたのに灰色の雲が一気に青を覆ったのだ。
空は今も曇天で雨も一向に止まない。
今の死神の気持ちをそのまま映したみたいだ。
じろ……と死神は隣にいる少女を見る。
短い白い髪に赤い瞳。
見ただけではただの十三歳。
見た目だけだったら。
だから死神は困っているのだ。
こんな子を連れて歩けば死神以上に驚かれるだろう。
“生死屍人”。そういう人種なのだ、彼女は。
死神は人殺しで嫌われるが彼女は……そう、存在だけで嫌われるのだ。
魂を断ち切らなくても、人を殺さなくても、彼女は人々に嫌悪されながら生きなければいけないのだ。
そんな彼女とどうして一緒にいるのか。
それは三日前のクリスマスに遡る。
―――死神は街を歩いていた。
黒いローブに大鎌を持っていれば嫌でも目に付かれる死神は街を行きかう人々に睨まれたり避けられたりしながら歩いていた。
今日はクリスマス。
雪も降ってかなり最高のクリスマス。
なのに。
今日は仕事だった。
聖なる日は反射して地獄となる。
今日送らなきゃいけないのはとある夫婦。
長年子供ができなくて今年に養女を迎えたばかりらしい。
幸せなのか不幸せなのか、どちらにしても殺さなければならない。
はぁ……とため息をついた。
もう、家の前。
鎌を片手に壁をすり抜ける。
夫婦はクリスマスパーティの準備をしていた。
どっちも死神に気づいていない。
早めに終わらせようと鎌を振り上げた。
そのとき、女性のほうが死神に気づいた。
悲鳴をあげる、そう思ったが彼女はふっと笑いそのまま死んだ。
男性のほうも同じだった。
なんでか知らない。笑ったまま死んだ夫婦をそのままにして去ろうとした。
が
「……なんで泣いてるの」
隣から少女の声。
見ると、十三歳くらいの少女が一人。
たぶんあの夫婦が引き取ったという子。
「……義父さんと義母さん、殺したの?」
その声に感情はなく、ただそう言っているだけ。
「そうだ」
この場から離れたかった。
この少女から逃げ出したかった。
でも、その少女は
「……やっと死んだんだね」
笑うとまではいってないがほっとしていた。
じっと見ていたらあることに気がついた。
「ちょっといいか」
死神は少女の腕をつかんで服をめくった。
そこには、無数の、傷跡。
青黒い痣や傷跡が治りかけてそこにある。
この少女をここにはおけない、そう思ってその家から少女を連れ出した。
というところまでが三日前の話。
連れ出しておいてなにも考えてないから宿をとってそこに住んでいる。
でもそれは長く続けれない。
彼女をどうするか、そこでとても悩む。
それを察したのか彼女は口を開いた。
「……死神さん、ワタシをおいていっていいよ」
感情がない声で、淡々と。
「ワタシ、仕事邪魔してるから。保護施設に帰ればいいだけだし。一人で帰れる」
「……でも君は…」
「うん、大丈夫。今までと同じだから」
今までと同じ、それは彼女みたいな子から言えば暴行には慣れてるという意味になる。
死神は必死に止めた。
普通の死神ならほっとくだろう。
だけど彼は人間が好きなのだ。だから人殺しは好きじゃない。
「……でも」
「でもじゃない。いい?ここから一歩もでるな。仕事にいってくる」
少女はこくんと頷いて死神は外に出た。




