#2
「ユイ……!」
ユイはもう待ち合わせ場所に来ていた。
安心してそのまま抱きつく。
「どうした……サク?」
ユイは動揺を隠し切れない冷静な声で聞く。
だか途中サクの震えに気づき真剣な表情になった。
サクは何も答えずただ震える。
青い空に嫌な雲がかかってきた。
「ユイ……」
搾り出したような声はかすれていていて今にも消えてしまいそうだった。
頭を撫でると体から顔を離して服をギュッと掴む。
目はおびえていて焦点があっおらず瞳を小刻みに動かしている。
「ワタシ、生きてる?生きてるよね?ちゃんとした人間だよね。こんな体以外だったらおかしなところ一つもないよね!ねぇ……ワタシ、ワタシ、……サクだよね」
「……なにがあったんだ?」
サクをベンチに座らせてその隣にユイが座る。
紅い瞳の少女と死神という珍しいペアなので人の視線がガンガン突き刺さるが、ユイが嫌々ながら睨みつけると誰もこっちを見なくなった。
ユイはサクのずれた帽子を直してもう一度聞いた。
「なにがあった?」
「…………」
「サク」
「…………」
「……言いたくなったら言えよ」
ぽつ、ぽつと雨が降り始めた。
みんなが家の中に入っていく中二人はその場にいた。
座ってから一つも動かないサクを自分のローブで包む。
「……お母さんの顔が分からないんだよ」
なんの前置きもなくサクは言った。
雨は一層激しくなる。
「なんて言った?」
「……お母さんの顔が思い出せないんだよ。ワタシが住んでた国も、思いでも。ワタシが生死屍人になる前の記憶が全部、全部」
サクは縮めた足に頭を埋めた。
***
あ、また一人見つけた。
クリムは背後からその人を狙う。
いらない人間を消すために。
形が分からなくなった人が血を撒き散らす。
そしてフォークはまた血染まる。
それがエンドレス。
「そろそろサクちゃんたちと合流しないと」
突然降ってきた雨に不吉の予感。
クリムの予想ではサクがあのことに気がついたことか。
もしそうだったら自分の出る幕はないかな。
そう思ったが、ここであのことをばらすのもいいかと考え悪趣味に頬笑む。