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死神と少女。  作者: 逸夜
12/16

#3

紅い人はサクたちに気づきこちらへ歩いてきた。

長い赤髪を垂らしていて、黒い服には少々赤い刺繍がしてある。

顔は笑っていて、綺麗な女の人だ。


サクは女の人が近づいてくるたび、何か変な気を感じた。

そしてそれははっきりと分かった。

「死神」

顔は笑っているのに、相手をねじ伏せるような威圧。

ユイからはあまり感じない気。


「初めまして」

にっこりと満面の笑顔。

男ならすぐにイチコロだろう。

女の人はサクに手を伸ばす。

握手の手。


でもサクはその手を握らなかった。

死神だから、とかそんなのではなくただ嫌な気がしたのだ。

握るな、と本能が拒否する。


女の人はふうんとサクを眺め手を引っ込めた。

「この子、なかなかやるわね」

女の人がユイに言う。

「だから俺は止めなかった」

「え、えっと?」

サクが二人の言葉にはてなをだす。

ユイの態度から知り合いだとわかるが、何の話をしているのか分からない。


ふふふ、と女の人が種明かし。

「私の手に毒を塗っておいたの。この小さな針の先、見える?」

小さな子供に教えるみたいに背をあわせて手を見せる。

手には、見えにくいけど小さな針の先があって毒も塗ってある。

「即効性だから生死屍人でもピンピンできないわよね」

「もしワタシが握ってしまってたらどうしたの」

「それでもいいわ。解毒薬あるし」

懐から小瓶を出してまたしまう。


サクは誰この人、とでも言うようにユイをみた。

でもユイが紹介する前に女の人が察して自己紹介をしてくれた。

「自己紹介おくれてごめんなさいね。私は名前はないんだけど、知り合いや親しい人にはクリムってよばれているわ。クリムゾンを縮めてクリム。この男と同じ死神よ」

「死神っていっても俺と少し違うが」

確かに気が違うが死神としての違いはサクには分からない。

これは後で聞いてみようと、保留しておくことにした。


「でも、へぇ、この子があの。たしかサクちゃんよね」

「うん」

名前を知っていることについては聞かなかった。

青い空は綺麗でもからっぽなように、サクは想いを知っていてもからっぽなふりをした。

そうしたらどんどん寂しくなっていく。

あのことをこのクリムという人が知っているなら、サクはいつまでも寂しい綺麗な空白を演じ続ける。

「サク、どうした」

ユイが急に話しかけてきたのでびっくりして体がピクッとはねた。

「なに」

「目が死んでたが、大丈夫か?」

「なにそれ。ただ考え事してただけ。大丈夫」

言葉がカチこちなのは自分でもわかった。


サクは頭の中、さっきまで考えていたことを投げ捨て、考えないようにした。

あのことは自分が導いてはだめなのだ。

時間と運命というやつが導いてくれないと。

サクからあのことを言うには、まだきつすぎる。

春の暖かい空気はサクを避けるように通り抜けていく。

空っぽの青色は真上で見守ってくれているのに。

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