#2
「でさ、ユイは何しにいってたの?」
朝食を食べながらサクは聞いた。
「探索」
「何の」
「変なやつの」
「なにそれ」
「おまえ、深夜みなかったか?」
「何も見てないけど」
「そうか」
話すの面倒とでも言うように何も言わなかった。
サクは深夜のことを思い出す。
真夜中に目が覚めたのは覚えてる。
でもなんで起きたのかはわからない。
そしてそのまま寝た。
サクはこういうのは考えても何も思い出さないというのを知っているので思い出すのをやめた。
どうせ必要なものなど見ていないだろう。
「……あとどれくらいで国につく?」
「三日でつかせる」
「うう……長い」
サクはローブをぎゅっと握る。
口から白い息を吐いて空を見上げた。
前までは青空が広がっていたはずの空は灰色に染まり雪まで降らせる。
本当に奇妙な世界だ。
「……生死屍人って本当は温度を感じることができないんだよ」
サクは空に向かって呟いた。
誰にでも言うわけでもなくなんとなく。
その呟きはユイに届いた。
「じゃあなんでおまえは?」
「知らない。知ってるけど知らないことにしておいて。それはワタシの口から言わなくてもいつか知ることができることだから、死神として生き続ければ」
サクなのにサクではないような気がした。
枯れた木々の間をくぐりぬけて出てきたのは草原だった。
さっきまでの灰色の空は青に変わっている。
あの森が冬と春の境界だったのだ。
「……これ返すよ、ありがとう」
黒いローブをユイに渡してサクは春の暖かさを感じた。
そのまま進んでいると、サクがなにかを見つけた。
「……ユイ、あそこに誰かいる」
草原の緑の向こう。
一人の紅が立っていた。