三話「生まれつき」#1
町と町、国と国の間は離れていたり近かったりいろいろある。
同じ国の中なのに町まで距離があったりもする。
そんな異様な国々よりももっと異様なのは四季だ。
この世界には四季があるが、その四季は場所によって決まっていない。
どういう意味かというと、夏の国があったとして、また別の国は春だったり。
そういうと国の間が遠かった、と考える人がいるかもしれない。
実際その国との間は二キロメートル。
そう不思議な世界なんだ、ここは。
ただ、前回みたいに夏に雪は降らないけれど。
***
「……寒い」
サクが呟いたそこは雪の積もった大地。
雪を踏みながらガクガク震えていた。
ユイはそんなサクに自分のローブをかぶせた。
ふわっとかぶさった温もりに顔を綻ばせて問う。
「ユイは寒くないの?」
「死神はそういうのをあまり感じないからな」
ふーんとサクはフードをかぶった。
たどり着いたのは緑のない森。
枯れた木々はゾンビみたいに突っ立っている。
サクたちはその森の中央の巨大な森のそばで眠ることにした。
深夜二時。
ザクッと小さな音がして、サクは目を覚ました。
でもとても眠かったのでまた眠りに落ちた。
その近くにいた、紅い人にも気づかずに。
朝、サクが目を覚まして初めに気づいたこと。
それは、隣で眠っていたはずのユイがいないことだ。
探しにいこうと思ったが無闇に動くとすれ違いがあるかもと冷静に考えそこに残った。
三十分くらいした後ユイが帰ってきた。
「……何してるんだ、おまえ」
サクはユイを木の上から探そうと巨木に登っているところだった。
木登りに夢中だったサクは突然の声に足を滑らした。
「……!」
「……馬鹿か」
ユイはため息をつき落ちてきたサクをとらえる。
「……死ぬかと思った」
「おまえでも死ぬのか」
「回復とか治癒能力は高いけど、かなりの衝撃を一瞬で直すのは無理」
だから死ぬかもね、とサクは笑わなかった。