呪いでヤギに変えられた悪役令嬢ですが婚約破棄の証書を食べてしまうので困っています。
なんてことだろう。
ちょっと待って。これはどういうこと。
私はメルエール・イル・リングイネ。この大国リュミエールの第一王子の婚約者であり、由緒正しきリングイネ公爵家の長女であり、金髪ドリル縦ロール赤色吊り目の豪奢派手派手令嬢。
つまりどこからどう見ても悪役令嬢なメルエール・イル・リングイネでありますわ!
王太子で有らせられる第一王子、キルクス様に聖女に対する嫌がらせと間接的な暴力行為(もとい暗殺計画)を暴かれ断罪されたのがつい先日のこと。公爵家で蟄居を命じられ婚約破棄の証書にサインを求められ、一人にしてと部屋の外に使者を追い出してから・・・
ヤギになって証書を食べている。←イマココ
さらにはヤギになったショックと共に、今私の頭の中には恐ろしい量の前世の記憶が流れ込んできている。
私は日本の小八木 舞子。もしもし?錯綜する展開についていけてます?私は無理。
とりあえず、私は今、ヤギなのだ。目前の食事は摂る。じゃない、証書にサインなんてしたくありませんわ!
だって私、キルクス様を愛しているのよ!でもなくて、ええもう何これ。夢なの?仕事は?転生ものなのなんなの!?盛りだくさんすぎて何からしていいかわからない!全然落ち着けないヘルプミー!!
いやいや嫌でも落ち着かねばならぬあむアム。
吾輩は山羊である。名は・・・メルエェぇぇエル。
そう、今は山羊。山羊のメルエェぇぇ・・・ぇ・・・
もしゃもしゃもしゃもしゃもしゃもしゃごっくん。
証書飲んじゃった・・・。
コンコン
「リングイネ嬢、サインは終わりましたか?」
・・・。今飲み終わりましたが何か。
「?、リングイネ嬢?・・・・失礼。」
使者がドアノブに手をかけると、私は毅然と。颯爽と。四つ足で扉を出て使者の隣を通り抜けた。
「あ・・・は・・・、え? や、やぎ?」
呆気に取られる使者の前を通り過ぎ、豪奢な公爵邸の廊下を闊歩する。四つ足で。
私が悠々と邸の外に出る頃、放心していた使者はハッとして叫んだ。
「こ、公爵令嬢が逃げた!!!」
こうして私は、森に帰り、山羊として暮らした・・・。




