第2章・第1話 「もうひとつの合体」
町は、元に戻ったように見えた。
崩れた建物は修理され、
人々の顔からも、不安は消えている。
――けれど。
蒼井ハルは、分かっていた。
「……終わって、ないよな」
放課後の空き地。
ハルはカードを手に、つぶやいた。
カードの表面には、
ゴウエンとリーフの姿が描かれている。
「ゴウエン、リーフ……」
カードが、かすかに光る。
「……オレは、ここにいる」
低く、落ち着いた声。
「うん……」
やさしい声が重なる。
ハルは少し笑った。
「……ねえ。もう一回、できないかな」
沈黙。
風が、空き地を吹き抜ける。
「……あの合体だ」
ゴウエンの声が、重くなる。
「絆の流星龍」
ハルはうなずいた。
「あれがあれば、どんな敵が来ても……」
その瞬間。
カードは、光らなかった。
「……え?」
ハルは、あわててカードを握りしめる。
「お願いだ、リーフ……!」
リーフの声が、静かに響いた。
「……ハル。 あれは……
いつでも使える力じゃない」
「え……?」
「心が…… 同じじゃないと……」
ゴウエンが、低く息を吐く。
「……オレも、分かる。 あのときは……
“覚悟”が、そろってた」
ハルは、言葉を失った。
「……じゃあ…… 合体って……」
「特別な、奇跡だよ」
リーフの声は、やさしくて、
でも、はっきりしていた。
――そのとき。
「おーい! ハルー!!」
リクの声が、遠くから聞こえた。
「またカード見てんのか?」
リクは、ボロボロの古い本を抱えていた。
「これさ、図書室の奥で見つけたんだ!」
「……なに、それ?」
リクが本を開く。
中には、見たことのないカードの絵が描かれていた。
炎に包まれた影。
水と絡み合う剣。
光と闇が、ひとつになった姿。
「……なに、これ」
リーフが、息をのむ。
「……これ…… ぼくたちの世界の……
古い記録だ」
ゴウエンの声が、震えた。
「……合体は…… オレたちだけじゃない……?」
リーフは、絵を見つめながら言った。
「……ちがう属性…… ちがう心…… ちがう絆……」
ハルの胸が、どくんと鳴る。
「……じゃあ…… 他にも、合体が……?」
答える前に――
ドン……
地面が、揺れた。
遠くで、水柱が上がる。
「……なに?」
次の瞬間。
ゴオオオッ!!
炎が、水にぶつかり合う音。
空気が、きしむ。
リーフが叫んだ。
「ハル……! あれは……!」
「……暴走してる…… 炎と……水が……」
ハルは、カードを握りしめた。
「……絆の流星龍は…… 使えない……」
それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。
「行こう」
ハルの声は、震えていなかった。
「まだ知らない力なら…… これから、見つければいい」
カードが、静かに光る。
遠くで炎と水がぶつかり合い、
制御を失った力が、暴れ続けていた。
――合体は、ひとつじゃない。
その事実が新たな戦いの始まりを告げていた。
そして、そのすべてを――
どこかで、見つめる存在がいたことを、
ハルたちは、まだ知らない。
――つづく。




