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第1章 ―絆の流星龍― 第4話 「恐怖の闇と何もできない戦い」

 曇った空の下、町の外れの広場。

 蒼井ハル、黒鐘リク、そしてリーフとゴウエンは、向かいに立つ男を見ていた。


 黒いローブ。

 顔は影に隠れ、目だけが冷たく光っている。


「……はじめまして、かな」


 男は、ゆっくりとカードを持ちあげた。


「ぼくは、闇の魔導士 クロウ」


 そのカードは、今まで見たことのない色だった。

 黒よりも暗く、紫に滲む光。


 リーフが、小さく声を震わせる。


「……ハル。 あのカード……怖い……」


「大丈夫だよ」


 ハルは、そう言いながらも、胸のあたりがざわざわしていた。


 クロウは、カードを地面に出した。


 恐怖の闇


 その瞬間だった。


 空気が、変わった。


 リーフの体が、びくっと止まる。

 ゴウエンの羽が、動かなくなる。


「……え?」


 ハルは、慌ててカードを見た。


「武器が……光らない?」


「防具も……!」


 リクが、カードを出そうとするが、

 どれも、まるで石のように動かない。


 クロウが、静かに言った。




「その間…… 君たちは、何も 使えない」


「な、なんだよ……それ!」


 リクが叫ぶ。


「ルールが、ちがうだろ!」


 クロウは、首をかしげた。


「ルールは、あるよ」


「――恐怖だ」


 リーフは、動けないまま、震えていた。


「……からだが……こわばる……」


 ゴウエンも、低く唸った。


「……グ……」


 ハルは、必死に考える。


(使えない……武器も、防具も、魔法も……)


「じゃあ……」


 ハルは、一歩前に出た。


「カードなしで――」


「無理だよ」


 クロウが、即座に言った。


「恐怖はね、“戦おう”とする心を、止める」


 クロウが、手を上げる。


 闇の魔導士のカードが、静かに光った。


 リーフの前に、黒い影がのびる。


「……!」


 リーフは、その場にしゃがみこんだ。


「……ごめん…… 怖くて……動けない……」


 ハルの胸が、ぎゅっと締め付けられる。


「リーフ……!」


 ゴウエンが、前に出ようとする。

 だが、足が止まる。


「……オレは……」


 リクが、歯を食いしばる。


「また……守れないのか……」


 クロウは、満足そうに頷いた。


「いいね。 これが……カードの力だ」


「きみたちは、悪くない。ただ……弱いだけだ」


 クロウは、背を向けた。


「カードは、集める」


「強いカードも……恐怖も……」


「また、会おう」


 闇が、すっと消える。


 しばらく、だれも動けなかった。


 やがて、リーフが、小さく言った。


「……ハル……」


 ハルは、カードを握りしめる。


「……だいじょうぶ」


 声は少し、震えていた。


「……まだ、終わってない」


 ゴウエンは、空を見あげた。


「……強さが、足りない……」


 リクは、悔しそうに地面を見つめる。


「……くそ……」


 夕焼けが、町を赤く染めていた。


 ――この日、

 ハルたちは、はじめて知った。


 カードでは、どうにもならない“恐怖”があることを。


 そして、

 それをこえるには――

 なにか、ちがう力がいることを。


 ――つづく。

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