第5章 ― 共鳴する光と影 第4話「影の底」
夕暮れのアリーナ。
レイは一人、中央に立っていた。
手の中のカード――《闇の継承者・真》は、以前より静かだ。
「……終わったはずだ」
だが胸の奥に、重い違和感が残っている。
あの戦いのあと、闇は確かに制御できた。
ハルの言葉も、本心だった。
――一緒に使いこなそう。
その言葉は、温かかった。
だが。
足元の影が、わずかに揺れる。
「……まだ、いるな」
低い声が響いた。
『我は、残滓ではない』
レイの瞳が揺れる。
『王でもない。もっと深い』
地面が黒く染まる。
同時刻。
ハルたちは新たな合体の研究をしていた。
「黎明は強い。でも、あれはギリギリだった」
カイトが腕を組む。
「吸収できる量に限界がある」
リーフが真剣な表情で言う。
ゴウエンが低く告げる。
「闇が暴走すれば、飲み込まれる」
そのとき、アリーナが震えた。
ハルが振り向く。
「レイ……!」
中央に立つレイの足元から、黒い柱が立ち上る。
カードが宙に浮く。
――《深淵核》
攻撃力?
効果:場の闇を吸収し、攻撃力を変動させる
「そんなカード……」
レイは苦しそうに叫ぶ。
「俺が出したんじゃない!」
深淵核が形を持つ。
人型の影。
目だけが赤く光る。
『共鳴は不完全』
声が重なる。
『闇は、光を喰らう』
ハルはカードを構える。
「黎明、出るぞ!」
――《絆の流星龍・黎明》
攻撃力4
だが深淵核の数値は揺れ続ける。
3 → 5 → 6。
闇を吸って増幅している。
レイが膝をつく。
「俺の中の……奥の闇だ」
ハルは叫ぶ。
「なら、一緒に止める!」
カイトもカードを展開。
雷属性を重ねる。
黎明が突進。
だが深淵核は攻撃を吸収。
攻撃力7へ。
圧倒的。
リーフが息を呑む。
「吸収型……際限がない」
ゴウエンが叫ぶ。
「属性を増やせ!」
ハルの頭に閃きが走る。
「吸収するなら――満たす!」
新たなカードを引く。
――《四属性解放》
効果:炎・風・雷・水を同時展開
光が広がる。
属性が渦を巻く。
深淵核が揺れる。
吸収が追いつかない。
攻撃力が乱高下する。
7 → 4 → 2。
黎明が翼を広げる。
「今だ!」
衝突。
光が深淵を包む。
だが、完全には消えない。
深淵核は砕け、黒い粒子となりレイの胸へ戻る。
静寂。
レイは荒い息をつく。
「……あれは、俺の中の恐れだ」
ハルは手を差し出す。
「だったら、怖がるな」
レイはその手を見る。
「怖くないわけがない」
「俺もだよ」
少しの沈黙。
やがてレイは、手を取った。
アリーナに光が戻る。
だが空の彼方。
黒い裂け目が、わずかに広がる。
深淵は、まだ“外”にも存在していた。




