第4章 ― 再臨の刻 最終話「闇の欠片、その選択」
アリーナの中央。
砕けた床の隙間に、黒い欠片が残っていた。
親指ほどの大きさ。
だが、そこから発せられる気配は、確かに“王”のものだった。
ハルはそっと手を伸ばす。
「触るな!」
カイトが止める。
だが遅かった。
黒い欠片は、ハルの指先に触れた瞬間――脈動した。
視界が暗転する。
見えたのは、異世界の風景。
荒れた空。
崩れた塔。
その中心に、かつての冥界の王の姿。
だが、巨大な怪物ではない。
小さな、揺れる影だった。
『私は……望まれて生まれたのではない』
低い声が響く。
『恐れが私を作った。拒絶が私を育てた』
ハルは拳を握る。
「それでも……壊す理由にはならない!」
影は揺らぐ。
『ならば、どうする?』
その問いは、責めではなかった。
ただの問い。
光が差し込む。
リーフの声が届く。
「ハル、戻ってきて!」
視界が現実へ戻る。
ハルの手の中には、黒い欠片。
だがそれは、さっきよりも小さくなっていた。
ゴウエンが低く言う。
「完全な悪ではない。だが放置もできぬ」
カイトが真剣な目で見る。
「封印するか……壊すか」
ハルは首を振った。
「違う」
欠片をカードの上に置く。
「向き合う」
カードが光る。
――新規カード生成:《闇の残滓》
攻撃力1
効果:闇属性カードを一度だけ無効化できる
闇を封じるのではない。
闇を“管理する”カード。
リーフが静かに微笑む。
「それが、あなたの答えね」
そのとき、アリーナの外縁が淡く光った。
遠くのビル屋上。
あの闇の少年が立っていた。
「……取り込んだか」
彼の手にも、別の欠片がある。
「面白い。闇を消すのではなく、抱えるとは」
少年は夜空を見上げる。
「ならば、試そう。闇と共に歩めるかどうかを」
風が吹き、彼の姿は消えた。
アリーナでは、ハルたちが新たなカードを見つめている。
「これで終わりじゃない」
「うん」
闇は消えない。
だが、制御できるかもしれない。
それが、新たな戦いの始まりだった。




