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第3章・第1話 「闇が生まれた場所」

 夢を、見ていた。




 けれどそれは、

 ハル自身の夢ではなかった。




 ――森があった。

 ――炎も、水も、風も、土も、

 まだ名前を持たない世界。




 そこでは、

 争いはなかった。




「……ここは……」




 ハルは、

 自分の体がないことに気づく。




 視点だけが、

 ゆっくりと世界を漂っていた。




「……異世界……?」




 その声に、

 答えるように――

 小さな影が、地面に落ちた。




 最初は、

 本当に小さかった。




 揺れる、不安。

 満たされない気持ち。

 誰にも言えなかった、恐れ。




 影は、

 誰かを傷つけることも、

 世界を壊すこともなかった。




 ただ、

 そこにあった。




「……これが……

 闇……?」




 そのとき。




 世界が、少しずつ変わり始める。




 炎が、

「燃やす力」だけになる。




 水が、

「押し流す力」だけになる。




 土が、

「守る壁」になる。




 風が、

「速さ」だけを求められる。




 役割が、

 “力”に変わった瞬間だった。




 影は、

 その隙間に、溜まっていく。




 誰も見ない。

 誰も触れない。




「……置いていかれた……」




 いつの間にか、

 影は――

 集まっていた。




 恐れ。

 後悔。

 届かなかった願い。




 それらが、

 互いを求めるように、

 一つに重なる。




 ――それが、

 冥界の王の“始まり”だった。






「……だから……

 消えなかったんだ……」




 ハルは、

 はっと目を覚ました。




 夜。




 カードを握ったまま、

 ベッドの上に座っている。




 胸が、

 苦しい。




「……今の……

 夢……?」




「……いいえ……」




 リーフの声は、

 いつもより静かだった。




「……記憶……」




「……私たちの……

 世界の……

 忘れられた部分……」




 ゴウエンが、

 深く息を吐く。




「……王は……

 誰かの悪意じゃねぇ……」




「……世界の……

 “置き去り”だ……」




 ハルは、

 カードを見つめる。




「……だったら……」




「……倒したら……

 また……

 生まれる……?」




 沈黙。




 その問いに、

 答えを出したのは、

 リーフだった。




「……うん……」




「……だから……

 封じるしか……

 ない……」




「……忘れないように……」




 その瞬間。




 カードが、

 かすかに光った。




 それは、

 これまでの合体とは違う。




 強さでも、

 攻撃でもない。




 “思い出す”光だった。




「……火も……」




「……水も……」




「……土も……」




「……風も……」




 ゴウエンが、

 ゆっくりと続ける。




「……元は……

 世界を……

 支える力だった……」




「……神ってのは……

 作るもんじゃねぇ……」




「……戻るもんだ……」




 ハルの胸に、

 小さな確信が生まれる。




「……天界の神は……」




「……冥界の王を……

 倒す存在じゃない……」




「……一緒に……

 封印する存在……」




 その言葉に、

 リーフが、静かにうなずいた。




「……力は……

 消えない……」




「……使い方が……

 問われるだけ……」




 窓の外。




 夜空に、

 星が一つ、瞬いた。




 それは、

 世界がまだ――

 選べることの証だった。




 第3章は、

 ここから始まる。




 敵を知るために。

 世界を、思い出すために。




 ――つづく。

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