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異世界服屋 番外編 ファンタジーキャラ服装解説  作者: 城壁ミラノ


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9/12

新しい婚約者とドレスとジュエリー

 午後の開店。

 お客さんは町の人や冒険者。

 いつも通り穏やかな営業になりそうだ。

 と思っていたら来た!


 貴族の若い男女。

 令息と令嬢だろうか、仲睦まじい様子で。

 これは婚約中のカップルかな!?


「いらっしゃいませ」


 かしこまった声かけと営業スマイル。


 二人揃って、にこやかな顔を返してくれた。

 良い人そうな貴族のカップルだ。



 令息と令嬢の装い

挿絵(By みてみん)

 令嬢のドレスからチェック。

 細かいレース刺繍が全体にあり繊細な華やかさだ。

 肩袖の膨らみ、パフは透きとおるシアーレース。

 レースの美しさがよくわかる広がりのある袖はアンブレラスリーブ。

 カフ (袖口)は花びらのような縁飾りがある。

 ネックライン 、フロント (前立て)にも刺繍がありスカートの左右に開いたフロントスリットにも花びらの縁飾りがある。

 レース刺繍は全て手縫いのようだ。服飾ギルドメンバーの仕立て屋や名のあるお針子でもこれを作るのは大変だろう。

 それだけにこのドレスは高級品だ。令息からのプレゼントだとしたらかなり愛されてるな。まぁ、これは金に目のない服屋の見方であって愛は価格とは関係ないだろうが。

 次はアクサリー。

 イヤリングとネックレスに付いている宝石はレースを引き立てるため控えめだが。

 ティアラは草冠のようでもあり花のようなドレスに似合っている。

 レースでてきた幅広のネックレスはレースチョーカー、レースネックレス。

 ドレスのために作られたアクサリーのようだ。

 このようなアクサリーのセットにも名前がある。


 1、パリュール (Parure) 。

 ネックレス、イヤリング、ブレスレット、ブローチ、リングなど3点以上の同じ素材やデザインで統一されたセット。 フランス語で「一式、揃い」の意味。特に豪華な装いに使われる。


 2、デミ・パリュール (Demi-Parure) 。

 ネックレスとイヤリングまたはブレスレットなど2点が同じデザインで揃えられたシンプルなセット。 デミは半分、パリュールの半分のセットという意味。

 日常用やパリュールほど大仰にしたくない場合に使われる。


 3、トリアージュ (Triage)。ネックレス、ブレスレット、リングなどの3点セット。 パリュールより少ないセットを指す。


 美しいドレスとアクサリーセット。

 説明を省いた簡単な名前はレースドレスまたはエンブロイダリー (刺繍)ドレスとセット (揃い、一式揃い)のアクセサリーだ。


 次は、令息の服装チェック。

 ハイカラーとラペルのあるアビ。令嬢のドレスと同じような花模様の刺繍がある。

 ホワイトシャツ。

 ジャボのヒラヒラはレースのよう。宝石ブローチ。

 ウェストコートとトラウザーズ。

 服は淡い色で統一されている。


 二人の装いはよく似合っている。

 このように色や模様などを二人で合わせた装いはシミラールック、リンクコーデという。

 仲睦まじい証のお揃いコーディネートだ。



「こちらは、ブルタニア侯爵家のご嫡男ハワード様、ご婚約者のソフィア様でございます」


 初老の執事さんが現れて紹介してくれた。


「ありがとう、後は私達でやるから大丈夫だ」


 執事を下がらせたブルタニア様はこちらに向き直った。


「私達のウェディングドレスとスーツを頼めるだろうか」


 やはり貴族のカップルだったか。

 婚約破棄予備軍として警戒する必要があるな。

 しかし、


「ウェディングドレスとスーツでございますね。レンタルからオーダーメイドまで承っております」


 警戒心など、お首にも出さない営業スマイル。


「オーダーメイドで頼みます」

「かしこまりました。こちらへどうぞ」


 奥の応接室へご案内。


 二人に座ってもらって。

 テーブルにドレスとスーツの資料と注文書。

 細かい希望を記すチェックリストを持って。

 まずは名前を再確認記入してと。


 新郎 ハワード•ブルタニア侯爵家


 新婦 ソフィア•リリズ伯爵家



 ソフィア•リリズ伯爵令嬢!?


 さっき! ついさっき!

 マスターのところに婚約破棄の知らせが届いたばかり!

 もう別の貴族と婚約したの!? はや―――!


 驚きを顔に出さないように微笑んでと、


「誠におめでとうございます」


 二人とも無邪気に微笑んでいる。


「ブルタニア侯爵様とリリズ伯爵様に当店をご利用いただきまして大変光栄でございます」


 しかし、言っておかねばなるまい。


「侯爵様と伯爵様のドレスとスーツですと、貴族街の服屋でご注文なさるはずのものですが、生憎あちらの店は諸事情により受け付け中止となっておりまして」

「ああ、頼もうと思ったら受け付け中止していると言われたよ」


 それにしてはブルタニア様は機嫌を損ねてはいないようだ。


「それで、オーナーからこちらの店を紹介してもらいました。自分の店と変わりないクオリティのものを提供してくれると言っていましたよ」


 マスターがお客を紹介してくれたか。

 しっかり応えないとな。


「こちらでも最高にご満足いただけるドレスとスーツをご用意いたします」


 自信と信頼に満ちたスマイル。


「頼みます」

「お願いします」


 二人は安心したようだ。

 しかし、


「ご満足いただくために、ご了承いただく注意事項もございます」


 忘れずに伝えねばならない。


「オーダーメイドですど完成までにお時間をいただきます」


 その間に婚約破棄したりもできるほどの時間がだ。

 オーダーメイドをよく頼むであろう、貴族ならわかっているとは思うが。


「素材や加工や仕立てのご希望によっては期日までの作成が難しいこともございます。その場合、制作前や制作途中で、ご注文の内容を変更していただくよう、お願いすることがございます」


 特殊素材や難しい加工や仕立ては時間がかかる。

 特に王侯貴族は無茶振りしてきて "必ず期日までに完成させろ!" とか命令してくることがあるからな。

 無理しても願いを叶えることで職人のスキルを見せつけ信頼と名誉を得るのもいいが。

 あまりにもわがままを言うなら、マスターを見習って毅然(きぜん)とした態度でお断りもする!

 なるべくなら、後々揉めないよう今の内に穏便に進むように話しあっておきたい。

 果たして、ブルタニア様はどんな貴族だろうか。


「わかりました」


 穏やかに言ってくれた。


「結婚式の日まで余裕を持って来ましたが、それでも作成が難しいようでしたら変更しても構いません。遠慮なく相談してください」


 話のわかる貴族様だった。


「ソフィア、いいか?」

「はい」


 リリズ様も優しく微笑んでくれた。

 人に無理強いする冷酷な性格ではない、人徳が顔に出ているお二人だ。


「ありがとうございます」


 安心して微笑みを返そう。


「こちらといたしましても、出来る限りご希望通りに作成できるよう職人一同全力を傾けてまいります」


 このようなお客さんのためなら。

 勝手に職人を代表して約束しよう。

 みんなも納得してくれるはずだ――


「どうぞまずは、ご希望のままにご注文ください」


 チェックリストを構えて、


「まず、オーダーメイドですが作り方が三種類ありまして」


 1、パターンオーダー

 既に作られている服や型紙 (パターン)を注文者のサイズに調整する。

 一番簡単な方法で価格は安く早くできる。

 デザインを自分好みにしたりはほぼできない。



 2、イージーオーダー

 型紙を使いパターンオーダーより細かくサイズ調整する。

 少し高く少し時間がかかる。

 デザインを自分好みにしたりは少しできる。


 3、フルオーダー

 注文者のサイズに合わせて型紙を作る。最高に体にフィットした服ができるが価格は高く時間がかかる。

 デザインを全て自分好みにできる。



「どれになさいますか?」


 ご注文はウェディングドレスとスーツ。

 人生で一回しか着ないであろうから。

 パターンオーダーでもよさそうだが。


「フルオーダーで頼みます」


 ブルタニア様が即答した。


「人生で一度の大切なドレスとスーツです。サイズからデザインまで全て自分達のためにオーダーしたい」


 その考え方もあるな。


「かしこまりました」


 こちらも即スマイルを返して。


「それではフルオーダーですので、ドレスとスーツのデザインのご希望をお伺いいたします」


 テンションの上がる瞬間だ。

 ブルタニア様が先に身を乗り出した。


「ドレスの色なのだが」

「どのような色をご希望ですか」


 色のサンプルブックがある。

 この中にあればいいんだが。


「私の髪の色と同じ色にしてほしい」


 さっそく特殊注文がきた!

 貴族様らしい、なんというか誇りに満ちた注文だ。

 ブルタニア様の青い髪と同じ色か。


「ソフィアが、初めて見る綺麗な色だと言ってくれたんだ」


 愛おしそうにリリズ様に微笑みかけた。


「だから、この髪の色と同じ色のドレスを着てもらいたい。きっと初めてみる綺麗なドレスになるはずだから。君に着てほしい」


 見つめあって二人の世界に入ってる。

 邪魔しないよう微笑んで見守っていよう。


「ぜひ着たいです。お願いします」


 リリズ様が私に微笑みかけた。


「かしこまりました」


 安心と信頼のスマイルで答える。


「ではまず、こちらのサンプルから色を探してみます」


 似たような色はあるが……


「全く同じのはないようです」

「全く同じ色にしてほしいんたが」


 無茶振りだが応えるのが服屋ユルク◊ドレスアップ!

 正確には加工屋。

 彼らに頼ろう。


「かしこまりました。では、加工師に頼んで髪と同じ色を作成いたします」


 作れることがわかって安心したようだ。

 しかし、作るには必要な対価がある。


「そのための髪のサンプルをいただくのと、特殊注文ということで別途料金が発生いたします。よろしいでしょうか?」

「構わないよ」


 ブルタニア様は即答した。

 自らハサミを求めて、躊躇なく切らせてくれた。

 髪型に影響なく目立たないように必要な分だけ切って容器に入れてと。


「ありがとうございます。色が完成しましたら、お知らせいたしますので一度ご確認ください。ご満足いただければドレスの色に使用いたします」

「頼むよ」


 髪を使う加工は初めてじゃないから大丈夫だろう。

 私も加工屋を信頼している。

 そうなると次は、


「色を付けるドレスの生地ですが、ご希望はございますか。色が綺麗に染まる素材はいくつかありまして」


 サンプルを見せながら説明しよう。

 二人は触ったりしたが、よくわからないようだ。

 髪の色に染めるという特殊さゆえに想像が難しい。

 ブルタニア様が笑って取り繕った。


「一番綺麗に染まる素材で、プロに任せるよ」

「かしこまりました。素材のプロに注文いたします」


 素材屋に選んでもらおう。


「それでは他に、ご希望はございますか?」


 ブルタニア様がまた何かあるようだ。

 控えていた執事を呼び、豪華な木箱を出現させた。

 宝飾品、ジュエリーが入っている。

 星のように輝く大粒の宝石のついた、ティアラ、イヤリング、ネックレス。


 ジュエリーセット

挿絵(By みてみん)

 私のような低い身分ではお目にかかるのも難しい。

 高貴な身分と富の象徴でもあるアクセサリーだ。

 それぞれ神秘的で幸せな意味や効果もある。

 ティアラは星空をあらわしており、星への祈り、神からの祝福、永遠の愛の誓いなど。

 ネックレスの輪は永遠をあらわしており、絆、魔除け、お守りなど。

 イヤリングも魔除け、お守り、魅力を引き出すなど。

 全てが美しいパリュールだ。箱はパリュール・ケースともいう。



「大変美しいですね」


 ヨダレの垂れそうな笑みを見せないように気をつけて。

 心からの称賛と羨望を上品に伝える。


「家宝のジュエリーです」


 ブルタニア様も上品な笑みだが自慢げだ。


「これをドレスを着たソフィアに身に付けてもらうのですが」


 美しいリリズ様なら、お似合いになるだろう。


「光栄ですが、私……」


 リリズ様は顔を曇らせた。

 このジュエリーを付けたくないんだろうか?

 雲行きが怪しい、また婚約破棄の前兆か!?



補足です。


令嬢のお出かけ着をドレスと書くべきかワンピースと書くべきかでよく迷います。

中世の姫や令嬢は出かけるときもドレスを着ていました。

ファンタジーですと

ドレス→エレガント、身分を感じさせる隠さない。

ワンピース→カジュアル、身分を感じさせない隠せる。なんとなくこんな使い分けがされているようで、感覚でどちらにするか決めるのが一番いいようです。


カップルが服装を合わせるシミラールックやリンクコーデですが友人や家族でもするものでペアルックより幅のあるコーディネートで合わせる感じのようです。

アニメや漫画などファンタジーキャラの服装に合わせたりデザインを取り入れたコーディネートもありバウンドコーデといいます。推し活コーデともいうそうです。

ちなみに、ファンタジーキャラが組織や集団で合わせた服装は隊服、団服、協会服、儀礼服、リヴァリー、ギルドウェア、共通装備、揃いの〇〇などがあります。

契約のリヴァリー、光の加護のギルドウェアなど何かしら付け足すとオリジナリティーが出てよいかと思います。


ドレスの価格についてですが中世のドレスの価格は一番高いものは10〜50ポンドくらいで現代価格だと一千万〜一億の間くらい、安いものは二万から千円くらいだそうです。

お姫様の着る最高級のドレスから庶民の着る質素なドレスまでありました。

身分でドレスや服に使っていい金額が決められたりもしていたそうです。

リリズ伯爵令嬢のドレスは貴族なので王族より価格は低いでしょうが一千万くらいはするんでしょうか。

ウェディングドレスとスーツだともっとでしょうか。

ユルクが揉み手で注文を受けたくもなるものです。

中世の価格についてはGIGAZINEというニュースサイトに詳しいまとめがあります。サイト下の検索で「中世 服」で検索すると服について色々出てきてくれるはずです。

ユルク◊ドレスアップでも価格について紹介することもあるかもしれません。


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