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異世界服屋 番外編 ファンタジーキャラ服装解説  作者: 城壁ミラノ


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6/12

対照的な客、似ているズボン

 試着は続く。

 今度は少年貴族が着替えるようだ。


 少し装いを変えた少年貴族

挿絵(By みてみん)

 ブリーチズ (ズボン)とホーズ (靴下)はそのまま。

 太ももが膨らみ膝で絞った半ズボンはニッカーボッカーズというのもある。ジャケットと合わせたスタイルはニッカーボッカースーツ (Knickerbocker Suit)という。普通の半ズボンだとハーフパンツスーツ。

 ブーツから靴になりノブ型ステッキからアニマルステッキになった。

 それだけの変化で軽快でやんちゃに見えてくる。



 試着、それは――ワクワクドキドキであり。

 我が店がお客さんに喜ばれる理由の一つだ。

 魔法の試着室が服装に合う世界を作り出す。

 目的の場で着た感じがわかり服選びの失敗が少ない。

 鎧なら戦場、ドレスなら舞踏会など試着室の中で希望を言うだけで世界を細かく設定できる。

 子供服コーナーはお子様向けに調整してある。

 今は周りにお客も居ないし好きにさせておくか。

 何か二人で話している、仲良しなのが微笑ましい。

 何を買うのだろうか? こちらも楽しみになってきた。


 カウンターに来た! が、手ぶらでスルーして行った。


「また来るよ」


 少年貴族が言って少年従者が一礼した。

 二人はそのまま店を出て行った――

 冷やかしかい。

 残念だが、また来るだろう。

 ほのぼのと楽しみに待っていよう。

 二人にはいつまでも仲良しでいてもらいたい……

 二人で末永く当店を利用してもらうためにも!

 フククククッ



 すっかり日も落ちて外は暗くなった。

 窓から街灯の光が見える。店の光も道を照らす。

 そろそろ閉店だが、客が来た!

 貴族の若い男性。

 いつもこのくらいの時間に来る人だ。

 従者も連れず一人で。

 彼は昼間は屋敷に籠もりっきりで夜に出歩き馬に乗ったりしているという。

 吸血鬼とか幽霊伯爵とか噂されている人だ。

 こうして普通に買い物に来てるが。

 美しい貴族の装いは透けてるとかもない。

 最近、私の店で購入されたものだ。



 幽霊伯爵

挿絵(By みてみん)

 改めて服装チェック。

 銀糸刺繍で装飾された黒い上着。ウエストにくびれがあるのが特徴のこれは乗馬用のライディングコート 。通常のコートより丈が短いのでショートライディングコート、クロップド (切り取られたの意味。短い丈)ライディングコートになる。

 ジャボには黒い宝石。大きな宝石のついたピンをジャボに差し小さい宝石のついた留め具をピンにはめてつけている、ジャボピン (épingle à jabot)という。ブローチとタックピン (ピアスのように差して留める、小さい装飾に向いているピン)でもいい。

 ホワイトシャツ。

 深紅のウエストコート。

 太ももが膨らみ膝で絞ったズボンは昼間の少年貴族が穿いていたブリーチズに似ているが。

 幽霊伯爵が穿いているのは乗馬用のズボン、ジョッパーズ。

 ブリーチズは膝下丈、ジョッパーズは足首丈という違いがある。つまり少年貴族は半ズボン、幽霊伯爵は長ズボンを穿いているのだ。

 どちらも馬だけでなくドラゴンのようなモンスターに乗るときにも穿ける。変わった形状なのでファッションにもいい。

 履き物はロングブーツに見えるが。

 膝下から足首までは黒いカバー、ハーフチャップスを装着している。

 靴は黒いジョッパーブーツ (足首丈の乗馬用のショートブーツ) 。

 ハーフチャップスとジョッパーブーツでロングブーツのように見えている。

 乗馬用のライディングブーツ (ロングブーツ)を履いているときもある。見た目は同じになる。



 ハーフチャップスを取った姿

挿絵(By みてみん)

 ジョッパーズとジョッパーブーツになった。

 乗馬用のズボンと乗馬用のショートブーツでもいい。乗馬をしないなら革靴やエナメル靴などでもいい。


 説明を省いた簡単な名前は装飾された乗馬服。

 乗馬を強調しないならスーツ、スリーピース。

 少年貴族の服と同じドレッシーさを要求する用途でも着れる、見た目で乗馬服とは誰もわかるまい。



「服のセットを……」


 お客さんは幽鬼のような声でいった。


「かしこまりました」


 かしこまった応対と営業スマイル。

 貴族コーナーには私一人で行く。

 お客さんはカウンターで待っている。

 商品を手早く取って戻る。


「いつものコート、ウエストコート、ホワイトシャツ、ジョッパーズでございます」


 お客さんの今着ている服と同じだ。

 いつも同じコーディネート。


「ありがとう……この格好が落ち着くんだ」

「わかります」


 私もいつも同じローブだからな。

 色と縁飾りの模様を変えたりはするが。

 お客さんのも、


「今回はウエストコートの色を濃紺にしました」

「美しい色だ……」


 お客さんは私に色選びを任せて文句もいわない。

 世話は焼けるが手のかからない客だ。

 お金もちゃんと持っているし会計もスムーズ。

 普通にいい客だ、吸血鬼や幽霊でもこうだろうか。


「ありがとうございました」


 音もなく店を後にする姿を見送る。


 お客さんは手ぶらだ。

 商品は収納魔法で消えている。

 入店から退店まで誰にも見られていない。

 今まで一度もだ。誰かが目撃するまで吸血鬼とか幽霊伯爵とか言われ続けるのだろうか。

 私も誰かに "あの人、普通に買い物していくよ" とか言わない。

 ミステリアスさを壊す余計なことのような気がするからだ。

 あのお客さんが本当のところどういった人物なのかは気になるが……

 今度来店した時にでも……やっぱり聞かないでおこう。

 それにしても――

 昼に来た少年貴族と夜に来た幽霊伯爵。

 似たようなズボンを穿いているにもかかわらず。

 陰と陽、光と影といったように対照的だったな。




感想と補足です。


ファンタジーのキャラは太ももが膨んで膝下がタイトなズボンを穿いていることがあり気になったので名前を紹介しました。

ブリーチズは中世で長く穿かれているので色々微妙に違いがあります。その辺りはファンタジーも同じですね。


ちなみに足首まで膨らんでいるズボンはバルーンパンツ、アラビア風キャラのズボンはサリエルパンツやアラジンパンツがあります。


ジョッパーズ (長ズボン)を穿いてライディングブーツ (ロングブーツ)を履くかでAIともめました。

履くよね?と何度聞いても「いいえ履きません。ライディングブーツを履くとジョッパーズの裾がごわつきます」とか履いたことあるのん?と聞きたくなるようなリアルな反論をしてきたり「ジョッパーズとライディングブーツを合わせるのは乗馬服の正しいスタイルではありません」など反論ばかり。

これがAIの反乱か?と恐れながらも考えてファンタジーでは履いてるよね? と聞くと「はい。よく履いてますね! 」とやっと同意してくれました。

どうやら私がジョッパーズとライディングブーツを合わせてるスタイルを見かけたのは中世の貴族ではなくファンタジーのキャラだったようです。

なのでリアルなコーディネートを望む場合はジョッパーズにはハーフチャップスとジョッパーブーツを合わせるのがいいかと思います。

ハーフチャップスも中世にはなく19世紀くらいからつけだしたそうです。ブリーチズに似ているニッカーボッカーズというズボンも19世紀にでてきます。

中世では特に名前もないブリーチズとブーツや靴 (軍服など)が乗馬服で貴族がこだわりだした近代からライディングコートやブーツやジョッパーズやジョッパーブーツなどがでてきます。燕尾服もですね。コートの後ろ裾にスリット (センターベント)があるのが乗馬用です。

ファッションの場合もありますが。


幽霊伯爵の着ているベストより短くウエストにくびれのあるコートは実際にはなくライディングコートやライディングハビット (初めは女性用で現代では男女共通の乗馬コート)や同じようにくびれのあるヴィクトリアンスタイルのコートなどの変形型、ファンタジー仕立て、オーダーメイドとなっております。一番見た目が似ているのはライディングハビットになります。

ライディングジャケットのほうがしっくりくる見た目ですがライディングジャケットはバイクジャケットに使われているのでコートとしています。

短い丈のジャケットの名前はスペンサージャケット、ショートジャケット、クロップドジャケットがあります。

スペンサージャケットは燕尾服の後ろ裾をカットしてなくしたもので貴族のジャケットです。


ジャボピンもあまり見ませんし聞きませんし上記のフランス語で画像検索してもピンの画像は出てきますがジャボにつけた画像はなぜか出てきません。

なので幽霊伯爵の服装は特に中世っぽいファンタジーの服装と着方となっております。

幽霊伯爵が着るに相応しい存在があやふやな服達です。


幽霊伯爵、なんで外にいるの?と気になった方もいらっしゃるでしょうか。雰囲気を伝えるために外の景色を店主が思い浮かべているからです。


幽霊伯爵、服だけで下着と靴下とか買わないの?とも気になった方もいらっしゃるでしょうか。一応書いておくと買っておりますが描写を省きました。ファンタジーでは下着や靴下は見えない場合、描写が省かれるのでそれに習いました。

店員に下着まで用意させる客も気になるところですが、貴族なので従者に全て用意させることに慣れていて店主に用意させるのも自然なことなのでしょう。

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