モフモフはNG、服飾ギルドのペット!
晴れの日が続く穏やかな午前。
今日は店休日。
今からは服飾ギルドの集会だ。
ブルタニア様とリリズ様が無事結婚式を挙げられた報告とドレスとスーツの礼の品を頂いたから持っていこう。
マスターの屋敷に向かい、集会部屋へ。
「みんな、おはよう」
「おはよう」
みんなもう来てる、相変わらず早いな。
スマイルを交わしながら着席。
今日はマスターも問題ないようで。
嬉しいのはそれだけじゃない、みんなに報告しよう。
「みんな、嬉しい報告があるよ。ブルタニア様とリリズ様が無事結婚式を挙げられたって」
「それはよかった」
一同で安堵と祝福のスマイル。
「それで、ドレスとスーツの礼の品を頂いたよ」
転送魔法でテーブルに品を出そう。
大きな包みが三つ。
中身は何かな?
一同で興味津々に身を乗り出して、マスターに代表で開けてもらおう。
「これは……本だな」
何の本だろう?
タイトルは、
「王国法全書?」
全員、えっこれが礼の品? っていう顔になった。
「あ、そうだ、ブルタニア様は司法官様だから」
私の気付きに全員納得したようだ。
「法の本か、結構分厚いな」
素材屋がパラパラとめくった。
あまり、興味はなさそうだ。
「素材屋はあんまり国の法とか興味なさそうだね、素材集めで、あんまり国にもいないし」
「ハハハ、そうだな。正直、この国に法なんてあったんだって感じだ。そりゃあるよな大きな国だし。俺も読んでおかないとな」
「私も読もう。有り難いけど、これはいらないと思っちゃったけど、いるよね」
「ハハハ、いるよな」
「そうだ、有り難く読ませてもらおう」
加工屋が生真面目に本を見据えた。
「そうね、必要な知識よね」
ベアトリスも続いた。
今日は二人とも来てほしいと願ったので来てくれている。
「二人とも、こういう本得意そうだね」
「ふふ、代わりに読んで私達に関係ありそうなページに印をつけておきましょうか?」
「有り難い!」
私と素材屋はベアトリスを女神のように拝んだ。
「助かるよ」
仕立て屋も笑った。
「服飾ギルドや商人ギルドの法は覚えてられるけど、これもか……と思ってたんだ」
うんうんと素材屋と共にうなずく。
服飾ギルドや商人ギルドには色々な法やルールがあり、守らなければ断罪や追放されたり血なまぐさい抗争にまで発展してしまうこともあるからな。
「法は大事だ。この本も服飾ギルドと商人ギルドの本と共に並べておこう」
マスターが本棚に目を向けた。
「そうしましょう」
一同で応じてひとまず本は閉じられた。
「さて、こちらの包みも開けてみるか」
マスターが次の礼の品を手にした。
中身は……綺麗な缶だ。
「これは、お菓子だな」
おおっ、お菓子!と一同に笑顔が広まった。
「美味しそう!」
クッキーとチョコレートの詰め合わせだ。
「これはきっと、ソフィア様からの礼だね」
仕立て屋の予想に間違いないとうなずこう。
「お花みたいなクッキーに宝石みたいなチョコレート、凄く綺麗で美味しそうね」
ベアトリスも嬉しそうだ。
「最後の品は、茶葉だ。これも一緒に頂こうか」
さっそく、給仕さんが皿に取り分け淹れてくれた。
魅入ってしまうような美しいティーセットの完成だ。
「頂きます」
お味は――
「美味しい!」
みんなで笑顔を交わしあう。
「これが、貴族のお茶会ってやつかな?」
「貴族様気分か、いいもんだな」
「貴重な経験だね」
素材屋と仕立て屋と共に、はしゃいでしまうが。
マスターは本当に貴族のごとく所作が優雅だ。
ベアトリスも。フレデリクは静かに食べてるだけかな。
何にしても一仕事終えた喜びを分かち合い、ほのぼのとした時間が共有できてる。この一時が幸せだな。
「みんな、今回のドレスとスーツ作り本当によくやってくれた」
マスターが労いの言葉と笑顔をくれた。
「ドレスとスーツの出来栄えについては、店に来た貴族客からも評判を聞いている。これでまた、我々服飾ギルドの名は上がり腕も上がったと国中に話が広まるだろう」
やった! と喜びと達成感も分かち合う。
服飾ギルドのレベルが段々と高くなっていくのを感じる、この高揚感はたまらないなぁ。
「そして、俺の店のドレス受け付け中止についてだが」
そうだ、その問題がまだあった。
かしこまって聞こう。
「長く心配をかけたが、陛下と王女様に対策を講じてもらい受け付けを再開することになった」
「対策ですか」
「ああ、ユルクの服屋にも適応されるものだ。これから婚約破棄する際は国から調査団が派遣され正当な破棄理由と認められ王から許可がでなければできなくなった。婚約に関わるドレスについても "婚約破棄によるキャンセルはしない" と宣誓書にサインした者のみ予約が許されることになった」
「そうですか、かなり厳しい対策が講じられましたね」
マスターが分けてくれた宣誓書を受け取った。
「貴族のドレスは莫大な費用と制作技術が必要だからな。おいそれとキャンセルさせないためには必要な対策だ」
「そうですね、これで安心してドレスを作って売ることができますね」
みんなとホッと胸を撫で下ろした。
マスターもやっと肩の力が抜けたようだ。
「陛下と王女様には感謝を伝えておいた。そこで、陛下から "貴族達が迷惑をかけた詫びに" と頂戴したものがある」
王族からの詫びの品、どんなものだろう?
マスターは部屋を出ると何かを抱えて戻ってきた。
「金針ネズミというモンスターだ。針が縫い針として使用でき、鋭く滑らかな布通りで使い心地が大変よいのだそうだ」
マスターは一本の金の針も持っている。
金針ネズミから抜けたものだな、美しく鋭い。
「凄いモンスターですね、初めて見ました!」
トゲトゲに気をつけて手に乗せてもらった。
「可愛い!」
「私にも触らせて〜!」
珍しくテンション高いベアトリスにも、トゲトゲに気をつけながら渡そう。
「ああ、可愛い!」
「珍しい生き物だ」
「うん、見たことがないな。こんな高貴さのあるネズミモンスター」
「野生なのかな?」
フレデリクも素材屋も仕立て屋も興味津々だ。
「山や草原に稀に現れる貴重なモンスターとのことだ。先代マスターからも金針のことは伝説として聞き針を見せてもらったことがある」
「へぇ! ますます凄いですね、伝説のモンスター!」
「その針を使って服を縫えるとは光栄なことだ」
マスターはとても嬉しそうだ。
「マスターの服作りに相応しい針ですよ」
仕立て屋の言葉に一同でうなずく。
「ありがとう、そう言ってもらえると早く針を使いたくなるな。お前達も使うといい、自然に針が抜けるのを待ってもらう必要があるが。ここで世話をするからペットとしても可愛がってやってくれ」
「おおっ、服飾ギルドのペット!」
子供のように、みんなと喜びあおう!
「名前は何にします?」
「そうだな……金の針、ゴーニーというのはどうだ? 見たままだが」
「ゴーニー!」
みんなでゴーニーゴーニー呼びかけてみる。
ゴーニーは鼻をクンクンさせながら私達を見回している。
『キュピキュピ!』
「わっ、鳴いた」
可愛い! と場が湧いた。
「ゴーニー!」
『キュピ』
「名前がわかるみたいだ、気に入ったみたいですよ!」
「ははは、ならいいんだが。これからよろしくな、ゴーニー」
ゴーニーはマスターの手の中に戻っていった。
「本当に、トゲトゲしい見た目とは違い可愛いものだな」
「ほんとですね、私もペット欲しいと思っていたんですが猫とか犬とかモフモフのモンスターとかは毛が抜けて服につくから服屋のペットにはNGだと我慢してたんです。ゴーニーなら針は抜けるけど服にはつかないしいいですね」
「ああ、抜けた針が我々の役に立たってくれるしな」
まさに、服飾ギルドにぴったりのモンスターだ。
「服飾ギルドの新しい仲間として大事にしよう」
「はい!」
これからよろしく、ゴーニー!
ゴーニーは服飾ギルドのマスコットキャラが欲しくなり登場してもらいました。
ちょっとデカいハリネズミのモンスターです。




