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異世界服屋ユルク◊ドレスアップ〜スキル【ファッションブック】で定番から最新まで理想のスタイルを叶えます 〜   作者: 鏡野スガタ


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14/15

二つのドレスとアクセサリー

 太陽の光が降り注ぐ晴れ渡った日。

 婚約破棄の知らせも聞かないまま。

 ウェディングドレスとスーツが完成を迎える日となり。

 本試着のためにブルタニア様とリリズ様が我が店にいらっしゃった。

 さっそく、ドレス用の広い試着部屋にご案内。

 仕立て屋が最終確認をしつつ、お二人にドレスとスーツを着せていく。

 何の問題もなくスムーズに身につけることができたようで。

 本番さながらの喜びに部屋は包まれている。

 お二人が並んだ姿は絵に描いたような貴族の新郎新婦だ。

 幸せそうな微笑みを浮かべた仲睦まじい様子が美しい。


「お二人とも、お似合いです!」


 私は思わず興奮して声かけしていた。

 スマイルが止まらない。


「ありがとうございます」


 ブルタニア様もリリズ様も笑顔を返してくれた。

 大変満足そうな様子に、服屋としてホッとする。

 その間にも――

 お二人は飽きずに、お互いの姿を見ている。


「ドレスは私の髪の色そっくりに染まってくれているね。やはりソフィアによく似合うよ。どうかな? 気に入ったかな?」


 ブルタニア様はやはりそこが一番気になるようだ。


「はい、ハワード様の髪のお色そのままに美しくて。似合っていると言っていただけて嬉しいです……!」


 リリズ様は心から幸せそうに微笑まれた。

 お二人は見つめあい、二人の世界に入った。

 微笑んで見守もろう――

 しばし、経ってから、


「着心地はいかがですか?」


 仕立て屋が笑顔で伺った。


「とても良いです」


 お二人共にこれにも満足そうに答えた。


「ウェディングスーツはもっと堅苦しい着心地になるかと思っていましたが、素晴らしい着心地です」

「ウェディングドレスも、ずっと着ていたくなりますわ。素晴らしいです」

「ありがとうございます」


 仕立て屋もホッして満足そうに礼をした。


「お二人にそのような御言葉をいただき、私の仕立て

 たなかでも最高の一着のドレスとスーツとなりました」


 間違いないとうなずいておこう。


 仕立て屋の作る誇り高き最高の一着には色々呼び名がある。

 1、マスターピース (Masterpiece)

 ギルド制度で職人が親方 (マスター)として認められるために作る渾身の一着のこと。その職人の生涯の代表作というニュアンスでも使われる。


 2、ビスポーク (Bespoke)

「Be spoken for (対話しながら作る)」が語源。

 お客との対話を通じてゼロから作り上げられた世界に一着の服を指す最高級の呼び名。


 3、シグネチャーピース (Signature Piece)

 仕立て屋独自のスタイルや美学が最も色濃く出た一着のこと。「これぞ○○の服だ」と言わしめるもの。


 4、マグナムオプス (Magnum Opus)

 傑作、偉大な大作の意味。芸術的な極みに達した一着のこと。


 どれで呼んでもおかしくない。

 お二人のドレスとスーツを改めて見てもわかる。

 仕立て屋の指先の魔術が極まっているのが。

 平らな生地を体の複雑な曲線に合わせミリ単位の調整をして体型のコンプレックスを隠し長所を最大限に引き出している。

 最高なのはスタイルの見せ方とフィット感だけではない。

 お二人の理想の服を端々まで具現化して、それを着ることで魔法が理想の姿に変えたかのように見せている。

 完成された服の与える印象は最高のものだ。

 お二人に完璧に似合っているというのも最高だ。

 服は着なければ布の芸術だが袖を通すとその人の一部となる。

 生地と糸が織りなす美しい芸術のドレスとスーツ。

 袖を通すことで、お二人の美しさの一部となっている。


 この最高の出来を知れば素材屋と加工屋も満足するだろう。

 マスターもみんなを褒めて自慢に思ってくれるだろう。

 おめでとう、みんな!

 私も胸がいっぱいになって泣けてきた!


「素晴らしいドレスに、アクセサリーも着けてくださいませ!」


 マスタージュエラーが進み出てきた。


 そうだった!

 家宝の宝石がついたアクセサリーもあったんだ。

 特にネックレスはリリズ様のために作り変えたからな。

 ちゃんと、お似合いになるか確かめないと。


「さぁ、どうかしら?」


 マスタージュエラーが繊細な手つきで着けていく。


 ティアラもイヤリングもリリズ様を飾った瞬間に輝きを増したようだ。

 ネックレスもだ!

 青いドレスと合わせたレースネックレスに作り変えられ、マスタージュエラーとフィオールさんの渾身の芸術となって。

 家宝の宝石も傷一つなく輝いている。

 リリズ様の首を飾ってみると――


「ぴったりですわね!」


 マスタージュエラーが満足そうに言った。

 間違いないとうなずいておこう。


「美しいよ、ソフィア」


 ブルタニア様も満足と喜びに溢れた笑顔をみせた。


「ありがとうございます、ハワード様」


 リリズ様は涙を浮かべていらっしゃる。


「ありがとうございます、ダイヤローズ様」

「おっほっほ! 素晴らしくお似合いですわよ、ソフィア!」


 マスタージュエラーも満足の高笑いをみせた。


「ますます美しいです、リリズ様」


 私も遠慮なくスマイル。

 マスタージュエラーとも仕立て屋とも喜びの笑顔を交わし、服屋としての充実感が満ちてくる。


「お似合いの二人だよ」

「ええ、本当に」

「この結婚なら間違いないな」

「間違いありませんわ」


 ブルタニア様とリリズ様のご両親も感涙している。

 これなら結婚式も最高のものになるな。

 さぁ、ドレスもスーツもアクセサリーも無事完成した。

 後は――


「ガラスの靴を履いてみてくださいませ」


 製靴マスターが前に進み出た。

 美しいガラスの靴が赤いクッション台に載っている。

 これは、おとぎ話のハッピーエンドのような瞬間が見れるな。

 試着用の靴から履き替えてもらったら。

 ブルタニア様の純白の革靴と共に足元を輝かせるだろう。

 製靴マスターとサブマスター達の最高傑作で。


 アクセサリー、ドレスとスーツ、靴。

 頭のてっぺんからつま先まで。

 全ての傑作を身に着けて完璧なウェディングスタイルとなるのだ。

 さぁ、ガラスの靴が今履かれる――


「お待ち下さい!」


 なんだ!?

 私の声! 店の営業を任せている分身か!


「ここはただいま、ご使用中で立ち入り禁止です!」

「その使用中の者に用があるのよ! どきなさい!」


 若い女性の声もする!?

 扉と目隠しのカーテンを突き破るように入ってきた!

 分身は必死で押し返そうとしたようだが、叶わなかったようだ。

 大抵の客には押し負けない我が分身が負けるなんて。

 ただ者じゃない要注意客が乱入してきたな――!


「お客様、困ります! 」


 私も押し返すべく動かねば。

 乱入してきたお客はドレスを着た非力そうな貴族令嬢のようだ。

 しかし、気の強さがありありと伺える。


「また同じ店員!? 邪魔しないで、どきなさい!」


 見た目通り強気な命令が飛んできた。


「いいえ、どくことはできません」


 相手は貴族令嬢のようだが。

 ここは迷惑客と割り切って強気で対応しよう。


「こちらの試着部屋は現在、お客様がご使用中です」


 私の再びの説明を聞いて。

 乱入者してきた女性のキツイ目つきが、主役のお二人に向けられた。


「やっぱり、ソフィアとハワード様!」


 お二人の知り合いか。


「マデリカ様……!」


 リリズ様が困惑して声をかけた。

 いや、困惑を超えた何かが表情にある。

 ただならぬ感じがするが……ん?

 アビを着た若い貴族のような男性も入ってきてしまった。

 こちらもキツイ感じのする美男だ……ますます嫌な予感がしてきた。

 その時、


「ミリオ様!」


 リリズ様が悲鳴のような声をあげた。

 表情は驚きと恐怖のようなものに満ちている。

 ブルタニア様の表情は恐ろしく険しいものになっている。

 ミリオといえば――

 リリズ様と婚約破棄したミリオ•フレグリス伯爵!?

 元婚約者か!

 口悪いんだったな。顔に出ているよ。

 そして同じくキツイ顔をしてリリズ様を睨んでいる隣のマデリカという女性は誰だ?


「あらあら、ソフィアの元婚約者、フレグリス伯爵と新しい婚約者のマデリカ•ルシル伯爵令嬢じゃない」


 マスタージュエラーが教えてくれた。

 さすが、公爵令嬢だけあって詳しいようだ。


「なんの御用なの? お二人のウェディング姿を見物に来たのかしら?」


 マスタージュエラーは多少のんきな問いかけをした。

 ルシル様もそう思ったのか。

 確かに見物しているようにリリズ様のドレス姿とブルタニア様のスーツ姿に釘付けになっていた瞳をハッと見開き、キッと目つきをさらにキツくしてマスタージュエラーを睨んだ。


「見物なんてしたくないですわ! 」


 ルシル様はリリズ様まで睨んだ。


「どうして、ソフィアが私より先にウェディングドレスを着てるのよ!?」


 どうしてと言われても。

 誰も答えられず戸惑っている。


「私と結婚するからだ」


 ブルタニア様が答えてくれた。


「どうしてですの? ハワード様」


 ルシル様の声と表情が一気に弱々しくなった。

 キツイ令嬢からまるで別人のような、か弱い令嬢といった様変わりだ。


「どうして、ソフィアと結婚なさるの? ご存知ないのですか? 騙されているのですか?」


 騙されているとは?

 不穏な問いかけに誰もが戸惑っている。


「ソフィアの首には醜い痣があるのですよ?」


 そのことか。

 新しいネックレスで綺麗に隠している痣。

 幸い、ここにいるのは事情をご存知の方々とお客に対応する仕事人だけで場を乱す驚きや動揺のようなものはない。

 試着中の乱入でよかった。

 これが結婚式の会場だったら、せっかくネックレスで隠していたのにバラされて気にされて騒ぎになって台無しだったかもな。

 本当に迷惑な乱入者だ。


「その痣は醜いだけでなく呪われていますわ! 結婚すると不幸になられてしまいますわよ!」


 ルシル様は預言者か魔女のように叫んだ。

 呪われてるなんて初耳だが?

 みんなも初耳のようで困惑している。


「そうだ、呪われた女め」


 フレグリス様だけが同意した。


「ソフィア、婚約破棄して俺を不幸にしただけでは足りないのか?」


 口悪いだけあって意地悪な言い方だ。


 しかし、リリズ様のほうから婚約破棄したのか?

 ま、さっさと他の令嬢と婚約してる伯爵だし別にいいか。


「あらあら、フレグリス伯爵から婚約破棄したのではなくて?」


 マスタージュエラーが訂正した。

 そして私に顔を寄せてきた。


「マデリカが婚約破棄するようフレグリス伯爵をそそのかして、ソフィアから奪ったという噂よ」


 小さな声で付け足した。

 なるほどと仕立て屋と製靴マスターと共にうなずいておこう。


「それが今さら、どうなさったの?」


 マスタージュエラーは首をかしげた。

 私も仕立て屋と製靴マスターと共にかしげておこう。


「ソフィアのドレス姿を食い入るように見たりして、手放したのが惜しくなったのかしら?」


 確かに、ここまでやって来てネチネチ言ってくるんだからな。

 図星を突かれたようでフレグリス様はギクリとした。


「なんですって?」


 ルシル様が敏感に反応してキツイ目をフレグリス様に向けた。


「ミリオ様、それは本当ですの? ひどいですわ! それなら私も――」


 なんだ?

 ルシル様はまた、か弱い目つきになって。

 ブルタニア様に向けた。


「ハワード様、お聞きになりましたか? ミリオ様は、ひどい方で今さらソフィアと……私には、こんな小さな宝石のアクセサリーしかくださらないし」


 美男だが口悪い上にケチな伯爵なのか。

 せっかく婚約破棄させてまで奪った男なのに残念だったな。


「私には、ソフィアの着ているドレスとアクセサリーが似合うと思いますの。首に痣もなく綺麗な体をしていますし」


 見せつけるように前かがみになった。

 遠慮なく服装チェックさせてもらうか――


 乱入令嬢の服装

挿絵(By みてみん)

 キツイ令嬢の一部になっているためかドレスのピンクもドギツイ色にみえる。

 綺麗な体をよくみせるためかデコルテがギリギリまで剥き出しのオフショルダー (オフショル)。

 胸元のリボンとパフスリーブが可愛さを象徴している。

 ハイウエストは体のラインを強調している。フィットやタイトではなくキツめのウエストラインになっている。このように体が服やコルセットに締めつけられた状態で、今のルシル様のように興奮すると呼吸困難になり気絶の危険もある。だが、ルシル様なら気絶も男性を誘う武器にしそうだな。

 そんな女性にはとても見えないようにしている可愛らしいフロントカットのドレープオーバースカート。

 フリルオーバースカート、セカンドスカート (ニ枚目のスカート)ともいう。アンダースカート。

 ピンクの二色使いとフリルで究極の可愛さをアピールするレイヤードスカートだ。

 説明を省いた簡単な名前はオフショルダードレープフリルレイヤードドレスだ。


 アクセサリーのイヤリングとペンダントの宝石は確かに小さい。ルシル様の心情を現すように物足りなさが際立っている。


 しかし、このような派手でどこか誘惑的なドレスを着て。

 この状況で自分を売り込むとはどこまでも強気だ。

 服屋として商人としては見習いたいが。

 今回は今さら売り込んでも遅かったようだ。

 確かに痣もなく綺麗な体のようだが――

 冷ややかな目でブルタニア様は見ている。


「君に、私がソフィアのために用意したドレスもアクセサリーも身に着けさせるわけにはいかない」


 断言したお言葉に。

 ルシル様はショックを受けたようだ。

 追い打ちをかけるようだが私も言わせてもらおう。


「こちらのドレスは、ソフィア•リリズ様のためのフルオーダーメイドとなっておりますので。ルシル様が着ることはできません」


 私の断言にもショックを受けたようだ。


「アクセサリーもですわ。特にネックレスはソフィアのために作り変えたからマデリカは着けられませんわよ」


 マスタージュエラーの断言にもショックを。


「こちらのガラスの靴もです」


 製靴マスターの断言にも。


「な、なによ、みんなして私を不幸にするの!?」


 ルシル様は泣きそうな顔になったが。


「やっぱり、あなたのせいよ! ソフィア! 痣の呪いで私を不幸にしてるのね!」


 指を突きつけて断言した。


「そんなこと、私はしていません!」


 リリズ様は怯えて振るえる手で首をおさえている。

 呪いなんて、そんなわけないと思うが。

 みんなも、そう思っていそうだし。


「そんなわけないだろう」


 ブルタニア様が断言してくれた。


「ソフィアの痣をこれ以上悪く言うなら、侮辱傷害罪で裁くことになるぞ」


 おおっ、それがあった!


「ぶじょくしょうがいざい? 何、それ!?」


 ルシル様がよくわからないまま雰囲気に怯えはじめた。


「この国の新しい法だ。たとえ、貴族であれ知り合いであれ誰であれ無礼な口の聞き方は慎んでいただくための」


 ブルタニア様の冷徹な目はルシル様からフレグリス様にも向けられた。


 口悪いフレグリス様は一言も言い返せないようだ。

 下手に喋って厳罰に処されたら困るもんな。

 ルシル様も自分もヤバいかもと思っているのか口を開けなくなったようだ。


「さぁ、ソフィアを傷つける侮辱以外言うことが無いなら出ていってくれ」


 ブルタニア様の命令がくだった。

 私も分身と共に動こう。


「さぁ、退店ください」


 迷惑客は店の外まで出さないと。


「触らないで! 出ていくわよ、こんな狭くて小汚い店!」


 ルシル様は不満をぶつけるように叫んで出て行った。


「こんな店、潰れてしまえ!」


 フレグリス様まで叫んで後を追った。


 ひどい! 二人とも我が店への侮辱傷害罪だ!


「すまない、二人の無礼を許してください」


 ブルタニア様――


「あの二人のことは私が責任を持ちます。この店にもこれ以上迷惑はかけません」

「はい」


 信頼の返事とスマイルを返そう。

 ブルタニア様は執事さんと外に出ると、二人がちゃんと馬車に乗り逃げ去ったのを見届けた。

 やれやれ、一安心だな。

 私も店を分身に任せて戻ろう。



「皆さんも、お騒がせいたしました。もう心配ありません」


 ブルタニア様の力強さに安堵の空気が流れた。


「おっほっほ! ソフィアの美しさとハワード様の愛の深さの前に恐れをなして逃げて行ってしまったようね!」


 マスタージュエラーが高笑いした。


「間違いありません、お二人の美しい愛の勝利です!」


 製靴マスターも嬉しそうに飛び跳ねた。

 私も仕立て屋と共に間違いないと笑顔でうなずいておこう。

 ご両親も再び感涙していらっしゃる。


「ソフィア、驚かせたな。もう心配ない」

「ありがとうございます、ハワード様」


 お二人はそっと抱き合われた。

 感動で私も再び泣きそうになってしまうが。

 服屋として安心して仕事に戻ろう。


「ブルタニア様、リリズ様、改めましておめでとうございます。引き続き、ご試着のほうを進めてまいりましょう」


 さぁ、邪魔者も居なくなったことだし。

 リリズ様にはハッピーエンドに向かうために。

 ガラスの靴を履いてもらってと。

 完成した姿を服装チェックさせてもらおう――


 新婦の服装

挿絵(By みてみん)

 格式高く美しい貴族のウェイティングドレス。

 ブルタニア様の髪色と同じ深みのある青色。

 繊細で複雑な模様の金糸刺繍はドレス全体の美しさを際立たせている。

 デコルテを綺麗にみせるスクエアネックの胸元。

 パフの肩に手首までのタイトな袖は豪華さ可愛らしさ気品までをあらわしている。

 タイトなハイウエストラインは体の線を美しくみせている。

 フロントスリットの開いたドレープオーバースカート。

 金糸刺繍のトリム (縁飾り)が太陽の光をうけた波間の輝きのようなセカンドスカート。

 縦波のドレープと金糸の織り模様がドレスの足元にまで豪華さと美しさをみせているアンダースカート。

 深い青と輝く金の重なるレイヤードスカートだ。

 円を描くように床に広がる裾はトレーンという。美しさ豪華さ豊かさの象徴だ。裾の縁飾りはデコラティブヘム (装飾的な裾)ともいう。


 ドレスの着方は2パターンある。


 1、重ね着。アンダードレス (下着)、アンダースカート 、パニエ、チュール、コルセット、ガウン (一番上のオーバースカートはこのガウンのスカート部分になっていることがある)などを着てドレスの形にしていく。

 この方法のドレスアップは留め具が沢山あるが見た目でわからないように配慮して作られている。共布(くるみ)ボタン (服と同色のボタン)など。リボンなど装飾になっていることもある。


 2、完成されたドレスを着る。アンダードレスを着て形ができているドレスを着る。留め具は背中か胸か脇にある。ドレスの形状によって違うが留め具の数は1より少なく済む。1より簡単に着れるがドレスパーツが一つになっているぶん重かったりするので一人で着るのは大変だろう。

 どちらにしろ人の手で着ていくより魔法で着たいところだ。我が店のドレスは魔法に対応しているし、魔法で着るのが叶う結婚式場もある。

 着方はどうあれ花嫁を美しく祝福するアイテムだ。

 説明を省いた簡単な名前はウェディングドレス。


 アクセサリーのティアラ、イヤリング。

 家宝の大きな宝石は言うまでもなく、宝石を連ねるジョイント (繋ぎ部品)の貴金属まで繊細な技で美しい装飾となっている。

 新しくなったネックレスは繊細なレースに見事に大きな宝石が付けられて世界に一点のネックレスに生まれ変わっている。

 ドレスとセットとなり輝きを放っている。

 説明を省いた簡単な名前はウェディングアクセサリー、ウェディングジュエリー。


 残念ながら見えないがガラスの靴もぴったりだ。


「素晴らしく美しく、お幸せそうな、お姿です」


 本日の主役はやはりウェディングドレスを着てアクセサリーを身に着けたリリズ様だな。

 彼女の選んだ純白のアビを着て隣に立つブルタニア様も凛々しく美しい新郎だ。

 こうして目にした後に思い返すと――

 ルシル様とフレグリス様はまさに舞台袖からの乱入者だったな。

 退場してくれてよかった。

 二度と現れないことを願いつつ舞台を結婚式場に移したいものだ。

 しかし、


「本試着は無事終了となります」


 私の役目もこれで終了。

 後は細々したアフターサービスだけ。

 結婚式場にはいけない。

 最高のスマイルで見送ろう。


「あなたの店にしてよかったです」


 ブルタニア様が断言してくれた。

 私の店にしてよかったか。そう思ってもらえて店を開いて、いや、生きててよかったとさえ思える。


「本当にありがとうございました」


 リリズ様も微笑んでくれた。


「お二人の門出となる身支度のお手伝いができまして、身に余る光栄でした」


 心からの満足をスマイルにのせよう。


「素晴らしい結婚式になることを心からお祈りしております」


 仕立て屋と製靴マスターと共にお辞儀。


「皆さん、ありがとうございます」


 ブルタニア侯爵家とリリズ伯爵家が声をかけてくださった。

 両家の満足いく結び付きの品を提供できたな。

 よかった、よかった!


「おっほっほ! 素晴らしい仕事でしたわよ、皆さん! 私も婚約したら、あなた達にドレスと靴を頼もうかしら!?」


 マスタージュエラーの高笑いも響いた。

 彼女は宝石と婚約しそうだが。

 なにはともあれ、無事に円満な婚約からの結婚となりそうだ。

 服屋として誇らしい素晴らしい仕事だったな。

補足と感想です。


ドレスとアクセサリー対決を見せるためと文字数の関係でスーツの紹介は省きました。ご了承ください。

貴族男性のスーツは何度も紹介しており解説が重複もしますので、これからも簡単な紹介になるかと思います。


「服は着なければ布の芸術だが袖を通すとその人の一部となる」という文は最初は「服は着なければただの布だが袖を通すとその人の彫刻となる」となっていました。

クリストバル・バレンシアガの言葉「クチュリエ (仕立て屋)は、設計に関しては建築家であり、形に関しては彫刻家でなければならない」

サヴィル・ロウの職人たちの格言「良いスーツは着る人の欠点を隠し長所を彫り出す」

これら名言格言をAIがAI流にアレンジして教えてくれた文が「着なければただの布だが袖を通すとその人の彫刻となる」で、私がさらに自分流にアレンジしてみたのが本文の言葉です。

AIが名言っぽい言葉まで作れるとは衝撃でしたが服屋らしさが出せたので助かりました。


貴族のドレスはスカートが何重にも重なっていて描写が大変ですね。

簡単な名前にしてもドレープフリルレイヤードと長いですよね。

ですが、現代の服でもアシメイレヘムスカートみたいな長い名前のもありますので許容範囲かなと思います。

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