宝飾ギルド
さて、次はアクセサリーだ。
宝飾ギルドに頼むために出かけよう。
貴族街に行かねば――
大きな宝飾品店についた。
宝飾ギルドマスターの店だ。
私のような庶民は挙動不審になってしまうゴージャスな店構え……
「おっほほほ!」
ゴージャスな高笑いが聞こえてきた!
「あら、いらっしゃいませ。ユルク◊ドレスアップ!」
出迎えてくれたのは、宝飾ギルドマスター。
店にお似合いの美しい装いだ。
宝飾ギルドマスターの装い
お姫様のようなドレスとアクセサリーだ。
豪華なティアラは宝飾ギルドマスターの証。
ティアラとセットのイヤリング。
ドレスはリボンとフリルで飾られている。ピンクにさらに可愛さを添えるような小さな花模様は小花柄、プチフラワー (プチフルール)、ディッツィー柄 (小さな模様のこと)ともいう。
デコルテをみせネックレスが映えるオフショルダー。
ネックレスも豪華だ。宝石でかっ!
レースネックレスとジュエリーネックレスの二つ。
このように幾重にも連なっていたり重ね付けするネックレスはレイヤードネックレス、ネックスタック、ネックパーティー、じゃら付け (じゃらじゃら音がするほど付けてるの略)などという。
豪華な指輪もいくつもはめている。
1、サムリング (親指)
2、インデックスリング (人差し指)
3、ミドルフィンガーリング (中指)
4、アニバーサリーリング (薬指)
5、ピンキーリング (小指)
それぞれに神秘的な意味や効果があったりする。
複数の指にはめることはマルチフィンガーリング スタイルという。
ウエストにも豪華なブローチ。ブローチはどこに付けてもいいが珍しいところに付けているだけに目立っている。
説明を省いた簡単な名前は仕事用ドレス、執務ドレス、ワークドレス。
「いつもながら、豪華な美しさですね」
彼女は公爵家のご令嬢でもある。
名はダイヤローズ•キングストン
この店はキングストン家の手掛ける事業の一つだ。
宝飾品に囲まれて育ってきた彼女はいつしか宝石とアクセサリーを愛し店のオーナー兼宝飾ギルドマスターになったという。
彼女のような宝飾品の専門家はジュエラーともいう。
敬愛を込めて人々は彼女をマスタージュエラーと呼んでいる。
「マスタージュエラー、ごきげんよう。お世話になっております」
貴族っぽい声かけと営業スマイル。
「ごきげんよう、今日はお買い物? 仕事の依頼?」
この問いかけに「お買い物です。オススメあります? フックク 」とか返せる人になりたいなぁ。
今は現実に向き合ってと、
「仕事の依頼です。アクセサリーの加工をお願いします」
「喜んで承りますわ。話は奥で聞きましょう、どうぞ!」
我が店とは比べ物にならない豪華な応接室に案内された。
ソファーに腰掛けよう。
「いつもながら座り心地最高ですねっ」
「おっほほっ」
お茶が出てきた。
「高級な香りと美味しさっ」
「おっほほっ」
興奮をおさえて、お上品に頂いてと――
「さて、依頼はブルタニア侯爵家とリリズ伯爵家の、ウェディングドレスとスーツね」
ジュエリーマスターは注文書を確認しはじめた。
私も仕事モードに戻り真剣な眼差しで見守ろう。
「そういえば、あなたのとこのマスターはドレスの受け付けを中止したそうね」
「はい。貴族の間で婚約破棄が続き、それと同時に注文のドレスのキャンセルも続いて、ついにマスターが怒りだしてしまいまして」
「おっほほほ!」
「な!?」
深刻な話をしているのに高笑いされた!
「彼は平民から努力で泥臭く成り上がった身ですものね。上から人を使うだけの貴族のわがままについに耐えきれなくなったようね!」
同じ貴族であるマスタージュエラーに敵意の眼差しと冷笑を僅かに向けてマスターの味方をしておこう。
泥臭く足掻く私らと綺麗なままでいられる貴族様はわかりあえんのだよ。
「まぁっ、そんな顔しないでくださる!?」
マスタージュエラーは動揺をみせた。
「その目と笑み、怖いですわっ冷たいですわ!」
バレてしまったか。
服屋としては失態だが個人的には本望だ。
「怒らないでくださいな、ユルク◊ドレスアップ! 貴族のわがままに振り回されて怒る気持ちはギルドマスターとしてわかりますわ。それに、私も貴族としてわがままはほどほどにしないといけませんわよね」
貴族を代表するような威厳のある言葉と笑み。
はっちゃけ気味でもギルドマスターだけある。
ちゃんと、わかってくれている人なんだ。
敵意を消したいつものスマイルと態度に戻ろう。
「おわかりいただけて助かります」
「おっほほ! 安心さなって、アクセサリーのことは私達に任せなさい」
「はい! 注文内容はネックレスの加工でして」
注文までの経緯を詳しく伝えよう。
「あら、ハワード様は司法官という職業柄、お固い考えの方かと思ったら、愛する方のためには柔軟になれるようね」
マスタージュエラーは公爵令嬢だから、お二人のことに詳しいようだ。
「はい、リリズ様のために侮辱傷害罪という法律も新たに作るそうです」
「ソフィアは気が弱くて平和主義だから言い返せなくて言われたい放題なのよね」
「悪口言う人はこれからは罰せられるようです」
「私には関係のない罰ね! おっほほ!」
ギリギリ危なそうにもギリギリ大丈夫そうにも思える人だ。大丈夫なほうを信じてうなずいておこう。
「それで、ソフィアのために作り変えるネックレスはと」
「家宝の宝石がついたものです。これをレースネックレスに作り変えをお願いします」
レプリカを魔法で出して見せよう。
「家宝の宝石を扱う加工ね」
マスタージュエラーはそこに注目して。
獲物を狙うように見開いた瞳をキラリと光らせた。
「国宝の宝石でもお任せあれですわ! おっほほ!」
この人になら任せられる、いや、この人にしか任せられない。そう思わせる高笑いだ。
「よろしくお願いいたします」
「それじゃ、さっそく工房に行きましょう」
マスタージュエラーについて行こう。
店の賑やかな空間と打って変わって、工房は静かな空間だ。
職人達がテーブルを囲んで作業したり話たりする音だけが崇高な響きのように聞こえてくる。
高笑いなんかしたら怒られそうな場所だが――
「おっほほ! 皆さん、新しい依頼が入りましたわよ」
マスタージュエラーは堂々と注文書を掲げた。
私は毎度焦るが職人達は毎度のことに慣れた様子だ。集中を切れさせる高笑いにキレることもなく目を向けてきた。
「どれどれ」
「マスタージュエラーが高笑いするほどの依頼か」
高笑いは注文内容のレベルを教えるらしい。
「家宝の宝石に配慮した加工ですか」
「プレッシャーのかかる仕事だな」
職人達に緊張が走っている。
「私が加工しますわ。サポートをお願いします」
マスタージュエラーが担当するのか。
彼女は幼い頃から工房で道具を使いオリジナルアクセサリーを作ってきたという。
高笑いしながら指示出しするだけではない立派な職人なのだ。
「サポートなら、フィオールがいいのでは?」
「ああ、フィオールはマスタージュエラーからも技術を教えてもらいたいと言っています。見せてやってください」
「フィオールはどの工程も飲み込みが早くて上手い、サポートの腕も充分ありますよ」
職人満場一致で推してきた。
宝飾品作りには色々な工程があり職人がいる。
1、金細工師、宝飾師→職人の総称。
2、宝石彫刻師、研磨師→宝石加工の職人。
3、彫刻師→金属加工の職人。
4、細工師→素材を問わない加工の職人。
どれか一つに特化していたり幅広くできたりする。
フィオールさんはオールラウンダーらしい。
「それでは、フィオールに頼みましょう」
マスタージュエラーも乗り気なようだ。
「彼は自分の作業部屋にいますよ」
大きな作業部屋を出て個別の作業部屋へ。
扉はない半オープンスペースだ。
作業している職人が見えてきた。
フィオールさんだ。
エルフ族の青年で人間の技術を学ぶために宝飾ギルドに加入し職人として働いているという。
故郷を離れて見知らぬ地で一生懸命に。
店を開く前の自分と重なって応援したくなるなぁ。
今も真剣な様子で作業中だ。
金細工師の服装
邪魔しないようにそっと服装チェック。
マスタージュエラーの仕事服とは真逆の印象だ。
チュニックの袖を腕まくりしている。左腕には袖を留めるためのアームベルト (アームバンド)。
金細工師は金属を加工するので腕力が必要だ。エルフは細く儚いイメージがあるがフィオールさんは職人のたくましい腕をしている。
彼も指輪をいくつもはめているが、こちらは試作品のようだ。
テーブルにも制作中のアクセサリーや道具 (ツール)がある。
アクセサリーのリング状の部品コネクターやワイヤー (線材)、金細工師の使う道具はペンチやハンマーなどの力のいる作業用、芯金棒やタガネなどの針のように繊細な作業用など色々ある。
窓辺にある焚き火は金属を溶かすためだろうか、エルフ独特のやり方かもしれない。
革製のエプロン (レザーエプロン)は頑丈で防火防水性があるので職人の作業にもってこいのエプロンだ。
腰のポケットにも道具が沢山入っている。
首に掛けてあるメガネのようなものはルーペ (拡大鏡、マグネファイングラス) ネックルーペ、もっとオシャレなデザインのものはペンダントルーペともいう。
説明を省いた簡単な名前は作業着、仕事着 (作業服、仕事服)、ワークウェア。
「フィオール、いいかしら?」
マスタージュエラーは高笑いせずに聞いた。
職人は自分の作業部屋では特に集中力のいることをしている。
誰であろうと静かにする場所だ。
フィオールも静かに作業を中断した。
「マスタージュエラー、ユルクさん、ごきげんよう」
落ち着きのある優しい声と笑顔で挨拶してくれた。
「ごきげんよう」
私も労いを込めた挨拶と営業スマイルを返そう。
「家宝の宝石が付いたネックレスの加工の依頼がきましたわ。私が担当しますのでサポートをお願いできるかしら?」
マスタージュエラーの堂々とした願いと掲げた注文書。
「家宝の宝石を扱う、失敗の許されない作業ですね」
フィオールも真剣な顔つきに戻ってうなずいた。
「ぜひ、やらせてください」
冷静さの中に自信が見える笑みだ。
彼に任せたくなる、いや、任せよう!
「任せましたわ、フィオール」
マスタージュエラーも笑みを返した。
「マスタージュエラー、フィオールさん、よろしくお願いします」
私も安心と信頼のスマイルを捧げておこう。
「後は、お任せなさい」
「はい!」
ブルタニア様とリリズ様もこれで安心だろう。
今後はマスタージュエラーから連絡がいきやり取りするだろうが、私からも加工作業がはじまると伝えておこう。
一仕事終えて、マスタージュエラーの店を後にして。
次は靴の依頼だ。
このまま貴族街を歩いて製靴ギルドマスターの店に行こう。
補足です。
ファンタジーでは色々な職業のキャラがドレスで仕事していますね。
そんなドレスを簡単にどう表現すべきか迷うところですが、ワークドレスのようにワークウェアのウェアの部分、執務服の服の部分、戦闘服→戦闘ドレス、バトルスーツ→バトルドレスというように既存の名前の服やスーツやローブの部分をドレスに書き換えるのが一番簡単でわかりやすいようです。語呂の良さが重要ですので悪いようでしたら少し難易度が上がりますがオリジナルの名前を付けるのがいいかと思います。
金細工師や職人は私服のこともあります。
絵画の中世の金細工師は私服っぽい豪華めな服装でテーブルを囲んで楽しそうに作業していたりします。
道具の紹介が簡単なものになっています。服屋ですのでご了承ください。
職人の服も革製エプロンが定番ですので紹介が度重なることがあります。




