Prologue
私はかつて、殺し屋だった。
過度の虐待を小さい頃から受けた私は、耐えきれなくなって、勢いで、両親を包丁で刺し殺した。……もう、戻れない。私は悟った。人を殺めた。もう、みんなの元に行くことは出来ない。みんなみたいな白く、儚く、綺麗な世界には、もう戻ることは許されない。……だから、私は殺し屋になることを決めた。
皮肉なことにも、私には殺し屋の才能があった。最初は、簡単に捕まって殺される。そう思っていたのに、私より強い者が、少なかった。素早さも、なにもできない。脆い、脆い、儚いターゲット。彼らの血を見る度、私はまだ完成していないそのパレッドを、破いてしまったのだろう。そう思う。……皮肉だよな。殺したのは自分なのに、悲しくなるんだ。
人を殺めるのは簡単なのに、自分を殺めるのは難しい。皮肉なことに、自分への愛情は残ってしまう。死にたくないと思ってしまう。未完成のパレッドを、完成させたいと思ってしまう。……もう、真っ黒で、何も映すことは無いというのに。
苦しい、苦しい。辞めたい、でも、もう戻れない。
善を殺めた。悪を殺めた。どっちにも味方など居ない。孤独で、寂しくて。……でも、死にたくなくて。
必死に、悶えて、もがいて、苦しみ続ける。
……だれか、私を救ってはくれないか。
……そんな、意味もない願いを胸に、私は路地裏の血がしみた鉄塊から飛び降りる。
「……もう、戻れない。」
真っ黒に染ってしまった私の心には、もうなんの"色"
も着くことがない……あぁ、悲しいな。
「面倒だな、感情なんて。」
いっそ、感情なんて無くなれば。
表情はもう、手遅れなのに。無慈悲に感情は残ってしまうのだから、もどかしい。
「……人でなしであればあるほど、感情があるなんて、皮肉な話だよね。」
……この暗闇から、誰か救って。




