遭遇 4
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「・・分かった」
姫様が頷いた。
「手間を取らせてしまったようですまぬ」
これでイベント?も終わりか、と安堵しかけた時だった。
「我らの教義には 『ゲラーデンとは必要以上に関わるべからず』、とあってな」
彼女は私が向かう東方向を指差して続けた。
「この先で其方が魔獣に襲われるのを目にしても助けに戻る事はないぞ」
「いえ、御声掛け下さっただけで有難いことです」
畏まったまま応える私。
「しかし其方は不思議よの」
首を傾げて姫様が呟いた。
「身に着ける装備は悪くないが、"魔獣狩り"の者達程仰々しくはない。
彼等の様に獲物との闘いに逸る狩人のような闘気も纏っておらぬ。
それなのに彼の者達よりも武の遥か高みにいるかのように感じるのだ」
「いえ、決してそのようなことは・・」
私は慌てて否定しようとした。
「殿下の買い被りかと」
実際まだレベルは一桁に留まっている訳であるし。
「謙遜せずともよい」
微笑を浮かべたままマルグリッドが言った。
「私はこれで"戦姫"などと呼ばれていてな。 人の武を測る事が出来るのよ」
「・・・・・」
私は言葉に詰まった。
そう言えば箆棒に腕の立つNPCのヒロインが話題になっていたものだ。
輝くような美貌と皇女という身分からして目の前の彼女に違いあるまい。
( これは面倒な事になったかもしれない )
「まあ "自分より強いか否か" を感じ取れる、というに過ぎぬがな」
どうやら戦闘力を数値化して観る事が出来る訳では無いようだ。
「此処にいる四人は我が帝国の最精鋭と言って良い者達だが・・」
マルグリッドは付き従う近衛騎士達を示してみせた。
( やはり私の見立ては正しかったようだ )
「私と彼等の総掛かりでも其方に敵うように思えんのだ」
「殿下! どうかご勘弁を!」
地に額が着く程に頭を下げて私は言った。
この姫様は全く何てことを口にしてくれるのやら。
プライドを傷つけられた騎士達が激昂して挑んで来たりしたら如何する。
しかし四騎の近衛騎士達は表情も変えず無言のままだった。
隊列を保ち整然と控えている。 簡単に傷付く安いプライドなど持たぬのか。
無用な戦闘で護衛対象のリスクを上げる事など絶対の禁忌なのだろう。
"最精鋭" という言葉に嘘は無いようだ。
「・・これまでも強力なゲラーデンは目にして来た」
穏やかな声でマルグリッドが言う。
「だが我等より劣る装備でこのように感じるのは其方が初めてだ」
「恐れ多きことで御座います」
私は只管頭を低くして答えた。
「そしてゲラーデンには稀な求道者の如きその謙虚さ」
無礼なプレイヤーに遭われた事があるのかも知れない。
私にはこれまでNPCは此方と同等の人間と感じられて来た。
人としての敬意を払うのは寧ろ当然の事だと思える。
「勿体無き御言葉」
私は再度お辞儀して礼を述べた。
どうやら悪い流れにはならないで済みそうだ。
「ジョーだったか。 覚えておこうぞ!」
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