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目指すべき場所

                                   ・



 この世界に(私の様な)重度障碍を持つプレイヤー達のコミュニティが存在する。

今、女鑑定士はそう言ったのだろうか ?


「それは何処に?」

私は思わず彼女に尋ねていた。


「コスタ・ブランカ」

彼女が呟くように口にしたのは私の知らない地名だった。


 FQに於けるMAP機能は踏破済み領域に限られる。 

アイテムとしての地図はショップ等で入手可能だが広範・精緻な物は希少だ。

勿論ファイルとして現実世界に持ち出す事は出来ない。

オフでは可及的に再現された"全世界地図" も存在し参照することは出来るが

それをFQ世界に持ち込む事はやはり出来ない。


 ( 伊豆の白浜 のような場所なのだろうか? )


 海岸近くで生まれ育った私には何処か惹かれるところのある名だった。



「・・大陸の東の果て、その最南端にある浜だよ」

暫しの間を置いて鑑定士が言葉を続けた。


「其処にはこのFQで視力を、聴力を、腕や脚を取り戻した者達が集っている」

彼女は遥か東の方角を見詰めている。

「良かったらあんたも寄ってみてあげておくれよ」

「勿論です!」

私は即答していた。

「是非寄らせて頂きます。 私の向かう方角でもありますから」

これは紛れもなく彼女からの "依頼" だ。

であるならば万難を排してでも辿り着かねばならない。 その"白い海岸" へ。



「頼まれたのさ。『同じ境遇のゲラーデン(プレイヤー)と会ったらそう伝えてくれ』 とね」

東方の空を見詰めたまま鑑定士が言う。

「嬉しいもんだね。 稼業以外の事で頼られるというのは」

「・・・・」

NPCも当然ながら感情を表出することは出来る。

しかしフリーな立場である彼女のそれは彼女自身の内面から出たものなのか、

それとも基底にある 『プレイヤーに奉仕する』という規範によるものなのか。

そんな考えが一瞬脳裏を過った。

・・・それにしても。

元より情報収集には疎い私ではあるがそのようなコミュは聞いた事が無い。

ネット上で大っぴらに仲間を募る事はしていないのだろう。

何らかの切っ掛けで揶揄の対象にされてしまうのを懸念しているのか。

( 自身が身上を明らかにしていない私にはその心持ちは理解できる )


 彼女が包含する"秘密" の一端に触れることが出来た。

そして私をまきこんで更に"秘密" は一段とその大きさを増したのだろう。


「彼の地に着いた暁には貴女からお話を伺ったとお伝えしますから」

私は鑑定士にそう告げた。

「そうしておくれ」

そう言って微笑む彼女。

「あんたにも世話になるね!」

私のモチベーションが跳ね上がる。


 大陸の南側を東進する私に明確な目的地が定まった。

( 今日はこのスベニールで上がる事無く時間一杯まで進むことにしよう )



「こちらこそ大変貴重な情報を頂き有難うございます!」

改めて礼を述べてから頭を上げると鑑定士の姿は消えていた。






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