市場にて 8 ★
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"拳神"。
此処FQ(Final Quest) でそう呼ばれるのは初めてだ。
KF(Knuckle Fighter) 世界の頂点。 最強の称号。
「・・・此方ではしがない放浪者に過ぎないのですがね」
私が若干の照れ臭さも感じながらそう返すと、
「そうしてくれていて正直助かる」
鑑定士が意外な言葉を口にした。
「 ? 」
どういう事だろうか。
「…とFQの運営は思っているだろうよ」
にやりとした微笑を浮かべて彼女は後を続けた。
( オフィシャルの思惑について述べた、だと? )
彼女は運営側の存在なのだろうか。
「最近のあんたのKFでの強さは"群を抜いてる"なんてもんじゃない」
やはり彼女は TF のサービスに関する広範な情報を持っているようだ。
「最早 "特異的"と言って良いレベルだそうじゃないか」
「そうなんですか?」
思わず訊き返してしまった。
KFの運営にそのように評価されているとは知らなかった。
確かに近頃は拳聖達と余裕を持って試合えるようになって来た印象はある。
挑戦者達のレベルが落ちて来ている訳ではない。 それは寧ろ上がっている。
・・ということはつまり そういう事なのかもしれない。
「あんたの医療チームの嘆願書を読ませてもらったよ」
「 ! 」
鑑定士の言葉は私の意表を突くものだった。
そこまでの情報にアクセス出来るとは。 いや、与えられたのだとしても。
彼女はTFからモニター的な役割を負わされているのかもしれない。
「"体性感覚のリハビリテーション" とはな。 成程、と思ったものさ」
真顔に戻って話す彼女は一人、思い返すように頷いていた。
「これはVRの効用をアピールするのに絶好のテーマじゃないか」
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