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市場にて 5

                                   ・


「どういう事でしょうか?」

反射的に聞き返しはしたものの 鑑定士の語った事を私は理解できていたと思う。

「・・そこまでは言わん」

それだけ言うと彼女は口を閉じてしまった。


「真に申し訳ありませんでした!」

深々と頭を下げる私。

彼女にも言えない事はあるのだ。

全てを知る存在でありながら全てを語る事は出来ない。

衆知されてしまえばそれは彼女の世界から失われるからだ。


「またお会いできて光栄です。 これからも何卒宜しくお願い申し上げます!」

「それは私の台詞だよ」

詫びる私に鑑定士が返す。

笑顔に戻っていた。



「・・アルツであんたに出会った時に私の世界は拡がった」

彼女が再び語り出した。


「私はずっと疑問に思っていたのだ。 各地の市場を巡りながら」

全知の彼女にも分らぬ事があるのだろうか。


「我が一生はゲラーデン達のアイテムを鑑定するのみで過ぎて行くのか、とな」

「 ! 」

「何処にでも行けるがあくまで鑑定士として振舞わねばならん。不自由なものよ」

「 !! 」

衝撃的な内容に耳を疑う。 

私は彼女の語りを決して遮るまいと口を引き結んだ。


「人々は私に鑑定を頼まない。 彼等が反応するのはあんた等に対してのみだ」

何という事だろう。

彼女はNPCという身でありながらプレイヤー的な存在であるとでもいうのか。


「鑑定を依頼して来るあんた等も大抵は結果を聞くと直ぐに去ってしまうしな」

確かにそうかも知れない。

NPCの店舗キャラに要件以外で話掛けるプレイヤーは稀だろう。


「規範以外に定まった禁忌がある訳ではないのだが、なすべき事も殆ど無い」

鑑定士が自嘲気味な笑いを浮かべた。



「私は少々退屈していたのだよ」





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