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市場にて 4

                                   ・


「・・約束は守りますよ!」


 思わず声を上げてしまっていた。

従来から私はネット上の不特定な対象への広範な情報発信はして来ていない。 

主なSNSの垢は持っているが用途は家族や近しい者達との連絡に限られている。

現在のような状況になってからはそれも絶えていたのだが。


「私はあんたに口外を禁じた訳ではない。 ペナルティを科した訳でも」

声を上ずらせた私に鑑定士は続けた。

「頼んだだけだ。 その私の頼みをおまえは受けると約束し守って来た」

「・・・・・」


 満足気な表情で語る鑑定士の話に無言で耳を傾ける私。

私にすれば彼女の依頼は不可能事でも無い限り断る選択肢など有り得ないのだが。

( まともな感覚の持ち主なら誰でもそうせざるを得ないのではなかろうか )

ライブ配信不能なFQに於いても "プレイ日誌" の如き物を発信している者はいる。

そのような者達でもほぼ同様の対応となるだろう。

彼等は再現性や普遍性に乏しい情報は公表を控えるのが一般的だからだ。

私には『大儀を果たした』 という感覚は特になかった。


「元より私は此方(デルモニア)での彼是を発信していませんので」

正直にそう言った。

「知っているさ」

鑑定士が頷く。

そして言った。

「あんたにとってそうする事に難があり、また左程意味が無い事もな」

私の事はほぼ全てお見通しだという事か。


「・・恐れ入ります」

そう返すのが精一杯だった。


「だが、私にはありがたいことだったのさ」

「 ? 」

何を言っているのだろう、と思った。 

全能にも見える程の力を持つ彼女が。

「私はあんた等(ゲラーデン)其々の抱く "秘密" によって成り立っているのだから」

「どういう事でしょうか」

非常に重要な事を聞いた気がする。

だが、その時の私には彼女の話は難解だった。

( 『各プレイヤーの秘密により構成されるNPC』 だと? )


「・・分り難いかもしれないねぇ」

鑑定士が苦笑したように見えた。

「 『他と共有されない個人的な記憶』 とでも考えれば良いさ」

「・・・・・」


『はい分かりました』 とは言えなかった。

だがチンプンカンという訳でも無い。 朧げなイメージは掴めたような気もする。

NPCは通常プレイヤー間での認知度が上がるに連れてプレゼンスが増すものだが

彼女はそのような存在では無いようだ。



「私はこう見えて儚い存在なのさ」

鑑定士が言った。


「私が今此処に居られるのは あんたが約束を守ってくれたからなんだよ」






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