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市場にて 2

                                   ・


「・・・・・・・・・・ そう云う事ですか」


成程。 理解できた ( ような気がする )。


『考えろ』

鑑定士に言われた私は味覚も 臭覚もアレ(・・)もあるFQライフについて考えてみた。

勿論それは この私自身が強く希求して已まない世界でもある。

実現するならば何と素晴らしい事か。


・・・しかし。





「分かったようだな」

鑑定士が言った。

「はい」

下を向いて呟くように答える私。

「影響が大き過ぎます。 恐ろしい事になるでしょう」


 外食産業は壊滅的被害を受けるだろう。 製菓を始めとする食品業界も同様だ。

風俗等の接客業は消滅する。 少子化は爆発的に加速し人口の激減は免れまい。


「・・その理由でそれら要素はサポートされなかったのですね」

私は鑑定士に尋ねてみた。

「そんな訳ないだろう」

彼女は半ば呆れ顔で答えた。

「単に実装が困難だったからに過ぎない。 VRでの全感覚再現などはな」

「・・・・」

私だって(当初は)そう思っていた。 

実は社会的影響を慮るFQ開発陣が実装を控えた(やれば出来た)のかと喜んだのに。

『こいつは何を言ってるのだ』

と云わんばかりの鑑定士の表情に私は暫し言葉を失ってしまった。


 確かに視覚が光学的、触覚が力学的、聴覚が音響学的、温覚が熱力学的情報であるのに対して、味覚と臭覚は生化学的情報でありその再現は桁違いに困難な筈だ。

実世界でも電子的な記録・再生が成功したという話はまだ聞かない。

( やはり、不可能なのか・・ )

いつかこの世界で再び家族と食卓を囲む、という私の希望が儚く潰えていく。




「・・・では、先程のお話は?」

私は顔を起こすと今一度鑑定士に尋ねた。

( 有り得ない前提での質問にどのような意味があったというのだろう )

彼女の意図が分からない。


「私の懸念をあんたにに共有して欲しかった」

鑑定士が答えた。

彼女の右腕が伸びて私の肩に手が掛かる。

折れそうな細腕に抗い難い力で引き寄せられた。

( それとも彼女が私に身を寄せたのだろうか? )


 頬に吐息が感じられる程の距離に彼女の顔がある。

私は指先一つ動かすことが出来ずに身を凍らせていた。

このまま天に昇るのか。 それとも地獄に堕とされるのか。 "死"を覚悟した。


「分かって欲しかったんだよ」

耳元で囁かれた。

「この世界で "それ"を最も欲し 必要としているあんたに。 その危険性について」

思わず目を合わせると私の恐怖と緊張は一瞬で霧散した。

あの時(アルツでの)と同じだ。  彼女は微笑んでいた。

そして その唇から福音が齎される。


「"困難" と "不可能" は違う。 諦めなくていいんだよ」







                                   ・

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